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「……え?」
俺の口から出たのは、情けないほど間の抜けた声だった。
つい数分前、裏山の雑木林でプルプルと震える青いスライムと出会った。
「おい、そこの人間」と流暢な日本語で話しかけられただけでも、俺の常識のキャパシティは完全に限界を迎えていたというのに。
目の前の光景は、さらにその斜め上を爆走していった。
スライムの身体が、内側から発光したかと思うと、ドロドロと形を変えて急激に膨れ上がっていく。
光が収まったそこに立っていたのは――。
「ふぅ……。やっぱり、この姿のほうが言葉が紡ぎやすいな」
艶やかに目を細め、ふさふさとした狐のような耳をピクピクと動かす、とんでもない美女だった。
サラサラな髪のショートカットから覗くケモミミ。
そして何より、布切れ一枚をまとったようなきわどい衣装から、これでもかと自己主張している爆乳。
重力に逆らうようなその圧倒的な質量は、彼女が呼吸を整えるたびに、豊満な揺れを見せている。さっきまで手のひらサイズの液体(?)だったとは到底信じられない。
「どうした? 人間。まるで幽霊でも見たかのような顔をしているぞ」
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、自身の胸の前に腕を組んだ。
その動作によって、ただでさえ溢れんばかりの果実がさらに押し上げられ、強調される。
俺の視線は、もはや彼女の顔と胸元を激しく往復する時計の振り子状態だ。
「い、いや……。日本語を喋るスライムってだけでもお腹いっぱいなのに、なんで急にそんな……その、すごい美女に……」
「ん? ああ、これか」
彼女は自分の胸元をぽんぽんと叩いた。
破壊的な弾力が視界を揺らす。
「お前たち人間のオスは、こういう肉体の造形にすこぶる弱いと聞いてな。まずは交渉を有利に進めるための『基本フォーム』として模倣してみたのだが……。効果は絶大のようだな?」
いたずらっぽく、くすくすと笑う彼女の背後で、立派な尻尾が機嫌よさそうに左右に揺れた。
驚きと、目の前の暴力的すぎるビジュアルのせいで、俺の脳の処理速度は完全にパンク寸前だった。
裏山の散歩が、まさかこんな異世界情緒あふれる(しかもかなり刺激的な)事態に発展するなんて、一体誰が予想できただろうか。
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「わ、分かった。ひとまず落ち着いて話をしよう。……ただ、ここでその姿のままだと目立ちすぎるから、一旦さっきの姿に戻ってくれないか?」
俺の提案に、彼女は「ふむ、一理あるな」とあっさり頷いた。
光の粒子とともに、爆乳ケモミミ美女は一瞬でプルプルの青いスライムへと逆戻りする。
俺は周囲を気にしながら、彼女(?)を慎重に抱え上げ、足早に自宅の部屋へと連れ帰った。
カチャリ、と自室の鍵を閉める。
「よし、ここなら誰にも見られない。……戻っていいぞ」
ベッドの上にスライムを置くと、再び光が膨らみ、あの圧倒的なプロポーションのケモミミ美女が姿を現した。
狭い男の部屋に彼女がいるだけで、一気に空間の密度が上がったような気がする。
「さて、これからどうしたい?」
俺が今後の身の振り方を聞くつもりで尋ねると、彼女はふさふさの耳を傾け、「どうしたい、とは?」と首をかしげた。
「お前が私をどうしたいか、という意味か? 私は人間の文化を学ぶため、しばらくお前の元に身を寄せるつもりだが……。どのような姿が望みだ? これでもまだ刺激が足りぬか?」
挑発するように胸を張る彼女を見て、俺の脳裏に、かねてからの妄想が最悪のタイミングでフラッシュバックした。
「じゃあ……有名アイドルに変身して!」
口から出た瞬間、「やってしまった」と思った。
いくらなんでも願望丸出しすぎる。
しかし、彼女は怒る風でもなく、顎に手を当ててフムと唸った。
