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「――どうかしら、キヨヒコ。これで地球の『一般的な女子大学生』の基準を満たしているかしら?」
玄関のドアを開けた瞬間、そこに立っていた彼女――いや、正確には「彼女の形をした宇宙人」は、小首をかしげながら俺に問いかけてきた。
その姿は、どこからどう見ても可憐な人間の女性そのものだった。
赤みがかった髪を高い位置でポニーテールにまとめ、白のレース付きトップスに、格子柄のミニスカート。
黒のタイツが全体の印象を引き締めている。
少し戸惑ったようにこちらを見つめる大きな瞳は、道行く誰もが振り返るほどの魅力を放っていた。
「完璧すぎるくらいだよ。というか、目立ちすぎじゃないか?」
「そう? 街のデータから『健康的かつ親しみやすい若年女性層の衣服傾向』を抽出して、変身アイテムで再現したのだけど」
彼女は真面目な顔で、自分の胸元やスカートの裾を軽く触って確認している。
そもそも俺と彼女――地球の言葉では発音できない名前を持つ彼女――の出会いは、半年前の夜だった。
路地裏で妙なメカの暴発に巻き込まれて動けなくなっていた異星人の生命体を、俺が偶然助けた。
それがきっかけで、なぜか俺は彼女の「地球観察」のサポート役に任命されてしまったのだ。
「今日の観察目的は、確か……」
「ええ。我が星の種族にはない、地球人の『雌雄に分かれた生殖能力と、それに伴う独自の行動様式』についてのフィールドワークよ」
彼女は事もなげに、とんでもないパワーワードを口にする。
そう、彼女の本来の姿は両性具有。単為生殖や同調によって命を繋ぐ彼らにとって、男と女に分かれて互いを求め合う地球人の生態は、学術的に極めて興味深いものらしい。
「キヨヒコ、地球人はなぜ手を繋いだり、距離を詰めたりするだけで、あのように心拍数を上昇させ、生殖に向けたホルモンを分泌させるのかしら? 私の現在のこの身体も、あなたの視線を受けると、内部の擬態器官がわずかに発熱するような未知のフィードバックを感じるの」
美少女の姿のまま、そんな高度かつ際どいセリフをサラリと言ってのける彼女に、俺は思わず顔が熱くなるのを隠せなかった。
「……それを今から街に出て調べるんだろ。ほら、行くぞ。あんまり突飛な質問を外でするなよ?」
「了解したわ、キヨヒコ。今日の私はあなたの『恋人』という仮説の属性として振る舞うわね」
そう言って、彼女は嬉しそうに俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
柔らかな感触と、どこか地球人離れした甘い香りが鼻腔をくすぐる。
未知の宇宙人との、少し刺激的で前途多難なデート(観察)が、今日もまた始まろうとしていた。
50e4180d No.3764
駅から少し歩いたところにある、お洒落なオープンカフェのテラス席。
初夏の風が通り抜ける中、俺たちのテーブルの上には、冷たいアイスコーヒーと、色鮮やかなベリーのパンケーキが並んでいた。
「キヨヒコ。これからは私のことを『詩織(シオリ)』と呼んでちょうだい。地球の一般的な姓名データベースから、今日のこの身体に最も調和する音響特性を持つ識別コードを選んだの」
彼女――いや、今日からシオリとなった彼女は、フォークを器用に扱いながら真顔で言った。
「シオリ、か。わかったよ。それで……一応ここからが本番だけど、この後はどこへ向かう?」
俺がそう尋ねると、シオリはパンケーキのホイップクリームをじっと見つめた後、視線を真っ直ぐ俺に向けて、とんでもないことを口にした。
「事前調査によると、地球人が生殖行動、およびそれに準ずる親密な接触を行うための専用施設『ラブホテル』という空間が存在するわ。そこには回転するベッドや、過剰な装飾の浴槽があるとか。非常に興味深いわ、キヨヒコ。今すぐそこへ赴き、実地での構造観察および相互作用の実験を行いましょう」
「ぶっ……!?」
俺は口に含んだアイスコーヒーを吹き出しそうになり、激しく咳き込んだ。
周囲の席の客が何事かと一瞬こちらを見る。
「バ、バカ言え! いきなりそんなところ行けるか!」
「不許可? ならば、視覚的遮蔽物の少ない自然環境――いわゆる『野外』での交尾行動についてよ。地球人の文学や動画データにおいて、背徳感による脳内物質の過剰分泌が報告されているわ。近くの公園の茂み、あるいは大学の講義室の死角などはどうかしら。今なら私のこの身体のバイタルデータも同時に計測できるわ」
「屋外はもっとダメだ! 犯罪だから! 捕まるから!」
大真面目な顔で「野外エッチ」を提案してくる宇宙人に、俺は頭を抱えた。
彼女にとっては純粋な学術的好奇心なのだろうが、発想のベクトルが突飛すぎるし、羞恥心という概念が地球人とズレまくっている。
「あのな、シオリ。地球人の生殖や恋愛ステップってのは、そういう直接的な行為だけじゃないんだ。そこに至るまでの『過程』、つまりお互いの好みを理解したり、一緒に楽しんだりする時間――『デート』の文脈が一番大事なんだよ」
必死に言葉を選びながら、俺はなんとか軌道修正を試みる。
「過程、の文脈……」
「そう。だから、まずは買い物に行こう。お互いに服を選んだり、地球の文化に触れたりするんだ。それが結果的に、君の知りたい『地球人の心理』を理解する近道になるから」
シオリはしばらく、その綺麗な小首を傾げて俺の提案を脳内で演算しているようだった。
やがて、ポンと小さく手を叩く。
「なるほど、段階的な親密度の上昇(プロトコル)を体験せよ、ということね。理解したわ、キヨヒコ。その提案を承認するわ。では、ショッピングモールへ行きましょう」
ホッと胸をなでおろす。なんとか最悪の事態(現行犯逮捕)は免れたようだ。
「ちなみに、今日の活動資金なら心配いらないわ」
シオリはバッグから、見たこともない滑らかな金属製のカードを取り出した。
「私の母船のナノ製造機で、地球の貴金属の分子構造を完全再現して資金化したの。決済用口座には十分な電子通貨をハッキング……いえ、合法的に調達してあるわ。欲しいものがあれば、何でも言ってちょうだい」
「……色んな意味で、やっぱり君は宇宙人だな」
俺は苦笑しながら席を立った。
軍資金は潤沢(しかもエイリアン持ち)のようだが、この後の買い物でも彼女がどんな突拍子もない行動に出るか、まったく油断はできそうにない。
eac8db35 No.3773
最寄りの巨大なショッピングモールに到着すると、シオリはきょろきょろと周囲を見回しながら、俺の後ろを付いてきた。
平日の昼間だというのに、館内はそれなりに賑わっている。
