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/tachiha/ - たちは板κ

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26f93527 No.4082

05675320 No.4086

「クソッ、どいつもこいつも、しつこい!」
暗闇の中、俺――世界を股にかける怪盗クロウは、不格好な走りで警察署の廊下を駆け抜けていた。
手には、厳重なセキュリティを掻い潜って手に入れた極秘ファイルが握られている。
(計算外だ。まさか、あの新型センサーが起動しているとは!)
サイレンが鳴り響く。
怒号が飛び交う。
逃げ道を完全に塞がれた。
俺は絶体絶命の窮地に立たされていた。
(どこだ、どこか逃げ込める場所は……)
焦る俺の目に飛び込んできたのは、一つのドア。
『女子トイレ』
「……背に腹は代えられん!」
俺はためらうことなくドアを開け、中に飛び込んだ。

「キャッ!?」
女子トイレに入った瞬間、目の前に一人の婦人警官が立っていた。
彼女は驚きのあまり声を上げた。
「しまっ……!」
考えるより先に体が動いた。俺は彼女の背後に回り込み、首筋に手刀を打ち込む。
「うぐっ……」
彼女は力なく崩れ落ちた。
俺は彼女をキャッチし、個室へと運び込む。
「すまねえ。だが、こうするしかなかったんだ」
俺は彼女の体を見つめる。
端正な顔立ち、線の細い体躯。
この警察署に勤める、交通課の美人婦警だ。
(こいつに……変装するしかない)
俺が持っている『禁断の能力』――それは、接触した人物の姿形を完全にコピーできるというものだ。
ただし、そのためには相手の『全て』を奪う必要がある。
「……悪いな」
俺は躊躇なく彼女の制服に手をかけた。
ボタンを外し、ジッパーを下ろす。
一枚、また一枚と、彼女を包む衣服が剥がされていく。
現れたのは、白く透き通るような肌。
「……っ」
俺は、彼女が身に着けていた下着に手を伸ばした。
(人肌の……ぬくもり……)
まだ彼女の体温が残る、温かい下着。
それを手にした瞬間、俺の体に電流が走った。
(これが……女の温かさか……)
俺は、彼女の下着を、そして制服を、一つ一つ身に着けていく。
下着が俺の体に密着する。
人肌の温もりが、俺の皮膚を通して全身に広がっていく。
(心地いい……なんて……心地いいんだ……)
俺の体は、次第に熱を帯びていく。
骨がきしみ、筋肉が収縮し、皮膚が変化していく。
身長が縮み、胸が膨らみ、声が、顔が、完全に彼女のものへと変わっていく。
「……これが、私?」
俺は鏡を見つめた。
そこに映っていたのは、紛れもなく、さっきまで俺の前に立っていた美人婦警だった。
(完璧だ、声も、匂いも、全て彼女のものだ……)
俺は、彼女の制服を整え、スカートの裾を直す。
「これで、完璧な変装の出来上がりだ」
俺は不敵な笑みを浮かべ、トイレのドアを開けた。


「おい、お前!こんなところで何をしている!」
トイレから出た瞬間、男性警官に見つかった。
彼は、俺の姿を見て不審な表情を浮かべる。
「あ……えっと……」
俺は焦った。
まだ、この体に慣れていない。
声が、上手く出ない。
「……交通課の、佐藤です」
俺は、彼女の名札を思い出し、とっさに嘘をついた。
「佐藤?……ああ、そうか。お前、交通課だったな」
男性警官は、俺の制服を見て納得したように頷く。
「……で、ここで何を?」
「……えっと、その……」
俺は、言葉に詰まった。
「……忘れ物を、取りに……」
「忘れ物?……まあ、いい。今は、怪盗クロウが侵入しているんだ。お前も、注意しろよ」
男性警官は、そう言うと去っていった。
「……ふう」
俺は胸をなでおろした。
どうやら、バレずに済んだようだ。
(完璧な変装。これなら、この警察署から脱出できるかもしれない)
俺は、交通課の美人婦警として、警察署内を歩き始めた。
(それにしても、この制服……スカートが短い)
俺は、スカートの裾を気にした。
今まで、男として生きてきた俺にとって、スカートは未知の領域だ。
(それに、この人肌の温もり。まだ、下着に残っている……)
俺は、彼女の体温を、そして彼女の匂いを、全身で感じていた。
それは、怪盗としての俺にとって、初めての経験だった。
(この美人婦警。もしかして、私……)
俺は、鏡に映った自分の姿を見つめ、何かが目覚めるのを感じた。

