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/tachiha/ - たちは板κ

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e4ad7d87 No.4041

cbef7ff9 No.4378

「――あーっ、冷たくて気持ちいい! やっぱ戦闘後の水浴びは最高だな!」
煌々と輝く満月の下。
静寂に包まれた夜の湖で、俺――いや、今は『私』か――は、頭の上で腕を組み、大きく背伸びをした。
ぱちゃり、と水音が響く。
湖面に映るのは、透き通るような水色の長髪に、黄金に輝く瞳を持った絶世の美女。
少し尖った耳はエルフの証であり、そして何より……重力に逆らうように主張する、豊満すぎる二つの果実。
(いや、自分で言うのもなんだが、マジで俺のキャラメイク神がかってるな……)
俺の現在の姿は、VRMMO『アストラル・オンライン』で何千時間もかけて育て上げたマイキャラクター、『ルナリア』そのものだった。
なぜかゲームの世界(あるいはそれに似た異世界)に、このアバターの姿のまま転生してしまったらしい。
問題は、俺がネトゲ時代に愛用していた「最強装備」のままだということだ。
俺が今身につけているのは、金色の装飾が施された水色のビキニアーマー……いや、もはやアーマーですらない『月女神の踊り子服(神話級)』。
防御力ゼロの代わりに完全回避効果が付与された最強装備なのだが、布面積が少なすぎて、濡れると肌が丸透けになるという、完全に「男のロマン」を煮詰めたエロ装備である。
傍らに突き立てた愛剣が無ければ、ただの痴女だ。
「ル、ルナリア様……あのっ……」
不意に背後から、上ずった、甘い声が聞こえた。
振り返ると、岸辺には顔を真っ赤にしてモジモジしている二人の美少女が立っていた。
一人は、金髪のくっころ系女騎士・エリス。
もう一人は、小動物のように震える銀髪の治癒士・クロエ。
つい先ほど、森でオークの群れに襲われていた彼女たちを、俺が圧倒的な物理と魔法(カンストステータス)で無双して助け出したのだ。
中身が男の俺としては、「女の子がピンチなら助けるのが男の義務だろ」とばかりに、ついついイケメンムーブで庇ってしまったのだが――。
「えっと、二人ともどうしたの? 怪我の具合は大丈夫? 良ければ一緒に入る?」
俺は無自覚な人懐っこい笑顔(※絶世の美少女仕様)を浮かべて小首を傾げた。
「っ……!! あ、あんな恐ろしい魔物の群れを瞬殺した直後だというのに、なんという無防備で……神々しいお姿……っ!」
「ルナリアお姉さまの、月明かりに照らされたお肌……綺麗……。あ、あの、私たちに、背中を流させていただけないでしょうか……?」
二人の目が、完全に『恋する乙女』のそれになっていた。
しかも、二人は着ていた服をすでに脱ぎ捨てており、真っ白な素肌を晒しながら、ちゃぷんっ、と湖に入ってくるではないか。
「えっ、ちょ、待っ……!」
「ルナリア様……命を救っていただいたこのご恩、私のすべてを懸けてお返しさせてください……っ! さぁ、もっと近くへ……!」
「わ、私も……お姉さまに触れたいです……っ」
左右から、エリスとクロエの柔らかい肌が、俺の腕にぴたりと密着する。
いい匂いがする。
女騎士と美少女ヒーラーの肌色のお風呂。
男としては、まさに夢にまで見たハーレム展開。大歓喜、スタンディングオベーションものの状況である。
――だが。
(待て待て待て! 俺の心は男だけど、体は女なんだよ! しかも俺自身の体も感度良すぎて、女の子にすり寄られただけで変な声出そうになるんだけど!?)
「あっ……んっ……ちょ、エリス、そこはダメ……っ! クロエも、胸当たってるから……っ!」
「はふぅ……ルナリア様のお声、可愛いです……っ。私たち、もっとルナリア様を気持ちよくさせますね……?」
助けた美少女たちは、俺の「女としての魅力」と「男前な性格」のギャップに完全にメロメロになり、百合の波動に目覚めてしまっていた。
(頼む、誰か助けてくれ! 俺の理性が、色んな意味で保たない――ッ!!)
月明かりの下、最強の美少女アバター(中身は男)の、幸せで過酷な異世界百合ハーレム生活は、こうして幕を開けたのだった。

cbef7ff9 No.4382

「やめろエリス、ここは町の中心だ! 穏便に行こう!」
冷や汗を流しながら受付カウンターへ進むと、人の良さそうな猫人族の受付嬢が、目を白黒させながら声を絞り出した。
「あ、あの……! ぼ、冒険者登録ですね……? こちらの水晶に魔力を流してください……」
(よし、ここだな)
俺は差し出された魔力水晶にそっと手を触れた。
いくらゲームのカンストキャラとは言え、異世界で最初から「レベル999、全ステータスカンスト」なんて数値を出したら、間違いなく国家の魔導兵器として国家機密に指定されるか、魔王以上のバケモノ扱いされて討伐対象になってしまう。
(――ここは『隠蔽スキル』で、一般的な「ちょっと強いくらいの新人」程度に偽装っと)
俺は心の中でスキルを発動し、ステータスの数値をギルドの水晶が読み取る限界ギリギリまで削り落とした。