「変身してもいいが……データがないとなぁ。私は一度見たものしか模倣できん。その『ゆうめいあいどる』とやらの写真か何かはあるのか?」
「ある! ある、ちょっと待って!」
俺は机の引き出しから、お気に入りのアイドルが表紙を飾る雑誌を引っ張り出し、グラビアのページを彼女の前に提示した。
「……なるほど、これが。では、いくぞ」
彼女の身体が再び眩い光に包まれる。
ケモミミと尻尾がすうっと消え去り、爆乳のラインが、提示した写真の持ち主のものへと綺麗に再構成されていく。
光が収まった。そこに立っていたのは――。
「……どうだ? 完璧だろう」
テレビや雑誌でしか見たことのない、あの国民的トップアイドルだった。
しかも、衣装まで写真と全く同じ、白を基調とした清楚なデザインの水着を身にまとっている。
清楚な水着から溢れんばかりの、写真通りの見事なプロポーション。それでいて、表情や佇まいはどこかあどけないアイドルのそれだ。
本物が自分の部屋で水着姿で立っているという、脳がバグを起こしそうな光景を前に、俺はただただ息を呑むことしかできなかった。
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「こう、か……?」
彼女――いや、今は目の前にいる有名アイドルは、雑誌のページを覗き込みながら、少し照れたように首をかしげて見せた。
写真と全く同じ、上目遣いのあざといポーズ。
「次は……これか?」
今度は少し腰をひねり、ヒップのラインを強調するようなポーズをとる。
清楚な水着が肉体に食い込み、そのたびに暴力的なまでの曲線が強調された。
ダメだ、男として刺激が強すぎる。
目の前で繰り出される破壊力抜群のポーズの数々に、俺の股間のものは完全にカチカチに固くなっていた。ズボンの上からでも分かる自己主張を隠すように、俺は思わず前かがみになる。
「……で、この姿になった後はどうするのだ?」
ふと動きを止め、彼女が素朴な疑問を投げかけてきた。
「え……?」
そこでハッと我に返る。
完全に自分の欲望の赴くままにアイドルに変身させてしまったが、その先を何も考えていないことに気づいてしまった。
本物のアイドル(の姿をしたスライム)を自室に連れ込んで、水着姿でポーズをとらせて、その後一体どうするつもりだったんだ俺は。
冷静になると、目の前の「水着姿の美女」という状況はあまりにも目に毒すぎる。
心臓のバクバクが止まらない。
「と、とりあえず! その水着姿はちょっと刺激が強すぎるから、着替え……っていうか、別の変身をしてくれ!」
「む? 注文の多い奴だな。では、どんな服装にすればいいんだ?」
彼女は不満げに頬を膨らませたが、その仕草すらもアイドルの姿だから破壊的な可愛さだ。
「ええっと、じゃあこれ!」
俺は慌てて雑誌のページをめくった。
水着のグラビアページを通り過ぎ、特集されているライブのページを開く。
そこには、きらびやかでフリルがたくさんあしらわれた、彼女の「本業」の姿が写っていた。
「この、ステージ衣装に変身してくれ!」
俺が差し出した別ページの写真を、彼女は再びじっと見つめ始めた。
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「ふむ……さっきの布切れに比べると、ずいぶんと装飾が多いな。だが、やってみよう」
彼女が写真を指先でなぞると、その肉体が三度、淡い光を放ち始めた。
今度は水着の時よりも光のベールが複雑に絡み合い、フリルやリボン、ラインストーンの輝きが形作られていく。
光が完全に弾けて消えたとき、そこに立っていたのは――。
「……できたぞ。これでどうだ?」
まさにステージの上からそのまま飛び出してきたかのような、完璧なアイドル姿だった。
パステルカラーのきらびやかなミニドレス。
幾重にも重なったフリルのスカートはふんわりと広がり、胸元には大きなリボンがあしらわれている。
水着の時のような直接的な露出は減ったものの、激しいダンスを想定したミニスカートからは、健康的な太ももが眩しいほどに伸びていた。