「キヨヒコ、あちらのエリアに、地球人の高密度な移動ストリームが発生しているわ。何があるのかしら?」
シオリが指さした先には、色鮮やかなポスターが並び、大勢の人が吸い込まれるように入っていくシネマコンがあった。
「あれは映画館だよ。大きなスクリーンで、いろんな物語の映像をみんなで観る場所なんだ」
「集団での仮想体験……興味深いわ。地球人が感情を同期させるプロセスを観察する絶好の機会ね。キヨヒコ、私たちも潜入しましょう」
どんな作品があるかスケジュール表を見上げると、アクション、アニメ、ホラーなど様々なジャンルが並んでいた。
シオリはその中から、男女が街中で見つめ合っているポスターをビシッと指さした。
「これにするわ。『不器用な二人のディスタンス』。事前データによると、これは『恋愛(ロマンス)』と呼ばれるジャンルね。今日の私の研究テーマである『生殖行動に至るまでの精神的プロトコル』を学ぶのに、最も適したサンプルだわ」
「お、おう。まあ、これなら突飛なことも起きないだろうし、いい選択かもな」
さっそくチケットを購入し、上映までの間に売店へと向かう。
映画館のロビーには、香ばしいバターとキャラメルの甘い香りが漂っていた。
「地球人は、映像を網膜に焼き付ける前に、特定の有機物を摂取する習性があるのね」
「映画を観ながらポップコーンを食べるのは、定番中の定番なんだよ。ドリンクと一緒に買おうか」
カウンターに並んでいると、シオリの視線がメニューの一角に釘付けになっていることに気づいた。
そこには、現在公開中のアニメ作品とコラボした、可愛らしい動物の形をしたプラスチック製のキャラクターケース入りポップコーンが飾られていた。
無表情を装ってはいるものの、シオリはそのケースをじーっと見つめ、時折、髪を揺らしながら首をわずかに傾けている。
あからさまに興味津々だ。
「シオリ、あのキャラクターのケースのがいいか?」
「え? 私の知的探求心は、容器の意匠よりも中身の栄養価に向いて……」
「いいから。すいません、あのキャラクターケースのポップコーンをキャラメル味で。あと、ドリンク二つ」
俺が注文を済ませると、シオリは渡された丸っこいキャラクターケースを両手で大事そうに抱えた。
その様子は、宇宙人の観察官というより、完全に念願のおもちゃを手に入れた子供のそれだった。
「キヨヒコ、この造形物は、地球人の『可愛い』という感情のトリガーを極めて正確に刺激する構造をしているわ。……素晴らしいわね」
嬉しそうにケースの頭を撫でているシオリを見て、俺は「ステップとしてのデート」の文脈が、少しずつ彼女に伝わっているような気がして、密かに小さく笑った。
「よし、そろそろ上映時間だ。中に入ろう」
「了解したわ。暗闇の中での地球人のバイタル変化、しっかりトラッキングさせてもらうわね」
可愛いケースを抱えたまま、シオリは少し早足で、薄暗いシアターの入り口へと歩き出した。
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シアター内に入ると、そこは驚くほど静かだった。
平日の昼間、封切りからすでに数週間が経過しているということもあり、巨大な空間には俺たちの他に数組しかいない。
まさに「ガラガラ」という表現がぴったりだ。
「これほどの空間を占有するとは、地球人は効率性よりも娯楽への没入を優先させる傾向にあるようね」
「まあ、人が少ない方が静かでいいだろ」
俺とシオリは中段の、周りに誰もいない席を確保した。
シオリは、先ほど買ったキャラクターケース入りのポップコーンを大事そうに膝に抱え、ドリンクホルダーにコーラをセットした。
やがて照明が落ち、巨大なスクリーンに予告編が映し出される。
暗闇の中、シオリのポニーテールがシルエットになって揺れる。
彼女は完全にリラックスしているようで、落ち着いた様子でスクリーンを見つめていた。
映画が始まって30分。
物語は、まだ二人の主人公がお互いの気持ちに気づき始めたばかりの、静かな展開だった。
「……キヨヒコ」
突然、シオリが俺の方に体を寄せてきた。
暗闇の中、彼女の大きな瞳がこちらの様子を伺っている。
「どうした? 気分でも悪いか?」
「いいえ。……あの、あちらのカップルが、唇と唇を接触させていたわ」
彼女が視線を向けた先、遠く離れた前方の席に、確かに身を寄せ合っているカップルのシルエットが見えた。
「それがどうかしたか……?」
「事前データおよび今の映像の文脈から判断するに、これは『キス』と呼ばれる、初期段階の親密度上昇プロトコルだわ。……私も、試してみたい。キヨヒコ、キスをして」
シオリは、キャラクターケースを膝に抱えたまま、少し上目遣いで俺を見つめてきた。
その瞳は純粋な好奇心と、わずかな緊張で潤んでいるように見える。普段は無機質な発言が多い彼女だが、この瞬間は、ただただ「かわいい」と思ってしまう、可憐な女子大学生の顔をしていた。
「え、あ……でも、ここ映画館だぞ……」
「誰も見ていないわ。それに、過程の文脈が大事だと言ったのはあなたよ。……ダメかしら?」
そんな顔で、そんなトーンでおねだりされたら、断れるはずがない。
俺は喉の奥が鳴るのを自覚しながら、ゆっくりと顔を近づけ、彼女の柔らかい唇に自分のそれを重ねた。
ほんの一瞬、甘いキャラメルの香りがした。
「ふう。これが、キスのフィードバック。心拍数の急激な上昇を確認したわ」
シオリは、少し紅潮した顔で唇を触り、何かを確かめるように呟いた。
俺は心臓が口から飛び出しそうなほど高鳴っているのを必死に隠した。
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映画はさらに進み、1時間が経過した頃。
物語は盛り上がりを見せ、主人公たちの感情が交錯するシーンへと差し掛かっていた。
俺が映画の内容に集中しようと努めていたその時、不意に、膝の上にあった俺の手の上に、柔らかい何かが重ねられた。
「シオリ……?」
見ると、シオリが俺の右手を自分の両手で包み込み、そしてゆっくりと、その手を自分の股間へと導いていったのだ。
「ちょ、シオリ!?」
俺は慌てて手を引こうとしたが、彼女はそれを許さなかった。
彼女の太ももの柔らかな感触、そしてタイツ越しに伝わる体温が、俺の手のひらにダイレクトに伝わる。
「キヨヒコ。また、あちらのカップルが接触を深めているのを確認したわ。今度は、生殖器周辺の愛撫、と思われる行動よ」
彼女はまたも、真顔で、しかしどこか甘えたような声で言った。
「これは、より高度な『性的興奮』の誘発プロトコルかしら。……キヨヒコ、撫でてみて。私も、そのフィードバックを計測したい」