a32da292 No.4091

(ふう。なんとか、しのげたか)
トイレの鏡に映る『佐藤』の顔は、冷や汗ひとつかいていない。
完璧なポーカーフェイスだ。
禁断の変身能力は、外見だけでなく、声帯や微細な癖までをも完全にコピーする。
だが、中身は怪盗クロウだ。
一刻も早くこの警察署から脱出せねばならない。
俺は盗み出した機密ファイルを、佐藤の制服の懐に深く隠した。
人肌の温もりが残る下着と、その上の制服が、俺の体を締め付ける。
この窮屈さが、逆に心地よい緊張感を与えてくれる。
「よし、行くか……」
佐藤の、少し高めで鈴を転がすような優しい声を真似て、俺は独り言をつぶやいた。
歩き方も、男のガサツなものではなく、歩幅を狭く、しとやかに。
廊下に出ると、まだ署内は騒然としていたが、婦警の姿(しかも交通課の制服)の俺に不審な視線を向ける者はいない。
(このまま裏口から……)
そう思った瞬間、背後から元気な声が掛かった。
「あ、佐藤先輩!探しましたよー!」
振り返ると、小柄でショートカットの、いかにも『元気印』といった風情の若い婦警が駆け寄ってきた。
(誰だ?こいつ)
俺の脳内データベースに、この婦警の情報はない。
だが、彼女は親しげに俺の腕を掴んできた。
「もう、トイレ長かったですよ。課長が、今日の巡回、佐藤先輩と私で行ってこいって」
「巡回?」
俺は内心で舌を打ちながらも、佐藤の優しい微笑みを浮かべた。
「ええ、そうね。ごめんなさい、ちょっと体調が優れなくて……」
「えっ、大丈夫ですか?顔色、悪くないですか?」
若い婦警が、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
(くそ、鋭いな。だが、ここで引くわけにはいかない)
「大丈夫よ、ちょっと座れば治るわ。それより、行きましょうか」
俺は、彼女の手を優しく握り返し、歩き出した。
「はい!あ、今日のパトカー、私が運転しますね!」
彼女は嬉しそうに鍵をジャラジャラと鳴らし、駐車場へと向かった。
パトカーに乗り込むと、彼女は手慣れた様子でエンジンをかけた。
「佐藤先輩、今日のコースは、駅前の方でしたよね?」
「ええ、そうね。駅前は、最近、違法駐輪が多いから、注意しないとね」
幸い、怪盗として街の地理や交通事情には詳しかったのが幸いした。
パトカーが走り出すと、彼女は嬉しそうに話し始めた。
「佐藤先輩、最近、彼氏とはどうなんですか?」
「えっ……彼氏?」
俺は一瞬、言葉を失った。
(佐藤には、彼氏がいるのか?)
これは、計算外だった。
「あ、えっと……その……」
俺は、どう答えるべきか迷った。
「……内緒よ」
俺は、佐藤の優しい口調で、悪戯っぽく微笑んだ。
「えー、冷たいなー。教えてくださいよー」
彼女は不満そうに唇を尖らせたが、それ以上は追及してこなかった。
(危なかった。まさか、恋バナを振られるとは)
俺は、冷や汗が背中を伝わるのを感じた。
「でも、佐藤先輩、最近、ますます綺麗になりましたよね」
彼女は、運転しながら、俺の方をチラリと見た。
「えっ?」
「何ていうか、雰囲気が、柔らかくなったっていうか……。以前は、もっと、キリッとしてた気がするんですけど」
(マズイ。性格の違いが、雰囲気に出ているのか?)
俺は、必死に佐藤の『優しさ』を演じようとした。
「そうかしら?自分では、よく分からないわ」
「ええ、本当ですよ。私も、佐藤先輩みたいに、優しくて綺麗な婦警になりたいなー」
彼女は、憧れの眼差しで俺を見つめた。
(怪盗に憧れる婦警か。皮肉なもんだな)
俺は、内心で苦笑しながらも、彼女の憧れに応えるように、優しく微笑んだ。
「ありがとう。あなたも、きっと素敵な婦警になれるわよ」
俺の声は、自分でも驚くほど、佐藤の優しい声に似ていた。
パトカーは、駅前に到着した。
「よし、じゃあ、巡回を始めましょうか」
俺は、パトカーから降り、彼女と共に歩き出した。
(さて、この『完璧な変装』、どこまで通用するか)
俺は、佐藤として、そして怪盗クロウとして、駅前の雑踏へと踏み出した。

a32da292 No.4092

(それにしても、驚くほどピッタリだな)
助手席で制服の裾を整えながら、俺は密かに胸元へ意識を集中させる。
佐藤の身体は、俺が盗み見た通りの美しいプロポーションをしていた。
下着のサイズは寸分の狂いもなく俺の身体――いや、今の『佐藤』の身体に完璧にフィットしている。
豊満なバストをしっかりと支えるブラジャーのワイヤーが、肌に微かな圧迫感を与える。
一方で、レースのあしらわれたショーツは、小ぶりで引き締まったお尻を優しく包み込んでいた。
借り物の下着だというのに、妙なしっくり感がある。
(人肌の温もりが残っていたからか? いや、それだけじゃない)
先ほどまでの「追われる怪盗」という極限の緊張感が、この身体のフィット感によって不意に解けていく。
包み込まれるような心地よさと、完璧に成り代われているという絶対的な安心感。
「佐藤先輩? どうかしました?」
ハンドルを握る若い婦警が、チラリとこちらを見て首をかしげた。
「ふふ、なんでもないわよ。ちょっと制服の位置を直していただけ」
俺は佐藤の柔らかい笑顔を浮かべ、しとやかに答える。
(この身体の感覚、悪くない)
下着越しに伝わる微かな体温とフィット感を噛み締めながら、俺は交通課の『佐藤』として、更なる潜伏の機会を伺っていた。

bf369bad No.4103

『ジジッ……こちら本部。怪盗クロウの目撃情報あり。各局、警備を強化せよ――』
ダッシュボードの無線機から、ノイズ混じりの荒々しい声が響き渡る。車内に漂う緊迫感とは裏腹に、俺の胸の奥には冷静な計算が走っていた。
「うわぁ、署内は大騒ぎですね……。怪盗クロウ、まさかこんな近くにいるわけないですよね?」
運転席の若い婦警が、少し怯えたようにハンドルを握り直す。
「ふふ、大丈夫よ。私たちがしっかり目を光らせていれば、怪盗だっておいそれと動けないわ」
俺は佐藤の柔らかい声で、彼女を安心させるように優しく語りかけた。
(ふん、まさかその怪盗が、お前の隣でしれっと助手席に座っているとも知らずに)
本物の佐藤は、まだ女子トイレの個室で眠っているはずだ。
発見されるのは時間の問題だが、無線を聞く限り、まだ手配は回っていない。
(佐藤の姿でいられるのも、そう長くはないか)
下着越しに伝わる佐藤の体温と、胸を支えるブラの適度な圧迫感が、妙に身体に馴染んできたところだった。
だが、潮時だ。
この完璧なフィット感に名残惜しさを感じつつも、俺は思考を切り替える。
「ねえ、長瀬ちゃん」
名札を横目で盗み見ながら、佐藤の親しげな口調で問いかける。
「はい? なんですか、佐藤先輩?」
「次の巡回ポイント、どこだっけ? 人通りの多いところ……そうね、例えば大きな商業施設とか、混雑するエリアに行きたいのだけれど」
「あ、それなら次は駅前のショッピングモール付近ですね! ちょうど人出も増える時間帯ですし」
「そう。じゃあ、そこへ向かいましょうか」
「了解です!」
元気に返事をしてアクセルを踏み込む彼女の横顔を見ながら、俺は次の獲物――いや、『次の身体』を探す算段を立てる。
(警察署を離れ、人の多い場所へ移動する。そこなら、警察の目を盗んで新しいターゲットを気絶させ、姿を奪うチャンスはいくらでもある)
「佐藤先輩? なんだか今日、すごく頼もしいです。いつもより落ち着いてて、なんだかカッコいいっていうか……」
「あら、そう? ふふ、後輩の前だもの、しっかりしないとね」
俺は優しく微笑みながら、心の中で不敵に呟いた。
(惜しいな、本物の佐藤。お前のこの身体、もう少し楽しんでいたかったが……次はどんな『着ぐるみ』に着替えるとしようか)