何より、清楚な衣装で包まれているからこそ、その下に隠された豊かな胸の膨らみが、かえって強調されて見える。
「おお……すごい、本物そのものだ……」
俺が感動のあまりため息を漏らすと、彼女はふわりとスカートの裾を持ち上げ、ステップを踏むようにその場でくるりと一回転してみせた。
「なるほど、この衣装は動くとひらひらして面白いな。人間の『あいどる』というのは、これを着て歌い踊るのだろう? 試しに、私も何かやってみせようか?」
彼女は満面のアイドルスマイルを浮かべ、雑誌に載っていたマイクの持ち方を真似て、拳を口元に当てた。
水着の時のエロティシズムからは脱したものの、今度は「目の前で推しが自分だけのためにパフォーマンスをしてくれようとしている」という、別ベクトルの猛烈な興奮が俺を襲う。
股間の緊張は、依然として全く解ける気配がなかった。
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「ストップ、ストップ! 歌と踊りはまた今度でいい!」
俺は慌てて両手を前に出し、今にも歌い出しそうな彼女(中身はスライム)を制止した。
これ以上、狭い部屋で本物のアイドルさながらのパフォーマンスなんかされたら、心臓も股間も限界を超えて爆発してしまう。
「む? そうか。せっかく人間の娯楽というものを実践してみようと思ったのだが」
彼女は少し残念そうにマイクを持つフリをやめると、ふわりとスカートを揺らして、俺のベッドに腰を下ろした。
スプリングが軋む音が、妙に生々しく部屋に響く。
「……とりあえず、落ち着いて話を整理させてくれ。俺のキャパシティが色々とおかしくなりそうだから」
「構わんぞ。なんだかお前の顔がずっと赤いのが気になっていたところだ。病気か?」
「お前のせいだよ!」
心にもないツッコミを入れつつ、俺は床に座り込み、ベッド上の彼女を見上げる形になった。
冷静になろうと深呼吸をする。
吸い込んだ空気に、気のせいかアイドルの甘い香りが混じっている気がして、慌てて息を止めた。
「ええと……さっきお前、『人間の文化を学ぶため』とか『交渉』とか言ってたよな。そもそも、なんで俺の前に現れて、こんな風に居座ろうとしてるんだ? お前の本当の目的を教えてくれ」
俺が真顔で尋ねると、彼女はアイドルの可憐な顔立ちに、知的な、そして少し尊大な笑みを浮かべた。
「ふむ。では改めて整理しよう。私の目的は大きく分けて三つだ」
彼女は白く細い指を立ててみせた。
「一つ目は『知識の探求』。我々スライムという種族は本来、森で有機物を分解するだけの本能的な存在だ。だが、私はひょんなことから高い知性と自我、そしてこの変化(へんげ)の能力を得てしまった。こうなると、ただ森で葉っぱを溶かすだけの生活は退屈でな。高度な文明を持つ『人間』の社会や文化を、内側から深く知りたいと思ったのだ」
なるほど、スライム界の突然変異にしてインテリ層、というわけか。
「二つ目は『安全な拠点の確保』。人間の社会を学ぶには、人間社会に潜り込む必要がある。だが、野良のスライムが街を歩けば駆除されるのは目に見えている。そこで、衣食住が保証され、かつ私を隠匿してくれる『協力者』が必要だった。そこを偶然通りかかったのが、お前というわけだ」
「俺は完全に巻き込まれただけじゃないか……」
「結果オーライというやつだろう?」
彼女は悪びれもせずウインクをして(アイドルの姿だから破壊力が尋常じゃない)、三本目の指を立てた。
「そして三つ目は、これが一番重要かもしれないが……『お前との共存』だ」
「共存?」
「そうだ。私は人間の社会を知らない。お前には私のガイド役になってもらいたい。その代わり、私はお前に『理想の姿』を提供する。お前たち人間のオスが、視覚的な魅力に抗えないことは先ほどの反応で実証済みだからな」
彼女は自慢げに、アイドル衣装に包まれた胸元を張ってみせた。
「私には拠点とガイドが手に入り、お前は毎日、美女や憧れのアイドルの姿を拝むことができる。さらには着せ替えも自由自在だ。どうだ? 我ながら完璧なWin-Winの取引(交渉)だと思うのだが」