「……ッ!」
彼女の瞳は、今度は好奇心だけでなく、何か抗いがたい、深い熱を帯びているように見えた。
薄暗い光の中で、その可憐な顔立ちは、今まで見た中で最も蠱惑的だった。
映画館で、しかも宇宙人相手に、こんな……。理性は「ダメだ」と叫んでいる。
だが、彼女の純粋で、かつ直球すぎる、そのかわいいおねだりに、俺はまたしても抗うことができなかった。
俺はそのまま、彼女の言う通り、タイツに包まれた柔らかな場所を、そっと撫で始めた。
「ああ、これ、は……。今までの接触とは、レベルが違うわ。身体の深部から、未知のエネルギーが……」
シオリは小さなため息のような声を上げ、俺の手のひらに身を委ねてきた。
彼女の身体はわずかに熱を帯び、呼吸も少し荒くなっている。
俺はもはや、映画の内容なんて全く頭に入ってこなかった。
されるがままに、暗闇の中で、彼女の新たな研究フェーズに、全身全霊で協力し続けることしかできなかった。
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「……あっ、キヨヒコ、そこ……不思議な感覚が、増幅して――」
薄暗いシアター内に、シオリの鈴を転がすような、しかし確実に普段よりボリュームの上がった声が響きそうになった。
「っ、シオリ! 声、声が大きいって!」
俺は焦って、彼女の太ももに這わせていた手をバッと引き離した。
いくらガラガラで周りに人がいないとはいえ、静かな映画館だ。これ以上は色んな意味で命に関わる。
「……あ、やめてしまうのね。プロトコルの継続が遮断されたわ」
シオリは少し不満そうに眉をひそめ、ふぅ、と熱い息を吐いた。
だが、彼女の研究心はそこで止まらなかった。
「では、相互作用の法則に従い、今度は私からあなたへ、同一の刺激をフィードバックするわ」
「え、おい、ちょっと――」
今度はシオリの細い指先が、迷いなく俺のジーンズの合わせ目の上へと伸びてきた。
驚いて制止しようとしたが、彼女は「これも観察よ」と言わんばかりの真剣な、そして何より抗いがたいほど可愛い顔で俺を見つめてくる。
衣服の上から、的確に、しかしどこか不慣れな手つきで愛撫が始まった。
「キヨヒコ、あなたのバイタルも急激に変化しているわ。体温の上昇、そして……ここが硬化していくプロセス、非常に興味深いわね」
「シ、シオリ、頼むからストップ……っ!」
耳元でそんな限界ギリギリの解説を囁かれ、下半身を刺激されては、映画の内容なんて1ミリも頭に入ってくるはずがない。
スクリーンでは主人公たちが感動的なシーンを迎えているようだったが、俺にとっては目の前の宇宙人の指先こそが世界のすべてだった。
結局、お互いに「絶頂を迎える」という決定的なラインだけはなんとか踏みとどまり、衣服を乱したまま、どうにか映画を最後まで観終えることができた。
シアターの照明がパッと明るくなった瞬間、俺は凄まじい解放感と、それ以上の疲労感でシートに沈み込んだ。
「素晴らしい仮想体験と実地データだったわ。人間の感情と身体の連動性について、有意義なサンプルが採取できたわね」
シオリは何事もなかったかのように、膝の上のキャラクターケースを抱え直して席を立った。その顔はほんのり桜色に染まっていて、やっぱりどう見てもただの可愛い女子大学生にしか見えないのが、タチが悪い。
シアターを出て、賑やかなショッピングモールの通路に戻ると、現実感が一気に戻ってきた。
「さて、キヨヒコ。暗闇での高負荷な研究を終えて、私の擬態器官が今度は『エネルギーの枯渇』を訴えているわ。それに、先ほどあなたから提案された『お互いの好みを理解する買い物のプロセス』もまだ未達成よ」
シオリはカードケースを指先で弄びながら、俺の顔を覗き込んできた。
「次は、地球人の栄養摂取(ランチ)にする? それとも、衣類の調達(ショッピング)へ向かうかしら?」
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シアターを出て、俺たちはショッピングモールのエスカレーターに向かった。
「地球人のこの、階層を自動で移動するシステムは効率的ね。エネルギー効率は……」
シオリがまた真面目な顔でブツブツと何事か計算している。
俺はそれを適当に聞き流しながら、すれ違う上りエスカレーターの列をなんとなく眺めていた。
その時だ。
俺の視線が、ある一点に吸い寄せられた。
すれ違ったのは、ショートカットがよく似合う、健康的なスタイルの女性だった。
何より目を引いたのは、その……非常に「豊かな」胸元と、そこから伸びるすらりとした足が眩しいショートパンツ姿だ。
(お、すごい……)
男の性というべきか、俺は無意識に、エスカレーターがすれ違った後も、彼女の後ろ姿を目で追ってしまった。
「――キヨヒコ。今の個体(女性)の身体的特徴、特に上半身の特定部位の容積と、下半身の露出面積に、あなたの視線が2.8秒間、集中していたわ」
隣から、冷ややかな、しかし冷静な分析の声が聞こえた。
「えっ、あ、いや……」
慌てて前を向いたが、時すでに遅し。
シオリは、先ほど映画館で見せた甘えたような顔はどこへやら、今は完全に「冷徹な観察官」の目で俺を見つめていた。ポニーテールが心なしかピシッと怒っているように見える。
「地球人の男性が、視覚的情報によって性的な関心を惹かれるプロセスは理解しているわ。……でも、目の前に私がいるのに、他の個体に興味を示すのは、今日の『恋人』という仮説の属性として、あまり適切な行動ではないわね。データにノイズが走るわ」
「ご、ごめん。つい、男の悲しい習性で……」
平謝りするしかない。宇宙人相手に浮気の弁明をする羽目になるとは。
「ふん。まあいいわ、データは補正すれば済むことだし」
シオリは小さく鼻を鳴らした。
「少し擬態器官の調整が必要になったわ。トイレに行ってくるから、ここで待っていて」
彼女はそう言い残すと、エスカレーターを降りた先にある、女子トイレのマークが描かれた通路へと足早に消えていった。
「……はぁ。怒らせちゃったかな」
俺は一人、ショッピングモールの通路のベンチに座り、落ち込んだ。
せっかく映画館でいい雰囲気(?)になったのに、俺のバカな習性のせいで台無しだ。
a891bcdd No.3804
それから5分ほど経っただろうか。
「――ねえ、キヨヒコ」
不意に、真横から声をかけられた。
顔を上げると、そこには、さっき俺が目で追っていた、あの「巨乳のショートパンツの女性」が立っていた。
「え……? あ、はい、何か……?」
突然のことに驚き、動揺する。
なぜ彼女が俺の名前を知っている? そもそも、なんで俺に話しかけてきたんだ?