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パトカーを商業施設の駐車場に止め、俺たちは賑わう駅前モールへと足を踏み入れた。
休日ということもあり、家族連れやカップルでごった返している。
絶好の紛れ込み日和だ。
「よし、到着しましたね! 佐藤先輩、まずは1階の広場付近から見て回りますか?」
元気いっぱいに周囲を見渡す後輩婦警。
このまま一緒に行動されては、次の『着替え』どころではない。
俺は佐藤の柔らかい笑顔を浮かべ、少し困ったような、それでいて包容力のある口調で語りかけた。
「そうね……でも、今日は人がかなり多いわ。効率よく回るために、二手に分かれない?」
「えっ? 二手にですか? でも、巡回は基本二人一組って決められてますし……」
「大丈夫よ。怪盗の手掛かりを探すにも、別々の方が広範囲をカバーできるでしょう? 何かあったら、すぐ無線か携帯で連絡し合いましょう。ね?」
そう言って、俺は彼女の肩に優しく手を置いた。
佐藤のあの親しみやすい微笑みとトーンを完璧に再現する。
「う……佐藤先輩にそう言われると、拒否できないです。わかりました! じゃあ私、2階のヤングファッションフロアを中心に見てきますね!」
「ええ、気をつけてね。頼りにしているわ」
「はいっ! 佐藤先輩も無理しないでくださいね!」
素直な後輩は疑問も持たずに階段へと走っていった。
その背中を見送り、俺は密かに息を吐く。
(よし、これで一人だ)
胸を突っぱねるようなブラの感触と、制服の下で揺れるスカートの裾を気にしながら、俺は通行人の観察を始めた。
佐藤の身体も悪くはない。
豊満な胸と絶妙なフィッティングの下着の感触は実に心地いいが、いつまでも警察の制服を着ているのはリスクが高すぎる。
警察署で本物の佐藤が目を覚ませば、一発で指名手配だ。
(さて……次のターゲットは……)
人混みの中を目で走らせる。
「いたな」
俺の目に留まったのは、白のニットブラウスに淡いピンクの花柄フレアスカートを纏った、見るからに清楚で可愛らしい雰囲気の若い女性だった。
大きなショッピングバッグを持ち、少し困った顔で案内板を見上げている。
(あの清楚系か……悪くない。俺好みのスタイルだ)
俺は佐藤の優しい笑みを絶やさないまま、すっと彼女の元へ歩み寄った。
「こんにちは。何かお探しですか? 警察の者ですが、よろしければご案内しますよ」
「あ、警察官の方! すみません、実はこの館内のATMを探していて……」
安心したように胸を撫で下ろす彼女。
警察官(しかも美人婦警)という肩書は、これ以上ない信用を生む。
「ATMですね。それなら……少し分かりにくい場所にあるんです。よろしければ、私が近くまでご案内しましょうか?」
「本当ですか!? 助かります!」
「ふふ、いいのよ。こちらへどうぞ」
俺は彼女を安心させるように優しい声で誘導しながら、混雑する中央広場を避け、人の行き来が少ない奥の通路へと自然な足取りで連れて行く。
目指すは、防犯カメラの死角になりやすく、防音性も高い『多目的トイレ』だ。
(警察官の制服を着て、可愛い女の子を多目的トイレに連れ込む怪盗か。皮肉なシチュエーションだな)
下着越しに伝わる佐藤のぬくもりを全身で感じながら、俺は次の『完璧な着替え』に向けて、優しく、そして静かにターゲットを罠へと誘い込んでいった。

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「あら、大変。スカートの後ろに少し汚れがついているみたい。ちょっと確認しましょうか」
「えっ!? 本当ですか!?」
「ええ。ちょうどここに多目的トイレがあるから、中の大きな鏡で見るといいわ」
俺は佐藤の穏やかで心配そうな声を完璧に作り上げ、清楚な女子大生をまんまと多目的トイレへと誘導した。
彼女が慌てた様子で中に入った瞬間、俺は素早くドアを閉めて鍵をかける。
「えっと、どの辺りですか?」
背を向けた彼女の首筋に、俺は手刀を静かに、だが確実に振り下ろした。
「あ……」
短い吐息とともに、彼女の体が崩れ落ちる。
俺はそれをしっかりと抱き止め、冷たい床にそっと寝かせた。
「悪いな。少しの間、その姿を借りるぜ」
俺は彼女の華奢な頬に手を触れ、能力を解放する。
瞬間、全身を熱い奔流が駆け巡った。
(来る……)
骨格が軋み、筋肉と脂肪の付き方が劇的に変化していく。
まず気づいたのは、体の『軽さ』だった。
佐藤の体に宿っていた、あの豊満で重みのある肉感が急速に削ぎ落とされていく。
「……うおっ」
変化が収まり、俺は自分の体を見下ろして思わず声を漏らした。
さっきまではち切れんばかりに体を締め付けていた交通課の制服が、今はまるで借り物の大きなコートのようにダボダボになっているのだ。
「なるほど。佐藤の奴、服の上からじゃ分かりにくかったが、完全に『グラビアアイドル体型』だったってわけか」
俺は苦笑しながら、制服のボタンを外し、スカートを下ろした。
現れたのは、悲しいほどにサイズの合わなくなった下着姿だ。
佐藤の大きな胸をしっかりと支えていたブラジャーは、今やスカスカに浮いており、カップの中に拳が入ってしまいそうだ。
小ぶりながらも肉感的だったお尻を包み込んでいたショーツも、ウエスト周りが緩み、ずり落ちそうになっている。
俺はそのブカブカになった下着を脱ぎ捨て、洗面台の大きな鏡の前に立った。
そこに映っていたのは、さっきまでのグラマラスな婦警とは対照的な、息を呑むほどに洗練されたプロポーションだった。
無駄な肉が一切ない、引き締まったウエスト。スラリと伸びた手足。
胸は佐藤に比べれば控えめだが、それでも形良くツンと上を向いている。
(こいつは見事なスレンダー、いや、完全に『モデル体型』だな)
俺は自分の新しい腹筋や、細く長い脚のラインを撫でながら、その完璧な造形に感心した。同じ女の体でも、こうも違うものか。
「さてと、お着替えの時間だ」
俺は気絶している女子大生を素早く、かつ丁寧に脱がせにかかった。