ドヤ顔で言い放つ彼女を前に、俺は頭を抱えた。
確かに彼女の言う通り、男のロマンと煩悩をこれでもかと刺激する悪魔的な提案だ。
だが、このままでは俺の理性がスライムに飲み込まれるのは時間の問題だった。
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「Win-Win、ねぇ……」
俺はベッドの上の「推しアイドル」を、もう一度じっと見つめた。
非現実的なほどに美しいビジュアル、完璧に再現された衣装、そして中身は人間の文化を学ぼうとする未知のスライム。
冷静に考えてみれば、これはとんでもないリスクだ。
もし万が一、この姿のまま外に出て誰かに見つかりでもしたら、一発でSNSに拡散されて大騒ぎになる。
誘拐犯扱いされるか、あるいはオカルト事件として国家機関に目をつけられるか。
――だが。
目の前で首を傾げ、こちらの出方を窺っているトップアイドルの姿は、男のすべての理性を溶かすだけの破壊力があった。
これだけのメリット(というか、ご褒美)を提示されて、「お引き取りください」と言えるほど、俺は高潔な男じゃない。
「分かった。条件は飲もう。お前をここに置いてやるし、人間の社会や文化についても、俺が知っていることなら教えてやる」
「おお! 交渉成立だな!」
彼女はパッと表情を輝かせ、アイドルさながらの眩しい笑顔を浮かべた。
「ただし! 条件がいくつかある」
「条件? どのようなものだ?」
「まず第一に、外に出る時は絶対にその姿や、さっきのケモミミ美女の姿にならないこと。目立ちすぎる。基本はスライムの姿で俺のバッグに隠れるか、どうしても人間の姿になるなら、もっと地味な……どこにでもいる女子高生とか、そういうデータを用意するから、それに変身してくれ」
「ふむ、隠密行動というわけだな。承知した」
案外あっさりと彼女は頷いた。
知性が高いだけあって、リスク管理の重要性は理解できるようだ。
「第二に、家の中では、基本的には……いや、やっぱりその、水着とかアイドル衣装は、ここぞという時だけにしてくれ。俺の心臓と、その……理性が持たない」
俺が赤面しながら股間のあたりをごまかすように言うと、彼女はいたずらっぽくニヤリと笑った。
「なるほど。お前を『興奮』させすぎると、ガイドとしての機能が低下するわけだな。よかろう、普段はもっと落ち着いた衣服を模倣するとしよう。……では、第三の条件は?」
「第三は……」
俺は一呼吸置き、ずっと気になっていたことを口にした。
「お前の名前だ。いつまでも『スライム』とか『お前』って呼ぶわけにはいかないだろ。何か名前はあるのか?」
「名前、か……」
彼女は少しだけ視線を落とし、自分の白い手を握ったり開いたりした。
「我々には元々、個体名という概念がないからな。お前が私を識別するためのコードをくれるとありがたいのだが」
「俺がつけていいのか?」
「ああ、お前が一番呼びやすい名前にしてくれ」
ステージ衣装を着た国民的アイドルが、俺に名前をねだっている。
その奇妙な状況に可笑しさを覚えつつ、俺は彼女の本来の姿――プルプルとした青い液体――を思い浮かべながら、少し考えて一つの名前を口にした。
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「『シキ』はどうだ?」
俺がそう提案すると、彼女はアイドルの可憐な顔のまま、小首をかしげた。
「シキ……? 響きは悪くないが、どのような意味が込められているのだ?」
「お前の一番の目的は、人間の文化や『知識』を学ぶことだろ? だから、知識の『識(しき)』から取って、シキ。お前がこれからたくさんのことを知っていくための、始まりの名前だ」
彼女は驚いたように目を見張った。それから、じっと自分の手のひらを見つめ、何度もその名前を口の中で転がすように呟く。
「シキ……知識の、シキ。ふふっ、なるほどな。ただの識別コードとしては、ずいぶんと小洒落た意味を乗せてくれるではないか」