俺が混乱していると、その女性は、さっきのシオリと同じように、小首を傾げて俺をじっと見つめてきた。
そして、ニヤリと、どこか見覚えのある、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「私だよ、キヨヒコ」
「……は?」
声が、シオリの声だった。
俺が固まっていると、彼女は俺の目の前で、くるりと一回転してみせた。
ショートカットの髪、豊かな胸元、ショートパンツ……姿形は、間違いなくさっきエスカレーターですれ違った、あの女性だ。
だが、服装が違った。
彼女が着ているのは、さっきトイレに行く前まで、シオリが着ていた「白のレース付きトップス」と「格子柄のミニスカート」のままだったのだ。
「……え、シオリ……!? 君、どうして……!?」
「トイレで、さっきの個体の外見データを元に、瞬時に擬態(変身)したの」
シオリ(ショートカットVer.)は、俺の隣に座り込み、自分の胸元を触りながら言った。
「キヨヒコ、あなた、こういう……『豊かな』身体的特徴が好きなのでしょう? 視線の動きから明らかだわ」
「……」
ぐうの音も出ない。
「だから、私もその特徴を取り入れたわ。……これで、データにノイズが走ることはないわね?」
彼女は少し得意げに、そしてまた、あの上目遣いで俺を見てきた。
ショートカットの彼女は、ポニーテールの時とは違った、どこか小悪魔的な可憐さがあった。
「まったく、君は……」
俺はもう、呆れるのを通り越して、彼女の(ある意味での)健気さに、苦笑するしかなかった。
「――それで、キヨヒコ」
シオリ(ショートカットVer.)は、俺の腕にまた腕を絡めてきた。
「擬態の調整は終わったわ。次は、ショッピングの時間ね」
彼女は、自分がさっきまで着ていた、そして今も着ている(?)その服を指差した。
「今度は、あのショートパンツの女性が着ていた、あの『ショートパンツ』と『トップス』を買いに行こう。……そして、私もそれを着てみるわ。……いいかしら?」
可憐な顔おねだりされると、断れるはずがない。
「……ああ、わかった。買いに行こう」
俺は、彼女の「好み」に対する徹底的な追求心に、少しの恐怖と、それ以上の期待を感じながら、ショッピングモールの中へと歩き出した。
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「……キヨヒコ、待って。あの空間に、非常に興味深い色彩のグラデーションを感知したわ」
ショートパンツの服屋を探して歩いていたはずが、シオリ(ショートカットVer.)は突然足を止め、通路の脇にある一軒のショップを指差した。
そこは、ピンクやパステルカラーを基調としたお洒落な照明が灯る、完全に女性向けの「ランジェリーショップ」だった。
「あ、おい、シオリ……あそこは下着の専門店だぞ!? 男の俺が入るにはちょっとハードルが高すぎるというか……」
「下着? つまり、衣服のさらに内側に装着する、最も生殖器に近い防護服のことね。今日の私の研究テーマにこれ以上なく直結するアイテムだわ。行きましょう!」
恥ずかしがる俺の抵抗などお構いなしに、シオリはぐいぐいと俺の腕を引いて店内に突入していった。
店内には、フリルやレースがあしらわれた、カラフルで華やかなブラジャーやショーツが所狭しと並んでいる。
当然、店内にいるのは女性客かカップルばかり。男一人で連れ立って入るにはあまりに刺激が強く、俺は周囲の目が気になって仕方がなかった。顔が勝手に赤くなっていくのが分かる。
しかし、シオリはそんな俺の動揺をよそに、完全にテンションが上がっているようだった。
「見て、キヨヒコ! この薄い布地の多様なカラーバリエーション。それに、この造形……地球人の雌は、このような装飾性の高い防護服で個体を誇示するのね。非常に興味深いわ!」
目がキラキラと輝いている。彼女にとっては、最先端の未知のテクノロジーに触れているような感覚なのだろう。
「し、シオリ、声が大きいって……! ほら、見るなら静かに……」
「キヨヒコ、これなんてどうかしら?」
俺の制止を聞かず、シオリは壁に掛かっていた鮮やかな真っ赤なレースのブラジャーを手に取った。
そして、瞬時に擬態したばかりの、その「豊かな胸元」に服の上から大胆にそれをあてがった。
「私のこの新しい身体の容積に、このサイズは適合するかしら? 似合う?」
「に、似合うと思うけど、ちょっとダイレクトすぎるから!」
視線をどこにやっていいか分からず、俺は慌てて目を逸らした。
しかし、彼女の猛攻は止まらない。今度は、ほとんど紐のような、黒のきわどいデザインのショーツを手に取った。
「じゃあ、この下半身用のパーツは? 地球人の生殖へのモチベーションを高める視覚効果がありそうだわ。キヨヒコ、私のここにこうしてあてがうと……どう? 興奮する?」
シオリはミニスカートの上から、自分の股間のあたりにその黒いショーツをぴったりと押し当てて、これ以上ないほど純粋で、かわいい笑顔を俺に向けてくる。
「っ、もう勘弁してくれ……!」
周りの店員や他のお客さんの視線が、痛いほど俺たちに突き刺さっている気がする。
可愛い顔で大真面目にそんなおねだりをされるのは、男としては生殺し以外の何物でもないし、何より恥ずかしさで爆発しそうだった。
「シオリ、質問は後でいくらでも聞くから! とりあえずそれを買って、早く次の服屋さんに行こう、な!?」
俺は真っ赤になった顔を両手で覆いそうになりながら、されるがままの状態で、彼女が次々と手に取るカラフルな下着の品評会に(必死の形相で)付き合い続けるしかなかった。
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「お客様、よろしければおサイズをお測りいたしましょうか?」
カラフルな下着を次々と身体にあてがって盛り上がっているシオリに、店員さんがにこやかに声をかけてきた。
「サイズ測定? ええ、お願いするわ。自分の現在の擬態パラメーターを正確に把握することは、研究において極めて重要だわ」
シオリは快諾し、フィッティングルームの方を指差された。
そして当然のように俺の腕を掴む。
「キヨヒコ、あなたも一緒に来て。測定のプロセスと、私の身体の数値化される瞬間を共有しましょう」
「はぁ!? 無理無理無理! 何言ってるんだよ、そこから先は女人禁制だ! 俺はここで待ってるから!」
俺は全力で首を横に振り、シオリの手を離そうとした。いくらなんでも、下着屋の試着室に男が入っていくなんて犯罪一歩手前だ。羞恥心で心臓がバクバクしている。
しかし、シオリは引き下がらない。
潤んだ大きな瞳で俺をじっと見つめ、ぎゅっと腕を抱きしめてきた。
「どうしても一緒がいいわ、キヨヒコ。私はまだ地球人の下着の構造を完全に理解していないの。あなたがいないと、どのデータが正しいのか判断できないわ。……お願い」
ショートカットに変身した彼女の、あの豊かな胸が俺の腕にぴったりと押し当てられている。
そんな可愛い顔で、必死におねだりされては、店員さんの「お連れ様もどうぞ、個室ですので」という助け舟(?)もあり、俺の理性の防波堤はあっけなく崩壊した。
「分かったよ。行く、行けばいいんだろ……」
顔から火が出そうなほど真っ赤になりながら、俺はシオリに連れられてフィッティングルームのカーテンの向こうへと足を踏み入れた。
狭い個室の中で、シオリは躊躇なくトップスのボタンを外し、ブラジャー姿になった。
目の前に広がる、圧倒的なボリュームの白濁した肌。俺は慌てて壁を向いて目を覆った。
「では、失礼しますね……アンダーバストが……あ、あれ?」
メジャーを当てた店員さんが、不思議そうな声を上げた。
「お客様、今着けられているブラジャー、サイズが全く合っていませんね。カップが完全に浮いてしまっていますし、かなり窮屈そうです」
(そりゃそうだろ……!)