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彼女が身につけていたのは、淡い水色に白いレースがあしらわれた、清楚で可憐な下着だった。
まずはショーツから足を通す。
スレンダーな腰回りを引き上げるように履くと、布地が吸い付くようにピタリと収まった。佐藤の時の肉感的な締め付けとは違う、軽やかで肌に馴染む心地よいフィット感だ。
続いてブラジャー。
背中でホックを留め、カップの中に控えめな胸を収めると、これまた寸分の狂いもなくジャストフィットした。
ワイヤーが肋骨に優しく添い、華奢な上半身を綺麗に整えてくれる。
「やっぱり、自分のサイズに合った下着ってのは落ち着くもんだな」
俺は鏡の前で軽くポーズをとり、ブラとショーツの感触を確かめる。
次はアウターだ。
白のニットブラウスに腕を通し、頭から被る。柔らかいニット素材が、スレンダーな肩のラインと、引き締まったウエストのくびれを美しく際立たせる。
佐藤の体ではきっと胸が強調されすぎて下品になっていただろうが、このモデル体型が着ると、清楚さと洗練された上品さが同居する見事な着こなしになる。
最後に、淡いピンクの花柄フレアスカートを穿く。
サイドのファスナーを上げると、細い腰にしっかりと固定された。
少し動くだけで、柔らかなシフォン素材の裾がフワリと揺れ、長く細い脚のラインをチラチラと見え隠れさせる。
「完璧だ……」
仕上げに彼女のローヒールのパンプスを履き、バッグを肩にかける。
鏡に映る俺は、どこからどう見ても、これからショッピングを楽しむ清楚な女子大生そのものだった。
「さて、婦警さんの服は、とりあえずこのバッグの中に隠しておくか。外には元気な後輩ちゃんがウロチョロしてるからな」
俺は佐藤の制服と、あの大きくて温かかった下着を素早く折りたたみ、女子大生のバッグの底に押し込んだ。
(これでよし。怪盗クロウの鮮やかな逃走劇、第2幕の開演といくか)
俺は可憐な微笑みを唇に貼り付け、多目的トイレのドアをゆっくりと開けた。

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トイレのドアを少しだけ開き、外に気配がないことを確認してから、俺は完全に外へ出る前にバッグの中身を改めることにした。
新しい身体のアイデンティティを完全に自分のものにしておくためだ。
バッグから財布を取り出し、カードケースを開く。
(名前は……橘 結衣。大学2年生か)
運転免許証や学生証に写っている顔は、紛れもなく今俺が纏っている顔そのものだった。
住所や学籍番号、定期券の区間までしっかりと頭に叩き込む。
声だけでなく、身分証の裏付けもあって初めて完璧な「変身」と言える。
財布をバッグに戻そうとしたその時、モールの吹き抜けの通路を、慌ただしく駆け抜けていく人影が目に入った。
(ん……?)
あれは、さっきまで一緒にパトカーに乗っていた、あの元気な後輩婦警だ。
トランシーバーを片手に、血相を変えて周囲を見回しながら走っている。
(おいおい、あんなに急いで……。もしかして、もう本物の佐藤が目覚めたのか?)
佐藤の服が消え、女子トイレの個室で気絶している本人が発見されたのだろう。
後輩ちゃんは今頃、「佐藤先輩が消えた」「偽物に入れ替わられたかもしれない」と気づき、必死に追跡しているに違いなかった。
(俺と一緒に巡回していたはずの佐藤が偽物だったと気づいたなら、このエリア全体の警戒が厳しくなるな……)
そして、ふと考える。
もし後輩ちゃんが「佐藤と一緒にいたはずの怪盗が、周囲に紛れ込んでいる」と踏んでいるなら、同じエリアにいる他の人間にも目を光らせているかもしれない。
今、この清楚な女子大生の姿をしている俺も、いつ怪しまれるか分からない。
(この清楚な女子大生の体も、長くはこのままいられないかもしれないな……)
だが、ここで慌てて逃げ出すのは悪手だ。かえって怪しまれる。
俺はタネも仕掛けもない無邪気な女子大生のフリを装い、フワリとスカートの裾を揺らしながら、何食わぬ顔で反対側の通路へと歩き出した。
(とりあえず、この姿のまま駅に向かおう。改札を抜けてしまえば、こっちのものだ)
緊張感と、微かなスリルを心地よく感じながら、俺は人混みの中に溶け込んでいくのだった。