嬉しそうに細められた瞳は、心なしかさっきよりも柔らかく、温かみを帯びているように見えた。
「気に入ったぞ! 今日から私は『シキ』だ。お前がくれたこの名前、大切に使うとしよう」
彼女はベッドから勢いよく立ち上がると、アイドルのステージ衣装をひらりと翻し、ビシッと俺の鼻先に人差し指を突きつけてみせた。
「では、改めてよろしくな、相棒! ……さて、契約も結び、名前も決まった。となれば、次はさっきお前が言っていた『普段着』の選定に入ろうではないか。流石にこの、ふりふりした服で部屋に居座るのも落ち着かんからな」
「お、おう。そうだな……」
シキが乗り気になってくれたのはありがたいが、目の前のキラキラ輝くアイドル姿のまま「普段着」と言われても、俺の脳内はまだバグり散らかしている。
俺は再び、視線をあちこちに泳がせながら、彼女が日常的に着るべき「普通の服」のデータを求めて、部屋の中をキョロキョロと見回し始めた。
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「これを使え。……タブレットだ」
俺は震える手で愛用のタブレットを差し出した。
シキは「ふむ、これでお前の言う『服のデータ』を探せというわけだな」と頷き、俺の隣にちょこんと腰を下ろした。
……近い。あまりにも近い。
画面を覗き込むために彼女が体を寄せると、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。
洗剤のような清潔感と、どこか花のような柔らかな残り香。
国民的アイドルの香水か、それとも彼女がスライムとして擬態する際に生成した成分なのか。
とにかく、男の理性を揺さぶるいい匂いだった。
「……で、どうやって操作するのだ? この光る板を叩けばいいのか?」
シキが尋ねながら、さらに距離を詰めてくる。
その瞬間、彼女の豊かな胸が俺の腕に柔らかく押し当てられた。
しかも、密着している太ももからは、アイドルの衣装越しに確かな体温と、驚くほど滑らかな肉の感触が伝わってくる。
(落ち着け、俺! 中身はさっきまで裏山にいたスライムだ。ただの液体が形を変えているだけだぞ)
心の中で必死にそう言い聞かせるが、右腕から伝わってくる胸の膨らみと、腰を寄せるたびに押し当てられる彼女のヒップの感触が、そんな理屈を根こそぎ破壊していく。
画面上の「検索窓」を指差しながら説明する俺の手元が、ガクガクと震えていた。
「こ、ここに服のジャンルを入力すれば、いろんなデザインが出てくる……。例えば『普段着』とか『カジュアル』とか……」
「なるほどな。こうか?」
シキが検索窓に指を這わせる。彼女が画面を操作するために腕を動かすたびに、密着した胸が俺の腕の上でとろりと揺れた。
そのたびに、俺の心臓は早鐘のように打ち鳴らされる。
(スライムなのになんてこった。スライムなのに、こんなに女の匂いと温もりを感じるなんて)
「お前、さっきから呼吸が荒いが、大丈夫か?」
シキが不思議そうに顔をこちらに向ける。
アイドルの可憐な顔が、目の前数センチの距離にある。潤んだ瞳が、獲物を狙うかのようにじっと俺を捉えていた。
「いや、なんでもない! ……続けてくれ!」
俺は必死で顔を背け、タブレットの画面に視線を固定した。
だが、意識すればするほど、隣にいる「生物学的にも最高の存在」の気配が、俺を狂わせようとしていた。
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「これか、それともこれか……」
俺の動揺をよそに、シキは真剣な面持ちで画面をスワイプしていた。
彼女が候補として残したのは、二つのスタイル。ダボッとしたシルエットが可愛らしい『ゆったりとしたパーカーにミニパンツ』と、一枚でさらりと着こなす『シンプルなワンピース』だった。
「パーカーというのも捨てがたいな。人間の衣類とは実に興味深い……よし、まずはこれだ」
シキが選んだのは、清楚な白のノースリーブワンピースだった。