俺は心の中で激しく突っ込んだ。
だって彼女、さっきエスカレーターですれ違った巨乳の女性の姿に、トイレで「急遽変身した」ばかりなのだ。服や下着は、変身前の、少しスレンダーだったポニーテール姿のシオリのもののまま。
中身のボリュームだけが急激に膨らんだのだから、サイズが合うわけがない。
「サイズが、合っていない……?」
シオリは自分の胸を不思議そうに眺め、それから壁を向いている俺を振り返った。
「キヨヒコ、これが地球の『サイズ不適合』という現象ね。
私の擬態が完璧すぎたせいで、衣服のキャパシティを超えてしまったみたい。……ねえ、どれが私のこの『新しい胸』にぴったりなのか、あなたも一緒に選んでちょうだい」
ブラジャー姿のまま、大真面目にそんなことを言ってくる宇宙人のシオリ。
狭い試着室の密室空間、すぐ後ろにはあり得ないほどの美巨乳。
俺の心拍数は、間違いなく今日一番の限界値を突破していた。
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「ええと、このサイズならぴったりですね。アンダーがこれくらいで、カップは……」
店員さんが持ってきてくれた新しいサイズのブラジャーを身につけると、シオリの豊かな胸元は美しく、そして劇的に収まりが良くなった。試着室を出る頃には、俺の精神的疲労はピークに達していたが、シオリは手に入れたカラフルな下着の袋を大事そうに抱えて、満足そうに微笑んでいる。
その後、俺たちは本来の目的だったアパレルショップへ向かった。
シオリは、さっきエスカレーターですれ違った女性が着ていたような、タイトな黒のショートパンツと、それに合わせるヘルシーな白のノースリーブのトップスをセレクトした。
「これを着ることで、地球人男性の視線をより効率的に集め、観察データのサンプル数を増やすことができるわね」
「いや、頼むから俺以外の男は刺激しないでくれ……」
お会計はもちろんシオリの万能電子カード。スマートに支払いを済ませた彼女は、その場ですぐに新しいショートパンツ姿に着替えて店から出てきた。
すらりと伸びた健康的な生足、そしてタイツを脱いだことで強調される抜群のスタイル。
ショートカットの髪型も相まって、完全に「夏の街が似合うお洒落な女子大学生」そのものだ。
「次は、枯渇したエネルギーの補給ね」
シオリの提案で、俺たちはショッピングモール内の、少し落ち着いた雰囲気のイタリアンカフェに入った。
窓際の席に座り、シオリはトマトとバジルのパスタ、俺はハンバーグプレートを注文する。
「ん、美味しいわ。地球の有機物は、味覚神経を刺激する化学物質の配合が絶妙ね。特にこの『チーズ』という発酵脂質は、脳内の多幸感セクターを刺激するわ」
「気に入ってくれてよかったよ」
パスタを上品にフォークに巻き付けながら、美味しそうに頬張るシオリ。
その姿はどこからどう見ても可愛い人間の女の子で、午前中に映画館の暗闇で俺の股間を撫でてきた宇宙人だとは誰も思わないだろう。
食後のコーヒーが運ばれてきたところで、俺は一息ついて切り出した。
「さて、シオリ。お腹も膨れたし、これから午後はどうする? 何かやりたい観察はあるか?」
シオリはコーヒーカップを両手で包み込み、ふーっと息を吹きかけてから、真剣な目で俺を見つめた。
「午前中のシネマ、および先ほどの下着店でのアクティビティにより、地球人の『個体間の距離』と『生殖衝動のトリガー』について、極めて質の高いデータが得られたわ。ですが、まだ仮説を検証しきれていない部分があるの」
「仮説……?」
「ええ。先ほど映画館で、キヨヒコは私の『股間』への接触を行ってくれたわね。その際、お互いに『行く(絶頂)』という最終プロトコルに到達する前に、周囲の環境的要因によって中断を余儀なくされたわ」
シオリはトーンを落としながらも、極めて明瞭な声で、とんでもない未解決課題を提示してきた。
「つまり、午後の研究テーマは『最後まで到達した際の、地球人の精神的・身体的同調プロセスの完全な計測』よ。これを実行するには、午前中に却下された『ラブホテル』、あるいは遮蔽性の高いプライベート空間の確保が必須条件となるわ。キヨヒコ、異論はないかしら?」
「……っ!!」
またしてもコーヒーを喉に詰まらせそうになる。
午後はいよいよ、彼女の「生殖研究」が最終段階へと突入しようとしていた。
「だ、だから、それには心の準備とか、手順が……!」
「手順なら、午前中に『デートの文脈』を十分に積み重ねたわ。お互いの好みの服を買い、食事を共にした。完璧なプロトコルよ。ねえ、キヨヒコ。私に、あなたの『最後まで』を教えて?」
ショートカットの頭を少し傾げ、潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめてくるシオリ。
その可愛いおねだりを、俺の理性がこれ以上拒みきれるはずもなかった。
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「……あれ?」
まぶたを開けると、天井に埋め込まれた柔らかい間接照明と、やけに豪奢なシャンデリアが目に飛び込んできた。
身を起こすと、そこはふかふかの巨大なキングサイズベッドの上だった。
落ち着いた静寂と、ほのかに甘いアロマの香りが部屋を満たしている。
壁には各種設備のコントロールパネル、脇には大型の液晶テレビと、バブルバスが泡立つガラス張りのバスルーム。
(俺、いつの間に……!?)