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スマホの画面を親指でスクロールさせ、流行りの音楽配信アプリのジャケットを適当になぞりながら、俺――いや、橘結衣として歩を進める。
(画面の明るさは半分、視線はやや斜め下。スマホに夢中な女子大生なら、周囲の物音や緊迫した空気には気づかないはずだ。完璧だな)
すれ違う通行人に怪しまれないよう、歩幅や姿勢まで完全に女子大生になりきる。
このスレンダーなモデル体型の身体は、少し歩くだけでシフォン素材のスカートが軽やかに揺れ、まるで日常のひとコマそのものを演出してくれているようだ。
(それにしても、さっきの後輩ちゃんの慌てぶりは面白かったな。俺が消えたあと、本物の佐藤が目を覚まして大パニックってところか。あの真面目な顔が青ざめる瞬間を想像するだけで、ゾクゾクするぜ)
背筋をぞくぞくさせるようなスリルと、それを涼しい顔で切り抜けているという強烈な優越感が、心地よいアドレナリンとなって全身を駆け巡る。
追う者と追われる者のゲームは、まだ始まったばかりだ。
やがて、目的地である駅のロータリーが見えてきた。
(おっと)
足を一歩踏み入れた瞬間、視界の端で反射的に状況を分析する。
駅のコンコースや改札の周辺には、ピリついた空気をまとった制服警官や捜査員たちが大勢配置されていた。
おそらく、駅構内を封鎖して徹底的な検問を行っているのだろう。
(見事に網を張られたもんだ。あんなに大勢で待ち構えられたら、普通の人間なら足がすくむか、顔が引きつるに違いない)
心臓が高鳴る。
だが、それは恐怖や焦りによるものではない。
極限の状況下で、敵の網の目をすり抜けていく快感――これぞ怪盗クロウの醍醐味だった。
(顔に出すな。今の私は、ただ今日を楽しみにしていた大学生だ。彼らにとって、私はただの「すれ違う一般人」にすぎない)
俺はわざとため息をつき、スマホのチャット画面を適当にフリックしながら、わざとらしく少し気だるげな表情を作った。
警察官たちの視線が横切るが、誰一人として足を止める者はいない。
この清楚な花柄スカートと、無防備な女子大生のオーラが最高のカモフラージュになっている。
ピッ、とスマートにICカードをタッチし、何食わぬ顔で改札口を通過する。
(よし、まずは第一関門突破だ)
ホームに降り立つと、ちょうどタイミングよく、数分後に発車するローカル線が滑り込んできた。
自動ドアが開き、涼しい冷気がホームへと流れ込んでくる。
俺は車内に足を踏み入れ、入り口付近の吊り革に手を伸ばした。
車内は比較的空いており、乗客たちはそれぞれの世界に没頭している。
電車の扉が閉まり、ゴトゴトと重い音を立てて車体が動き出す。
窓の外で、駅のプラットホームや警戒にあたる警察官たちの姿が徐々に遠ざかっていくのを見送りながら、俺はふうっと小さく息を吐いた。
(警察署から始まった今日のドタバタも、これで一段落ってところか)
電車の揺れに合わせて、シフォン素材のスカートがふわりと揺れる。
足元を包むパンプスの感触、そしてスレンダーな体を優しく支える下着のフィット感を改めて意識しながら、これからの身の振りを頭の中で組み立てた。
(佐藤の制服と下着はバッグの中にしっかり隠してある。この橘結衣の身体は、当面の間は安全な隠れ蓑になるが……いつまでもこのままでいるわけにはいかない。どこかのタイミングで、また別の安全な場所に移って、別の姿に乗り換える必要があるな)
窓ガラスに映る自分の顔を見る。整った目鼻立ちをした、可憐な女子大生の顔。
(さて、この可愛い顔と身体で、次はどこへ繰り出そうか。極秘ファイルも手に入ったことだし、一度ゆっくりと中身を吟味させてもらうとしよう――次の獲物が見つかるまでは、この『お嬢さん』の人生を存分に楽しんでやるさ)
電車はガタンゴトンと心地よいリズムを刻みながら、次の街へとスピードを上げていくのだった。

b84abdd1 No.4248

ガタン、ゴトン。
数駅を過ぎるうちに、ローカル線は帰宅ラッシュの波に飲み込まれ、いつの間にか満員電車に近い状態になっていた。
押し寄せる乗客の圧で、吊り革につかまる俺の体も周囲の人間に挟まれるように固定されていく。
(ん?)
背後から、不自然な気配を感じた。
怪盗としての鋭い感覚が、背後に陣取った男の異質さを告げている。
電車の揺れに合わせて、男の体がわざとらしく俺の背中や腰に密着してくる。
荒い息遣いと、整髪料の混じったような嫌な匂いが鼻を突いた。
(なるほど、痴漢ってやつか)
普通の女子大生なら恐怖で声も出ない場面だろう。
だが、中身は百戦錬磨の怪盗だ。
恐怖など微塵もない。むしろ、俺の脳裏にはある好奇心が頭をもたげていた。
(この橘結衣のスレンダーな体、一体どこまで『感じる』んだろうな? 試しにこのまま触らせてみて、女の体の感度ってやつを確かめてみるのも……一興かもしれないな)
密着してくる男の体温を感じながら、俺はあえて身をよじらせず、静かに状況を楽しもうとした。
借り物の体で味わう未知の感覚への、純粋な興味だ。
だが――数秒後、俺の頭に冷や水がぶっかけられたように、冷徹な思考が戻ってきた。
(いや、待て。ここで変に事態を静観して、もし周りの乗客が気づいたらどうなる?)
最近はSNSの普及もあり、正義感に燃える『お節介な男』がどこに潜んでいるか分からない。「おいアンタ、何してんだ!」「お嬢さん、大丈夫ですか!」などと急に腕を掴まれでもしたら、一気に騒ぎが大きくなる。
(駅員に通報され、最悪の場合はそのまま警察沙汰だ。警察が駆けつければ、事情聴取は免れない。……冗談じゃない。俺のバッグの中には、さっき盗み出したばかりの警察の極秘ファイルと、佐藤の制服が入ってるんだぞ)
もし持ち物検査なんてことになれば、一発でジ・エンドだ。
おまけに駅周辺にはまだ俺を探している警官が山ほどいる。
(却下だ。好奇心で首を絞めるほど、俺は素人じゃない)
スリルは楽しむが、無用なリスクは徹底的に排除する。
それが怪盗クロウの流儀だ。
俺は冷たい目で背後の男を一度だけ見やると、わざと大きく体勢を崩すフリをして男から離れた。
「すみません、降ります」
か細い、少し怯えたような女子大生の声色を作り、人混みを縫うようにして隣の車両へと移動を開始する。
怪盗の身のこなしをもってすれば、満員電車の人波をすり抜けるなど造作もないことだ。
連結部分のドアを抜け、隣の車両へ足を踏み入れる。
窓に貼られたピンク色のステッカーが目に入った。
『女性専用車両』
(ここは安全牌(あんぱい)を切るに限るな)
車両に入った瞬間、空気がガラリと変わった。
むさ苦しいスーツの男たちの匂いは消え、代わりにシャンプーや柔軟剤、ほのかな香水の香りが漂っている。
周囲を見渡せば、乗客は当然ながら女性ばかりだ。
俺は車両の隅に陣取り、乱れたニットブラウスの襟元と、フレアスカートの裾を軽く整えた。
(見渡す限り、女、女、女……。まさかこの平和な花園に、警察から追われている男の怪盗が紛れ込んでいるとは、誰も夢にも思わないだろうな)
絶対的な安全圏に身を置き、俺は心の中で皮肉な笑いを漏らす。
痴漢のピンチすらも冷静な計算で回避し、この可憐な女子大生の姿を完璧に利用しきっている自分に、たまらない快感と優越感を覚えていた。
(次の駅で降りて、身を隠せるホテルでも探すか。それとも、この可愛い姿のまま、少し夜の街を歩いてみるのも悪くない……)
電車の窓ガラスに映る結衣の顔は、誰もが騙されるような、あどけなく清楚な微笑みを浮かべていた。