彼女がそう呟いた瞬間、光の粒がアイドルの衣装を包み込み、一瞬でシンプルなワンピースへと再構成されていく。
光が収まると、そこにいたのは先ほどまでのきらびやかなアイドルではなく、どこか儚げで素朴な雰囲気を纏った美少女だった。
引き締まったウエストから裾に向かって可憐に広がる生地。しかし、元の素材が良すぎるせいか、シンプルなワンピースだからこそ、彼女の豊満な胸のラインと、すらりと伸びた健康的で白い脚がより一層際立ってしまっていた。
「どうだ? これならお前も心臓を爆発させずに済むだろう」
「ぐっ、まあ、さっきよりは……マシ、かな」
視線の毒気は減ったものの、素材の暴力はそのままだ。
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ふむ、衣服のデータ収集は一旦これでよいとして……次は食事だな!」
シキは満足そうに頷くと、再びタブレットに視線を落とした。
「人間が日常的に何を摂取しているのか、データを調べねば。お前の閲覧履歴や保存データから、この家の標準的な食事傾向を分析してみるぞ」
「あ、ちょっと待て! 履歴を見るのは――」
俺が制止する間もなく、シキの指先が慣れた手つきでタブレットのフォルダや検索結果をタップしてしまった。
画面に表示されたのは――色鮮やかな料理の写真……ではなかった。
そこに映し出されていたのは、俺が夜な夜な一人で楽しんでいた、ド直球なフェラチオのイラストや動画のサムネイルの数々だった。
男の欲望と性癖がぎっしりと詰まった、決して人(とスライム)に見せてはならない暗部である。
「……む?」
シキは画面を凝視し、首をかしげた。
俺の顔から一気に血の気が引いていく。
冷や汗が背中を吹き出した。
「お、おい、シキ! それはだな、その……!」
「なるほど……これが人間の『食事』の様式(スタイル)なのか」
シキは感心したように深く頷き、画面の画像をじっくりと観察し始めた。
「口の中に管状の器官を含み、そこから分泌される特別な栄養素を直接摂取する……。非常に合理的で、かつ親密な個体間で行われる特別な給餌行動なのだな?」
「ち、違う! 全然違う! それは食事じゃなくて、その……大人のコミュニケーションというか、男の欲求というか……!」
焦って弁明しようとする俺の言葉を、シキは完璧に聞き流した。
彼女の中で、歪んだ知識が「真実」として強固に構築されてしまったらしい。
シキはタブレットをコトンとベッドに置くと、ワンピースの裾を少し気にするように整えながら、俺の目の前へと膝立ちになった。
「隠さなくてもよいぞ、相棒。私はお前のガイドであり、共存者だ。お前が日頃からこのような『給餌』によって栄養を得ているというのなら、私もそれに、ならうまで。さあ、私にその『食事』を与えてくれ」
シキはアイドルの面影を残した可憐な顔を近づけ、上目遣いに俺を見つめながら、桃色の小さな唇を優しく開いてみせた。
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「ちゃう、ちゃう! 全然ちゃうから! それは『食事』やなくて、もっと……その、スケベなやつなんだって!!」
パニックのあまり、なぜか出てもいないエセ関西弁で全力で否定する。
俺は慌ててシキの肩を押し戻そうとしたが、その手のひらにはワンピース越しに柔らかい感触が伝わってきて、さらに動揺が跳ね上がった。
「む? なぜ拒むのだ?」
シキは唇をぽかんと開けたまま、不思議そうに首を傾げた。
「写真を見る限り、雄の器官を口に含み、雌がそれを愛撫することで、互いに強い幸福感を得ているように見えたが……。人間の解剖学的データとしては正しいはずだぞ?」
「正しくない! いや、解剖学的には間違ってないかもしれないけど、それは日常の『ご飯』じゃなくて! 俺たちが口から食べるのは、米とか肉とかパンなの!」
「米……肉……パン……」
シキは目を瞬かせ、俺の必死すぎる表情とタブレットの画面を交互に見比べた。