カフェでシオリの直球すぎるおねだりを受け、思考がフリーズしてからの記憶が曖昧だった。どうやら俺は、あの可憐な顔に押し切られ、そのまま彼女に誘導されるがままにこの場所――「ラブホテル」へと足を踏み入れてしまったらしい。
「目が覚めたかしら、キヨヒコ」
バスルームの方から、パタパタと軽い足音が近づいてきた。
振り返ると、そこには先ほど買ったばかりの、胸元が大胆に開いたノースリーブのトップスとタイトな紫のショートパンツを着たシオリが立っていた。
ショートカットの髪から覗く耳や首筋が、室内灯の光を受けてうっすらと桜色に染まっている。
「あまりにもあなたのバイタルサイン(心拍数と血圧)が上昇して混乱状態に陥っていたから、私が安全にこの『専用実験施設』までエスコートしたのよ」
シオリはベッドの端に腰を下ろすと、マットレスが沈み込み、彼女の甘い香りが一気に鼻腔をくすぐった。
「見て、キヨヒコ。この空間は本当に素晴らしいわ。外部からの視覚・音響的遮蔽が完璧で、温度や湿度も生殖行動に最適化されている。午前中の映画館とは比較にならないほど、精密なデータが採取できそうだわ」
彼女は真面目な顔で部屋を見回した後、ゆっくりと俺の方へ体を寄せてきた。
ショートパンツから伸びる、滑らかで健康的な生足が俺の太ももに触れる。
そして、その豊かで柔らかい胸元が、俺の腕にぴったりと押し当てられた。
「さあ、キヨヒコ。午前中に中断された『プロトコル』の続きを始めましょう。私のこの身体も、あなたとこうして急接近するだけで、内部の擬態器官が熱くなって、何かが満たされていくような……不思議な信号を発しているの」
大きな瞳で俺をじっと見つめてくるシオリ。
その表情には、宇宙人としての純粋な学術的好奇心と、目の前の男――俺に対する、地球人の女性としての甘やかな熱が交じり合っていた。
可愛い顔で、こんな風におねだりされて……もう、逃げ場なんてどこにもなかった。
「シオリ。後で『知らなかった』なんて言っても遅いからな」
「ええ。あなたの『すべて』を、私に観察させて――」
俺は覚悟を決め、彼女の柔らかな肩を抱き寄せて、ゆっくりとベッドへと押し倒した。
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「キヨヒコ。私の皮膚表面の温度が、急激に上昇しているわ」
ベッドの上に押し倒されたシオリは、ショートカットの髪を散らしながら、上気した顔で俺を見上げている。
豊かな胸元が、浅い呼吸に合わせて大きく上下していた。
「それは……シオリ、君が興奮してるからだよ」
「興奮。脳内から多幸感を誘発する神経伝達物質が大量に分泌されているのね。あなたにこうして覆いかぶさらされているだけで、胸の奥がキュッとして、息が苦しいの」
シオリは細い指先を伸ばし、俺の頬にそっと触れてきた。
タイトなショートパンツに包まれた彼女の足が、俺の腰に絡みつくようにすり寄ってくる。
「ねえ、キヨヒコ。映画館の時みたいに……キスをして。あの時の刺激が、また欲しいの」
少し潤んだ瞳でのおねだりに、俺は抵抗することなんてできない。
彼女の頭をそっと引き寄せ、唇を重ねた。
「んっ……ふぁ……っ」
一瞬だけ触れ合うつもりが、シオリの方から舌を小さく覗かせて、俺の口内をねだるように探ってきた。
カフェで食べたチェリーの甘い香りが口いっぱいに広がる。
「ん、はっ、すごいわ。口内の粘膜接触だけで、全身の細胞が粟立つようなフィードバックがっ」
「シオリ、声……っ」
「どうして? ここは完全な遮蔽空間でしょう? 声を抑える必要なんてないわ。あっ、手が……そこに触れるの……?」
俺の手が彼女のトップスの裾から潜り込み、今日一緒に選んだばかりのブラジャーのカップを押し上げ、滑らかな肌へと滑り込む。
「あっ! んうっ……! き、キヨヒコ、そこはダメっ、刺激が強すぎるわ!」
「ダメなのか? やめようか?」
「だ、ダメじゃない! やめないで! 私の擬態器官が、あなたの手になじむように、もっと柔らかく変化しようとしているの」
シオリは俺の首に腕を回し、ギュッと抱きついてきた。
ショートパンツ越しに伝わる体温と湿り気が、俺の理性を一気に吹き飛ばしていく。
「キヨヒコ……私、自分の身体がどうなっちゃうのか、わからないの。あなたが触れるたびに、頭の中が真っ白になって、『観察』なんてどうでもよくなっちゃいそう……」
「シオリ、俺もだよ。もう宇宙人とか観察とか、関係なくなってる」
「ええ……それでいいわ。私を……地球人の女にして、キヨヒコ……っ!」
シオリは俺の耳元で甘い吐息を漏らしながら、自分からショートパンツのボタンを外し、俺をさらに深くへと招き入れてきた。
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「あっ、ぁんっ、キヨヒコ……っ! すごい、私……何かが、あふれ出そう……っ!」
ベッドが不規則に揺れる中、シオリは激しい喘ぎ声を上げながら、俺の背中に爪を立ててしがみついてきた。
限界を迎えた俺たちは、お互いの体を強く求め合い、大きな波を飲み込むようにして一回目の絶頂を迎えた。
「はぁ……はぁ……っ、キヨヒコ……これが、『いく』というプロセスなのね……。全身の神経回路が一瞬フリーズするような……すごい多幸感だわ……」
シオリは汗に濡れたショートカットの髪を額に貼り付け、胸を大きく上下させながら、放心したように天井を見つめていた。
俺も彼女の隣に倒れ込み、肩で息を吐きながら荒い呼吸を整えようとした。
だが、彼女の擬態器官はまだ研究を終えていなかった。
「でも、キヨヒコ。私のデータ収集は、まだ完了していないわ」
「えっ……シオリ、まだやるのか……!?」
「ええ。一回だけではサンプル数が不十分よ。それに……あなたのその部分、まだ元の状態に戻っていないでしょう?」
シオリは熱っぽい瞳で俺の下半身を見つめると、ゆっくりと体を起こした。
その時、彼女の身体を包む光が一瞬だけ歪む。
「あっ……!」
光が収まった瞬間、目の前にいた「ショートカットの巨乳女性」の姿が変化していた。
ポニーテールにまとめられた髪、華奢な肩、そして引き締まった小さめの胸元――映画館に入る前、朝俺の家にやって来た「最初の女子大学生」の姿に戻っていたのだ。
「シオリ……!? 最初の姿に戻った……?」
「ええ。身体の容積や構造の違いによる、感覚フィードバックの比較検証を行うわ。……こちらの身体の方が、あなたの好みには合わないかもしれないけれど……」
シオリは少し不安そうな、でもどこかわざとらしい上目遣いで俺を見つめ、自分から俺の上に乗っかってきた。
「ねえ、キヨヒコ……この身体でも、もう一回……私を抱いて?」
そんな可憐な姿でおねだりされたら、二度目の限界なんてあっさりと突破してしまう。
俺は彼女の華奢な腰を抱き寄せ、再びその身体へと自分の身を沈めた。
「あっ……! んんっ……!?」