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隣の車両との連結部の窓を振り返ると、ガラス越しに地獄のような光景が見えた。
サラリーマンや学生たちが息苦しそうに肩を寄せ合い、顔を顰めながらすし詰め状態になっている。
一方、俺が足を踏み入れた『女性専用車両』は、まるで別世界だった。
(なんだ、この天国と地獄の差は……)
もちろん立っている乗客もいるが、ギュウギュウ詰めには程遠い。
それどころか、見渡せばポツポツとシートに空席すらあるではないか。
車両全体に漂うのは、汗と整髪料の入り混じったむさ苦しい匂いではなく、シャンプーやフローラル系の香水、そして化粧品の甘い香りだ。
男という『外敵』が完全に排除された空間特有の、どこか気が緩んだような、無防備で穏やかな空気が満ちている。
(男の視点から見りゃ、ここは絶対に入れない秘密の花園ってやつだ。そこに、警察から追われている男の怪盗が、こんな可愛いツラして堂々と紛れ込んでるんだからな。傑作だぜ)
俺は内心でほくそ笑みながら、空いていたシートの一つに腰を下ろした。
隣に座っているのは、少し疲れた顔でスマホを眺めている、タイトスカートを穿いた若いOLだ。
俺が座ったことで、お互いの肩や太ももが触れ合いそうなほど近い距離になる。
もし俺が本来の男の姿であったなら、間違いなく嫌な顔をされて距離を置かれるか、警戒してバッグを胸の前に抱え込まれるような距離感だ。
しかし、隣のOLはチラリとこちらを一瞥しただけで、微塵も嫌がる素振りを見せなかった。
それどころか、俺の清楚で華奢な女子大生の風貌を見て無意識に安心したのか、再びスマホの画面へと視線を戻し、わずかに体の力を抜いて俺側に少しだけ体重を預けるような姿勢にすらなった。
(なるほどな。これが『同性』に対する安心感ってやつか)
男であれば絶対に許されないパーソナルスペースへの侵入が、今の俺にはいとも簡単に、そして無条件に許されている。
この橘結衣という可憐で無害な容姿が、周囲の女たちの警戒心を完全にゼロにしているのだ。
(この体、本当に便利すぎる。男の目は惹きつけるくせに、女のテリトリーには顔パスで入り放題ときたもんだ)
柔らかなシートの感触と、隣のOLから伝わる微かな温もり、そしてスレンダーな体を包み込む自分の下着の心地よいフィット感。
俺は目を細め、深く息を吐いた。
先ほどの痴漢騒ぎの緊張感もすっかり消え去り、女性専用車両という絶対的な安全圏が、逃亡中の身である俺にこの上ない安らぎを与えてくれる。
(さて、この特等席で少し休ませてもらうとするか。この『女子大生の日常』、最高に悪くないぜ)

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4dfb171e No.4266

電車に揺られること数十分。
心地よい疲労感と、女性専用車両特有の甘い匂いに包まれて微睡みかけていた頃、車内アナウンスが目的地の駅を告げた。
降車客の波に混じり、隣のOLと一緒にホームへ降り立つ。
改札を抜けると、駅前は夕暮れ時に差し掛かり、帰路を急ぐ人々で賑わっていた。
(よし、ここならあの騒ぎの中心地から十分に離れている。警察の網もここまで広がっちゃいないだろう)
駅舎から出ると、少しひんやりとした夕風が吹き抜けた。
シフォン素材のフレアスカートがひらひらと揺れる。
露出した素足のふくらはぎを撫でる風の感覚が、なんとも言えず心許ないが、同時に妙な解放感があった。
歩くたびに、すれ違う男たちの視線がチラチラと俺の――いや、橘結衣の顔や脚に向けられるのを感じる。
(ふっ、見ている見ている。中身が警察から逃げおおせた天下の大泥棒とも知らずに、どいつもこいつもだらしなく鼻の下を伸ばしやがって)
男たちの欲望を含んだ視線を一方的に浴びるという経験。
それは、男として生きてきた俺にとってはなれない感覚だったが、この完璧な美貌とスタイルという武器を試されているようで、まったく悪い気はしなかった。
むしろ、全員を完全に騙し切っているという圧倒的な優越感が、背筋をゾクゾクさせる。
(さて、まずは安全な隠れ家の確保だな)
俺は駅前の喧騒から少し離れた路地裏に入り、目に付いた自動精算式のビジネスホテルへ向かった。
対面受付のないこういったホテルは身分証の提示も不要で、俺のようなワケありの人間にはうってつけだ。
タッチパネルで適当な偽名を入力し、出てきたカードキーを抜き取る。
誰にも怪しまれることなく、一人の女子大生としてエレベーターに乗り込む。
部屋のドアを開けて中に入り、オートロックがカチャリと閉まる音を聞いて――俺はようやく、全身の力を抜いた。
「ふぅっ、長かったぜ」
女子大生の可憐な声帯から、わざとらしく男っぽい、ぶっきらぼうなため息を吐き出す。
このアンバランスさがまた面白い。俺はバッグをベッドに放り投げ、少し窮屈だったパンプスを脱ぎ捨てた。
「さてと、本日のメインイベントといくか」
俺はバッグを開け、底の方にギュウギュウに押し込んでいた佐藤の制服と下着を掻き分けた。そして、一番奥に隠していた黒いファイルを取り出す。
警察の厳重なセキュリティの奥底に眠っていた『極秘』の文字が印字されたファイル。
これを手に入れるために、婦警になりすまし、女子大生を気絶させ、ずいぶんと綱渡りを楽しませてもらった。
「苦労した分、しっかり報いさせてもらうぜ」
ベッドに腰掛け、ファイルをめくる。
静かな部屋の中、紙をめくる音だけが響く。
華奢で白魚のような美しい指が、国家の機密を次々と撫でていく。
(なるほど、そういうことか。警察の上層部も、裏ではずいぶんと汚いマネをしてるじゃねえか)
ファイルの中身を流し読みしながら、俺は口角を上げた。
この情報なら、裏社会のブローカーに持ち込めば相当な額で取引できる。
いや、いっそ警察組織を直接脅す材料にしても面白いかもしれない。
(これで今回のミッションはコンプリートだ。あとはほとぼりが冷めるまで、この姿で「普通の女子大生」のバカンスを楽しませてもらうとしよう)
ファイルを閉じ、ふと部屋の全身鏡に目をやる。
そこには、少し乱れたニットブラウスに、ベッドに腰掛ける清楚なスレンダー美人の姿があった。
「大仕事の後は、シャワーでも浴びてさっぱりしたいところだな」
自分の細く滑らかな太ももを撫でながら、俺は鏡の中の自分に向かってニヤリと妖艶に笑いかけた。
このモデル体型、服の上からでも十分に楽しめたが、まだ隅々まで確認したわけじゃない。
(せっかく手に入れた新しい『着ぐるみ』だ。この体の隅々まで、どんな風に感じて、どんな声を出すのか……俺自身の手で、じっくりと堪能させてもらうとしようか)
極秘ファイルという最高のお宝を手に入れた高揚感と、新しい体への探求心が、怪盗の心を甘く、そして淫らに刺激していた。