やがて、彼女の頭の中でカチリと何かが噛み合ったらしく、「あぁ」と得心がいったように声を漏らした。
「なるほど。あれは単なる『性的欲のアクティビティ』であり、生命維持のためのカロリー摂取とは別物というわけか。失礼した、人間の複雑な生態を少々混同していたようだ」
「分かってくれたならよかったよ……本当に……」
俺はその場にガクッと崩れ落ち、胸を撫で下ろした。
命拾いした。
一瞬、本気で理性が吹き飛んで一線を越えてしまうところだった。
しかし、シキは悪びれる様子もなく、ベッドの上で膝立ちのまま、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
「だが……お前が日頃から『そういうもの』を好んで収集しているという事実は分かったぞ、相棒」
「うぐっ……!」
「私のこの姿、そして先ほどの『誤解』。お前の身体的反応を見るに、満更でもなかったのだろう?」
彼女はワンピースの裾を少しだけ持ち上げ、白く滑らかな太ももをチラつかせながら、顔を俺の耳元へと近づけてきた。
ふわりと甘い香りが、再び俺の脳を麻痺させにかかる。
「言ったはずだぞ。私とお前は共存関係であり、私はお前に『理想の姿』を提供するとな。……もしお前が望むのなら、先ほどの『誤解』を、事実にしてやっても構わないのだぞ?」
耳元で囁かれる甘い声と、いたずらっぽい息遣い。
俺の股間は、先ほど以上の限界突破級の緊張を迎えていた。
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「っ……! 誘惑するな! 俺の理性を試すんじゃない!」
俺は必死の思いで顔を背け、ベッドから飛び退くように立ち上がった。
心臓が早鐘のように鳴り響き、全身から冷や汗が吹き出している。
耳元に残る甘い吐息の感触と、桃色の唇のイメージが頭から離れない。
「ふふっ、本当に人間とは素直ではないな。身体はあれほど分かりやすく反応しているというのに」
シキはクスッと可憐に笑うと、持ち上げていたワンピースの裾をゆっくりと下ろした。
からかうような瞳を輝かせながらも、深追いはせずに足を崩してベッドの上に座り直す。
どうやら、俺の限界ギリギリの反応を楽しんでいたらしい。
「まあよい。冗談はこのくらいにしておいてやろう。それで、本物の『食事』とやらはどこにあるのだ? 私はスライム故、必ずしも人間と同じように有機物を摂取する必要はないのだが……文化を学ぶ一環として、人間の『食べる』という行為を体験してみたい」
「あー、食事な。分かった、ちょっと待ってろ」
俺は荒い息を整えながらキッチンに向かい、冷蔵庫から手軽に食べられそうなものを探した。
取り出したのは、買い置きしてあったコンビニの焼き鮭おにぎりと、カップスープ。
部屋に戻り、テーブルの上におにぎりの袋を置くと、シキは興味津々な様子で身を乗り出してきた。
「これが『おにぎり』だ。米の中に具材が入っていて、海苔で巻いてある。まずはこのフィルムを剥がして……」
俺が手本を見せながらフィルムを引っ張ると、シキは真面目な顔でその手順を観察していた。
「なるほど、複雑な包装だな。では、いただくぞ」
シキは白く細い手でおにぎりを持ち、躊躇なくパクりと一口かじりついた。
もぐもぐと頬を動かすその姿は、完全に普通の可愛らしい女子高生か大学生のそれだ。
「! これは……」
シキの目が丸くなった。
「米の甘み、塩気、そして中に仕込まれた魚の旨味と脂……。それらが噛み砕くことによって口内で合わさり、味覚センサーを強力に刺激してくる。ただの栄養補給にしては、あまりにも快楽に特化した構造ではないか! 人間はこのような美味なものを日常的に食しているのか?」
「大袈裟だな……ただのコンビニのおにぎりだぞ?」
「素晴らしい文化だ。一口食べただけで、脳内に多幸感が広がるのが分かる」
シキは心底感動した様子で、二口目、三口目とおにぎりを頬張っていく。
口いっぱいに頬を膨らませておいしそうに食べる姿は、さっきまで俺を翻弄していた妖艶なスライムと同一人物(?)とは思えないほど無邪気で可愛らしかった。