ブブッ、と水晶が鈍く光り、受付嬢の手元の紙にステータスが文字として浮かび上がる。
受付嬢はそれを覗き込み――、そして、息を呑んで固まった。
「……え?」
「なにかしら?」
受付嬢は、紙と、俺の顔を何度も交互に見比べた。
そして、ワナワナと震え出す。
「 き、筋力が『9500』……!? 魔力(MP)に至っては『計測不能(エラー表示)』……!?」
(っ! まじか! 隠蔽しきれてねぇ!?)
俺が内心で盛大に舌打ちした瞬間、ギルド内が再び静まり返った。
「なんだと? 新人の鑑定でエラーだと?」
「おいおい、冗談だろ。ガキの使いみたいな格好しやがって……」
周囲の冒険者たちが、面白半分、あるいは値踏みするような視線を向けてくる。
エリスとクロエが「ぐぬぬ」と威嚇のオーラを放ったその時――。
「ほう……騒がしいな。いったい何事だ?」

重厚な足音が響き、ギルドの奥から、ひとりの巨漢が姿を現した。
全身に歴戦の傷跡を刻んだ、隻眼の老ドワーフ。
圧倒的な威圧感を放つこの男こそ、冒険者ギルド『オルテナ支部』のマスター、ガルドその人だった。

cbef7ff9 No.4383

「……ロビーで騒ぎを起こすわけにもいかん。裏の部屋へ来い」
隻眼のギルドマスター・ガルドの低くしわがれた声に従い、俺たちはギルドの奥にある重厚な扉の向こう、ギルド長室へと通された。
エリスとクロエは不満げに眉をひそめていたが、俺が「すぐに戻るから、ここで待っててくれ」となだめ、どうにか二人をロビーに残して部屋へ入る。
広々とした室内の、年季の入った革張りの椅子にガルドがドカリと腰を下ろす。
「で、だ。小娘……いや、ルナリアだったか。お前のステータスについて詳しく聞かせてもらおうか」
ガルドが鋭い隻眼で俺を射抜く。
(やべえ、いかにも場数を踏んできた歴戦の猛者って目で見られてる……! 下手に暴れたら面倒なことになるぞ!)
コンコン、と控えめなノックの音がして、先ほどの猫人族の受付嬢ではなく、きちっとした制服に眼鏡をかけた人族の女性が部屋に入ってきた。
彼女はすらりとした長身で、知的な雰囲気を漂わせている。この支部で副ギルド長を務める女性のようだ。
「失礼します、ギルドマスター。……それと、お客様」
副ギルド長が両手で丁寧に持っていたのは、先ほどロビーで使われたものとは明らかに違う、純白の台座に嵌め込まれた一回り大きな水晶だった。
魔力の脈動がかすかに目視できるほどで、いかにも高級そうな、一級品の鑑定具である。
「ロビーの水晶は、量産型の古い型ゆえに魔力の波長を誤認してエラーを起こすことがあります。ですが、こちらの『真理の鏡石』ならば、いかなる個体のステータスであれ正確に測定できるはずです」
副ギルド長はふわりと上品な笑みを浮かべ、それを机の上に置いた。
(おいおい、マジかよ! あんなガチっぽい高級水晶を出されたら、さっきの適当な誤魔化しじゃ一発でバレるぞ!)
俺の背中に冷や汗がツーと伝う。
(頼む、頼むから働いてくれ俺の隠蔽スキル……! ここで「レベル999、全カンスト、種族:神話の魔王」とかバレたら、俺の穏やかな(?)異世界スローライフが初日で終わっちまうんだよ!)
心の中で必死に手を合わせ、全神経を集中させて内なるスキルを限界まで引き上げる。
――隠蔽、完璧に! 俺のステータスは「ちょっと魔力が多めの、平凡な新米エルフ」に見えろ……! 見せてくれ、俺の全力を注いだブラフを……ッ!!

俺は震える手で、その高級水晶にそっと指先を触れた。
……シーン、と室内の空気が静まり返る。
高級水晶が、眩しすぎず、かといって地味すぎない、柔らかな青白い光を優しく灯した。
そして、その表面にすらすらと文字が浮かび上がる。
ガルドが身を乗り出し、副ギルド長が眼鏡の位置を正しながらその文字を覗き込んだ。
そこに記されていたのは――。

名前:ルナリア
種族:ハイエルフ
職業:魔導士見習い / 踊り子
レベル:24
筋力:120
耐久:95
魔力:1,500
スキル:『初級生活魔法』『隠蔽Lv1』『回避上昇』

cbef7ff9 No.4384

(よしっ!! 完璧だっ!!)
俺は心の中で渾身のガッツポーズを決めた。
レベルはそこそこ、魔力は少し高いけれどエルフの種族特性の範疇、そしてスキルもしょぼい。
「ちょっと珍しい特技を持った、世間知らずの駆け出し冒険者」という設定に見事に化けている。
「ふむ……」
数値をじっと見つめていたガルドが、腕を組んで鼻を鳴らした。
「魔力が少し飛び抜けて高いが……まあ、魔力に特化したエルフなら珍しくもないか。ロビーのエラーは、やっぱり古い水晶の誤作動だったようだな」
副ギルド長も安堵したように息をつき、ふっと微笑んだ。
「ええ、失礼いたしましたルナリア様。これほどの美貌をお持ちですので、つい警戒してしまいました。魔力1,500であれば、優秀な新人魔導士として十分にやっていけますね」
「あはは……お騒がせしてすみません。わたし、ちょっと魔力が暴走しやすくて……」
俺は作り笑顔で頭をかいた。
心臓のバクバクがようやく収まり、心底ホッとしたその時――。
ガルドがふと悪戯っぽく口の端をニヤリと歪め、とんでもない言葉を口にした。
「ま、ステータスは普通だが、あの『月女神の踊り子服』を平然と着こなしている度胸と、外見の美しさは一級品だ。どうだ、ルナリア。さっそく我がギルドで、うちの精鋭たちと組んで初仕事に行ってみる気はないか?」
(は? 初仕事って、もういきなりパーティー組まされる流れなのこれ……!?)
俺の平穏な冒険者生活への道のりは、まだ始まったばかりだった――。



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