88991723 No.4274

極秘ファイルをサイドテーブルに置き、俺はゆっくりと立ち上がって部屋の全身鏡の前に立った。
「さて、せっかくの極上な体だ。じっくりと堪能させてもらうとするか」
誰の目もない密室。
俺は橘結衣の可憐な声で妖しく呟きながら、白のニットブラウスの裾に手をかけた。
ゆっくりと上へ引き抜き、頭から脱ぎ捨てる。続いて、フレアスカートのサイドファスナーを下ろし、足元へと落とした。
鏡の中に現れたのは、淡い水色と白のレースがあしらわれたブラジャーとショーツに身を包んだ、息を呑むほど美しいスレンダーな肢体だった。
無駄な肉のない引き締まったウエストから、なだらかな曲線を描いて下へと伸びる腰のライン。
俺は自分自身の姿に見惚れながら、ゆっくりと両手を胸元へと伸ばした。
佐藤の時のように、両手からこぼれ落ちるような圧倒的な質量はない。
だが、手のひらにすっぽりと収まるその控えめなふくらみは、信じられないほど形が良く、上を向いていた。
ブラのレース越しに、指先でそっと柔らかな膨らみをなぞってみる。
――その瞬間だった。
「っぁ、あっ」
自分の口から漏れた、甘くかすれた声に俺自身が一番驚愕した。
(な、なんだこの感度は!?)
佐藤の体もそれなりに敏感だったが、この女子大生の体は桁違いだった。
指先が少し触れただけで、背筋を電流が駆け抜けるような鋭い快感が全身を突き抜ける。
胸の先端が、下着の裏地で擦れるたびに、頭の中が真っ白になりそうなほどの甘い痺れが押し寄せてきた。
「はぁっ、はぁっ、すげえ、ちょっと触っただけで、こんなにっ」
俺は荒い息を吐きながら、今度はもう片方の手を、くびれたウエストからお尻のラインへと滑らせた。
ショーツに包まれた小ぶりなヒップ。
手のひらでそっと包み込むと、マシュマロのように柔らかく、それでいて吸い付くような極上の滑らかさだった。
指先でその柔らかなカーブを揉みほぐすように撫でるだけで、下腹部の奥の方から、じわじわと熱いものが込み上げてくるのがわかる。
「んんっ……ああっ……これ、たまんねえな♪」
胸を撫でる手と、お尻を愛撫する手。
自分の手で自分を触っているだけだというのに、怪盗としての冷静な思考が、女の体が放つ強烈な快感と熱情にドロドロに溶かされていく。
(この体……外見は清楚なお嬢様なのに、中身はとんでもなく淫らじゃねえか……)
鏡の中の結衣は、顔を紅潮させ、潤んだ瞳でこちらを見つめ返している。
その無防備で欲情した表情が、俺の中のサディスティックな支配欲と、女としての被虐的な快感を同時に刺激した。
俺はたまらずベッドに崩れ込むように腰を下ろし、シーツの上に身を投げ出した。
「ふふっ、いいぜ、結衣ちゃん。今日は朝までたっぷり、お前の体の隅々まで『俺』が可愛がってやるよ」
誰にも邪魔されないホテルの密室で、俺は女子大生の柔らかな肌の感触と、次々と押し寄せる未知の快感に溺れながら、甘く淫らな夜の底へと堕ちていった――。