(まあ、こういう姿を見てる分には、平和でいいのかもしれないな)
俺が少しほっとして胸を撫で下ろした、その時だった。
「ふぅ……美味であった。ごちそうさまだ」
あっという間におにぎりを平らげたシキは、満足そうに息をつくと、自分の指についた小さな米粒や塩を、ちゅっと音を立てて舐めとった。
そして、不意に俺のほうへ視線を向ける。
「人間の『食事』の素晴らしさはよく理解できた。では相棒、次は『お返し』の時間だな?」
「は? お返し?」
シキはワンピースの胸元を少しだけ緩め、艶っぽい笑みを浮かべて俺に近づいてきた。
「私はお前から美味なる食事を提供された。ならば共存者として、今度は私がお前の『欲求』を満たしてやるのが筋というものだろう? さあ……さっきの『フェラチオ』というやつ、試しにやってみようではないか」
「だから! それはそういうお返しじゃねえって言ってるだろーーーっ!?」
俺の叫び声が、狭い自室に虚しく響き渡った。
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夜の静寂が広がる午前二時。
俺は重い瞼を開いた。
夢と現実の狭間で、下半身に異常なまでの熱気を感じていたからだ。
ぬくぬくと温かいというレベルではない。
まるで濡れた熱帯雨林に股間を放り込まれたかのような、包み込まれるような熱と、ドロリとした粘着質な感触。
「……ん、ぁ……っ……」
微かに聞こえるのは、自室の暗闇には不釣り合いな、甘く可憐な喘ぎ声。
俺は息を呑み、ゆっくりと掛け布団をめくり上げた。
「――っ!?」
月光が差し込むベッドの足元で、信じられない光景が広がっていた。
そこにいたのは、昼間見せられた雑誌からそのまま飛び出してきたような、あの有名アイドルの水着姿だった。
清楚な白い水着の胸元からは豊かな膨らみが溢れかけ、彼女は俺の太ももの間に膝をつき、夢中で俺のペニスにしゃぶりついていた。
「んむッ……れろ、チュ、ジュル……ッ、んぁ……っ……」
「シ、シキ……!? お前、なにやって――」
「んぁっ……はぁ……起きたのか、相棒」
彼女は口唇を俺のそこから離すと、銀色の唾液の糸を引かせながら、いやらしく上目遣いに俺を見つめてきた。
アイドルの可憐な顔立ちが、完全に熱を帯びた女の表情に染まりきっている。
「ふふ、声……出しちゃダメだぞ? 近所に聞こえちゃうからね」
「なっ……お前、なんでその姿で……っ!」
「だって……昼間の画像、忘れられなかったんだもん♡」
シキは水着の胸元を自分で強く押し付け、谷間を強調しながら、再び俺のものに顔を近づけた。ふわりと漂う甘い香りと、水着から覗く肌の露出が頭を狂わせる。
「スライムの私にはね、人間の『快楽』のデータが足りなかったの……。だから、お前が寝てる間にこっそりお勉強……んっ、ジュポッ……れろぁッ!」
「ひっ! シキ、待っ――」
「んむむっ! チュ、ジュルルッ……! んっ、美味しいっ! お前のここ、すっごく熱くて……すっごく固くて、美味しいよぉ♡」
ジュポッ、ジュルリ、と部屋中に下品な水音が響き渡る。
シキは舌を巧みに絡め合いながら、アイドルの可愛い声で淫らな言葉を吐き出し続けた。
「ねぇ、見て……? テレビでみんなが憧れるアイドルが、お前のこれ……こんなに夢中で舐めてるんだよ? んチュッ、れろ♡」
「くっ! お前、声がデカい……!」
「いいじゃんっ、だって、すごく気持ちいいんだもんっ! お前の先端から出てるお汁、甘くてトロトロで……スライムの私でも、頭がおかしくなりそう♡ぁんっ!」
彼女は頬を凹ませ、吸い付く力を強めた。
ジュボボッと舌で亀頭を擦り上げられる感覚に、俺の背筋に猛烈な電流が奔走する。
「あはっ、おっきい……お口の中、いーっぱいになっちゃうッ! んむ、ジュルッ、ジュボッ! ねぇ、相棒……私のお口に、いっぱいお返し……ちょうだい? んっ、れろぉ♡」
欲望を隠そうともしないいやらしい笑顔で、シキは再び根元まで俺のペニスを深々と呑み込んでいった。