先ほどの巨乳の身体とは、全く感触が違っていた。
「くっ……シオリ、すごく……狭い……っ!」
「あ……あっ……! き、キヨヒコ……太い……! 私の体内が、みっちりと引き伸ばされて……っ!」
華奢な体躯に合わせて擬態された彼女の肉体は、驚くほど締め付けが強く、そして奥までの距離が極めて浅かった。
「はぁっ、あっ……! 深い……! キヨヒコのが、私のいちばん奥の……子宮口の手前までダイレクトに届いてるわ……っ!」
「シオリ……っ、きつすぎて、すぐ行きそうだ……っ!」
「ダメ……っ、いっしょに……いっしょに行きましょう……っ! ああ、ダメ……奥を突かれるたびに、体内の水分分泌機能が暴走しちゃ……っ!」
浅いからこそ、俺の動き一つ一つがダイレクトに彼女の最も敏感な部分を削り取る。
シオリは背中を反らせ、ポニーテールを振り乱しながら絶叫に似た声を上げた。
「ああっ! やだ、キヨヒコ、壊れちゃう……! 体内から未知の液体が……止められない……っ!!」
「シオリ――っ!!」
ドクン、と彼女のいちばん深い場所を突いた瞬間、シオリの身体が激しく痙攣した。
次の瞬間、彼女の秘部から温かい大量の愛液が、勢いよく噴き出した。
シーツを大きく濡らすほどの激しい潮吹きとともに、シオリは白目をむく勢いで二度目の強い絶頂へと引きずり込まれていった。
「あぁぁぁっ――!!」
ビクビクと体を震わせ、潮を吹き出し続ける彼女の圧倒的な締め付けに耐え切れず、俺もそのまま彼女の奥深くで二度目の果てる瞬間を迎えたのだった。
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それから次の週末。
すっかり夏の強い日差しが照りつける午後、俺とシオリは宮崎の青島海岸の砂浜にいた。
青い海と空が広がる中、パラソルの影に入ったサマーベッドにシオリが腰掛けている。
今日の彼女は、ロングの黒髪に健康的な小麦色の肌、そしてグラマラスなスタイルという、またしても新しい姿に擬態していた。
身にまとっているのは、この前ショッピングモールで買い直した、鮮やかなビビッドピンクのセパレート水着だ。
「ふぅ。海水によるミネラル分と紫外線の照射データ、極めて良好だわ」
シオリは冷たいトロピカルドリンクのストローを咥えながら、真顔で呟いた。
周囲の海水浴客からの視線が、その抜群のスタイルに痛いほど注がれているが、本人は至ってマイペースだ。
「シオリ、日焼け止め塗ったか? 擬態とはいえ、地球の紫外線は肌にダメージを与えるぞ」
「問題ないわ。私の皮下組織は自動でメラニン相当の保護層を形成しているから。……それよりも、キヨヒコ」
シオリはストローから唇を離すと、パラソルの影で俺の腕をぎゅっと抱きしめてきた。柔らかく熱を帯びた肌が俺の腕に触れる。
「ラブホテルでの『高負荷密着実験』以降、私の擬態コアに異常が発生しているの」
「えっ!? 異常って……大丈夫なのか!?」
俺が慌てて顔を覗き込むと、シオリは小麦色の頬をうっすらと赤く染め、上目遣いに俺を見つめてきた。
「ええ。身体的な不具合ではないわ。ただ……あなたと一定以上の距離が開くと、胸の奥の疑似心臓が不規則なビートを刻み、思考ルーチンがすべて『キヨヒコ』のデータで占有されてしまうの。地球人の文献によると、これは『恋心』と呼ばれる状態に極めて類似しているわ」
「シオリ……」
「我が星の学術機関への報告書には、こう記載するつもりよ。『地球人の生殖研究は、対象への深い恋愛感情の発生を伴うため、極めて危険かつ中毒性が高い』……とね」
そう言って、シオリは可憐な笑みを浮かべると、俺の耳元にそっと唇を近づけた。
「ねえ、キヨヒコ。今日の夜は、波の音が聞こえるプライベートコテージを予約してあるの。……続きの観察、付き合ってくれるわね?」
海風が吹き抜けるビーチで、俺たちの少し変わった、でもどこか甘い研究生活は、まだまだ終わる気配がなさそうだった。
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夜、波の音が遠くで心地よく響くプライベートコテージ。
リビングの灯りを少し落とした室内には、潮の香りと、シオリの体から漂うどこか甘い未知の香りが満ちていた。
「キヨヒコ。昼間のビーチでの宣言通り、これより『恋心と身体的密着に関する二次検証』を開始するわ」
水着から薄手のルームウェアに着替えたシオリは、ベッドサイドに腰掛け、ポニーテールを揺らしながら真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
今日の彼女は、最初に俺の家へやってきた時の「華奢で可愛らしい女子大学生」の姿に戻っている。
「昼間、異常と言っていた胸の鼓動……今はどうなんだ?」
俺が隣に腰を下ろして尋ねると、シオリは迷わず俺の手を取り、自分の左胸の上へと導いた。
やわらかい胸の奥で、トクン、トクンと、地球人のそれよりも少し早いリズムで高鳴る鼓動が、手のひらを通してはっきりと伝わってくる。
「……見つめ合うだけで、このように擬態コアの熱量が上昇するの。昼間の『小麦色姿』の時もそうだったけれど、この『最初の姿』の時が、一番反応が顕著だわ。……キヨヒコ、あなたはどの姿の私が一番好きなのかしら?」
可憐な瞳を潤ませながら、どこか不安そうに、そして愛おしそうにおねだりするように尋ねてくるシオリ。
「どの姿も魅力的だけど……やっぱり、最初に助けた時のこの姿のシオリが、一番しっくりくるかな」
「……っ」
俺の言葉を聞いた瞬間、彼女の頬がフッと朱に染まり、ポニーテールが可愛らしく揺れた。
「肯定的な回答を受信したわ。脳内の多幸感セクターが、限界値を突破しそうよ。……キヨヒコ、責任を取って。私を、もっとあなたで満たして……」
甘い声でそう囁くと、シオリは自分から俺の首に腕を回し、唇を重ねてきた。
昼間の波音を背景に、地球人と宇宙人の、言葉では解き明かせない特別な夜が静かに更けていった。
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旅行から数日後。
俺の狭いアパートの部屋で、シオリは大きな紙袋を両手で大事そうに抱えて立っていた。
「シオリ、その大きな袋……何が入ってるんだ?」
俺が尋ねると、シオリは得意げに少し胸を張り、ポニーテールを揺らした。
「キヨヒコ、覚えているかしら? この間、テレビで『新体操の競技大会』が放映されていた時、あなたが画面を非常に真剣な眼差しで注視していたことを」
「え? ああ……まあ、選手のしなやかな動きとか、技の凄さに感心して見てたけど……」
「ええ。あなたの視線追跡データと脳波の変動パターンから判断して、あなたがあの『極限まで鍛え上げられた美と、身体に密着した特定の衣装』に対して強い関心を示していると解析したの。だから、買ってきたわ」
シオリは紙袋の中から、一枚の衣装を取り出した。
それは、光沢のある鮮やかなブルーの生地に、煌びやかなスパンコールが散りばめられた、ハイレグ形状の「新体操用レオタード」だった。
「なっ!?これ、どこで買ってきたんだよ!?」
「インターネット上の専門取引ネットワークを通じて、私のハッキング……いえ、合法的な電子通貨で購入したわ。サイズは私の計算に基づくオーダーメイドよ」
シオリはそのレオタードを愛おしそうになでると、俺に向かってニヤリと微笑んだ。
「これより、該当競技における『運動機能美』および『生殖的視覚刺激』の追加検証を行うわ。隣の部屋を借りるわね」
「あ、おい、シオリ――!」
制止する間もなく、彼女はレオタードを抱えて奥の部屋へと消え、パタンとドアを閉めた。
室内が一瞬、静まり返る。
ドアの向こうから、衣類が擦れる音と、わずかに空間が歪むような微かな電子音が聞こえてきた。
おそらく彼女は今、一度全ての服を脱ぎ捨てて素肌になり、動画データから抽出した「完璧な新体操選手」の肉体へと、細胞レベルで変身をしているのだろう。
数分後、静かにドアが開いた。
「――お待たせしたわ、キヨヒコ。プロセスの完了を報告するわ」
部屋から出てきたシオリの姿を目にした瞬間、俺は息をのんだ。
そこに立っていたのは、いつもの女子大学生のシオリではなかった。
きゅっと高い位置でまとめられたシニヨンヘア。
遠目からでも目を引く、引き締まった美しい腹筋と筋肉美。
それでいて、女性らしい柔らかな曲線を残した、驚くほどスタイルのいい抜群のプロポーション。
そして何より――ハイレグのレオタードの胸元を押し上げるような、圧倒的なボリュームの豊かな胸。
極限まで鍛え上げられた「アスリートの肉体美」と、男性の目を奪う「極上のスタイル」が完璧に融合した姿だった。
薄い生地のレオタードが、彼女の引き締まった腰つきや背中のライン、そしてスラリと伸びた健康的な太もものラインを、容赦なく強調している。
「……どうかしら、キヨヒコ」
新体操選手姿のシオリは、長くしなやかな脚をすっと一歩踏み出し、目の前で優雅に一回転してみせた。
「動画データから『一流の新体操選手』の骨格、筋肉密度、および柔軟性を完全再現し、さらにあなたの好む『豊かな胸部』のパラメータを統合したわ。……この身体と衣装、あなたの期待値に適合しているかしら?」
ポーカーフェイスを装いながらも、その大きな瞳は期待に満ちて潤んでおり、頬はうっすらと朱に染まっていた。
目の前の圧倒的な美と、あまりにも直球すぎる「新体操選手」のおねだりに、俺の心拍数は一気に跳ね上がった。
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「適合どころか、完璧すぎて直視できないレベルだよ」
俺がそう呟くと、新体操選手姿のシオリは、満足そうに「ふふん」と鼻を鳴らした。
光沢のあるブルーのレオタードは、彼女の引き締まったウェストや背筋の美しいラインをくっきりと浮き彫りにしている。
それなのに、ハイレグの布地を押し上げる太ももや、胸元から溢れんばかりの豊かなボリュームは、あまりにも魅惑的だった。
「ふふ、キヨヒコ。言葉だけでなく、バイタルデータもしっかり『興奮状態』を示しているわ」
シオリはしなやかな身のこなしで近づいてくると、俺の目の前でスッと片足を高く上げ、完璧なY字バランスを披露してみせた。
「あ、ちょっとシオリ! 角度が急すぎて、布地がっ!」
「新体操選手の柔軟性と関節可動域の検証よ。でも、この衣装は非常に股関節周りの可動域が広く設計されているけれど、同時に、地球人男性の視線をこの一点に集中させる構造になっているのね」
足を下ろしたシオリは、そのまま俺の膝の上にすっと腰を下ろしてきた。
レオタードのツルツルとした独特の生地の感触と、鍛え上げられた肉体ならではの弾力、そして彼女自身の甘い体温が、俺の太ももにダイレクトに伝わってくる。
「キヨヒコ。この衣装を着た状態での『運動機能』と『生殖衝動』の相互作用について、さらに深い観察を行いたいの」
シオリは俺の首に柔らかい腕を回すと、しなやかな身体をすり寄せてきた。
豊満な胸が、レオタード越しに俺の胸元にぴったりと押し当てられる。
「このアスリートの身体は、普段の擬態よりもさらに体温が高く、感度も鋭敏に設定されているわ。あなたが私に触れたら、どのようなフィードバックが返ってくるか……試してみる?」
耳元で甘く囁かれ、新体操選手の綺麗なシニヨンヘアから漂う香りに包まれる。
「シオリ……君は本当に、俺をどうにかするのが上手いな」
「学術的好奇心と、今の私は、ただあなたに愛されたいという『欲望』に従っているだけよ。さあ、キヨヒコ。新しい『観察』を始めましょう?」
上目遣いでおねだりしてくる彼女の腰を、俺は力強く抱き寄せ、そのままベッドへと倒れ込んだ。
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「キヨヒコ。この身体の関節可動域と柔軟性は、普段の擬態とは比較にならないほど高められているわ。これなら、従来の体位では不可能だった『広角度の密着』が可能になるわね」
シオリは熱っぽい息を吐きながら、俺の上で妖艶に微笑んだ。
鍛え上げられたしなやかな体を軽々と折り曲げ、普通の人間の女性では到底あり得ない角度で、自身の脚を大きく開いて俺の腰を挟み込んでくる。
ハイレグのレオタードが限界まで引き伸ばされ、その隙間から露わになった最も敏感な部分が、ダイレクトに俺の腰元へと押し当てられた。
「っ、シオリ! なんだこの体制……!?」
「新体操の屈曲運動を応用した、完全密着の体位よ。観念して、キヨヒコ。この体位なら、あなたの深いところまで、余すことなく私の中に引き込めるわ」
シオリは自ら腰をゆっくりと沈め、俺の太い一撃をその体内へと呑み込んでいく。
「あぁっ! んんっ……!!」
驚くほどの柔軟性によって生み出されたその角度は、今まで一度も届いたことのない彼女の『いちばん奥の深層』へと、恐ろしいほどの密着度で一気に到達した。
「くっ! 深すぎる! シオリ、きつい……!」
「あ、あっ……! すごいっ! 体幹が安定しているから、あなたの動きを逃さずに、全角度から締め付けられるわ!」
シオリは俺の首に腕を巻き付けると、柔軟な背中を弧を描くように大きく反らせた。
光沢のあるブルーのレオタードのもと、圧倒的なボリュームの胸が露わになり、彼女の突き出された腰が、波打つような滑らかな回転運動で俺を攻め立ててくる。
「あっ、はぁっ。キヨヒコ! 自分で動かさなくても……この身体なら、あなたを絞り出すようにうねりを与えられるのっ!」
「シオリっ、そんな動き……耐えられない!」
「ダメ……逃がさないわ! このしなやかな脚で、あなたをロックしたまま……最後まで攻め抜くわっ! ああぁっ、奥が……奥が熱い!!」
人間の限界を超えた新体操選手の柔軟性と、完璧に計算された体位の攻勢に、俺の理性が一瞬で焼き切られようとしていた。