88991723 No.4275

ベッドの柔らかいシーツに、スレンダーな背中を深く沈み込ませる。
天井のぼんやりとした明かりを見つめながら、俺は熱を帯びた息を大きく吐き出した。
「はぁっ……んっ……」
口から無意識に漏れた吐息が、すでに甘ったるい響きを帯びている。
(おいおい、まだ本格的に触ってもいないのに……どんだけ感じやすい体なんだよ、結衣ちゃんは)
俺は、左手を淡い水色のブラジャーの縁へと滑り込ませた。
薄いレースを押し除け、直接、手のひらにすっぽり収まる膨らみを鷲掴みにする。
「あ、あっ……んんっ!」
指先で、すでに硬く尖り始めている乳首をそっと摘まみ、コリコリと転がすように刺激してみた。
「ひゃあっ!?……く、これ……やばい……っ」
左手から伝わる快感が、背髄を突き抜けて脳天を直接揺さぶってくる。
ただ胸の先を弄っているだけだというのに、下腹部の奥がきゅんきゅんと激しく疼き、熱いものが滲み出してくるのがはっきりと分かった。
(くそっ、男の時の快感とは、まるで別物だ。頭が、真っ白に溶けそうだ)
俺はたまらず、右手をショーツのクロッチ部分――股間へと這わせた。
「んぁっ……あ、はぁっ……」
薄い布越しに触れただけで分かる。
すでに彼女の――いや、今の『俺』のそこは、自分の放つ熱と快感でたっぷりと蜜を吐き出し、ぐっしょりと濡れそぼっていた。
「ふふっ……清楚な顔して、こんなに濡らして、ほんと、エロい体だな」
怪盗としての、男としての優越感を保とうと、わざと意地悪な口調で呟いてみる。
だが、俺の口から紡がれる声はどうしようもなく甘く、快感に震えていた。
俺は右手の指先で、ショーツ越しに一番敏感な場所を探り当て、ゆっくりと擦り上げた。
「あっ! あぁっ! い、いいっ……それ、すごい……っ!」
ビクンッ、と華奢な体が大きく跳ねる。
「あ、んっ! はあっ、はあっ……だめ、これ、気持ちよすぎ……っ!」
左手で乳首を小刻みに弾き、引っ張りながら、右手で股間を執拗に責め立てる。
上下から同時に押し寄せる波のような快感に、俺の理性の防波堤はあっさりと決壊しかかっていた。
「もっと……っ、もっとぉっ……ああっ!」
自分の体なのに、自分じゃコントロールが効かない。
ただひたすらに、もっと強い刺激を求めて両手が勝手に動きを早めてしまう。
可憐な女子大生の可愛い喘ぎ声が、ホテルの密室に淫らに響き渡る。
「んっ、あ、あぁぁっ!……すげえ、女のオナニーって、こんなに……こんなに気持ちいいのかよ……っ!」
快感の波が、どんどん高く、激しくなっていくのが分かる。
腹の底から突き上げるような熱いしびれが、限界点に向かって急速に膨れ上がっていく。
「ああっ、くるっ、い、いくっ……!」
(このままじゃ、俺……この結衣の体で、完全にイッちまう!)
「あ、あっ、あぁぁぁーーっ!」
抗うことなどできるはずもなく、俺はシーツを強く握りしめながら、ひときわ甘く高い嬌声を上げて、大きく身をよじらせた。

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一度目の絶頂の余韻が冷めやらないまま、俺は荒い息を吐きながらベッドに横たわっていた。
「はぁっ……はぁっ……嘘だろ……」
一度イッたはずなのに、体の奥底にある熱は全く収まる気配がない。
それどころか、まだ足りないとばかりにもっと強い刺激を求めて疼き続けている。
女の体の底知れなさに、俺は戦慄すら覚えた。
俺はショーツをずらし、直接その奥へと指を滑り込ませた。
「んっ……あ、あっ……」
そして、探り当てるように指先を進め……体の奥深くにある、ひときわ敏感な場所を、ぐっと押し上げるように刺激した。
「ひゃあっ!!? あ、あ、あああっ!」
先ほどとは比べ物にならない、脳天を直接ぶち抜かれるような強烈な快感が全身を跳ねさせた。
「あ、い、いいっ! そこ、すごいっ!」
最初は漏れるような可愛らしい喘ぎ声だった。
だが、指を動かすたびに押し寄せる快感の濁流に、もはや声を抑えることなどできない。
「あっ、あぁっ! も、もっとっ! あぁぁぁっ!」
自分でも信じられないほど大きな、そして淫らな嬌声が部屋に響き渡る。
ホテルで良かった、壁が薄ければ完全に外に筒抜けだっただろう。
だが、今の俺にそんなことを気にする余裕など微塵も残されていなかった。
「だめっ、また、くるっ! あ、ああっ、あぁぁぁぁーーっ!!」
弓なりに体を反らせ、俺は二度目の、そして先ほどよりも遥かに強烈な絶頂を迎え、シーツの上に力なく崩れ落ちた。



「ふぅ……」
熱いシャワーを頭から浴びながら、俺は大きく息を吐き出した。
浴室の鏡に映る結衣の体はまだほんのりと上気しているが、先ほどまでの異常なまでの発情は、シャワーの湯と共にすっかり流れ落ちていた。
「危ないところだった。女の体の快感に、本気で呑み込まれるところだったぜ」
怪盗クロウとしての冷徹な思考が、ようやく頭の中に戻ってくる。
ボディソープで華奢な体を洗いながら、俺は今後の算段を立て始めた。
(極秘ファイルは手に入れた。だが、警察は今頃、血眼になって俺を……いや、姿を消した『佐藤』を探しているはずだ)
そして、この橘結衣という体についても考えなければならない。
(この子には家族もいれば、大学の友人もいるだろう。無断外泊でもしようものなら、すぐに捜索願が出されるかもしれない。それに、駅の防犯カメラにこの姿がバッチリ映っている可能性も高い)
今は安全な隠れ蓑だが、時間が経てば経つほど、この女子大生の姿は目立ちすぎるリスクに変わる。いくらモデル体型で着心地が良くても、いつまでも長居はできない。
「惜しいけどな。この結衣の体でいられるのも、ここらが限界だろう」
俺はシャワーを止め、バスタオルで濡れた髪と体を素早く拭き上げた。
(夜が明けたら、ここを出る。そして、誰にも怪しまれない『次の隠れ蓑』を探さなきゃな……)
まだほんのりと女の快感の記憶が残る体をバスタオルで包みながら、鏡に映る怪盗の瞳には再び、獲物を狙う鋭い光が宿っていた。

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ホテルの備え付けのガウンを羽織り、ベッドの端に腰掛ける。
(さて、どう動くか……)
俺が持つ『禁断の能力』は、一度別の姿に変身してしまうと、前の姿をストックしておくことはできない。
つまり、結衣の姿を捨てて別の姿になるためには、必ず「新しいターゲット」に直接触れ、その場で姿を奪う必要があるのだ。
(とはいえ、この結衣の姿でホテルの外に出るのはリスクが高すぎる。警察の検問がまだ続いているかもしれないし、万が一、結衣の知り合いにでも遭遇したら目も当てられない。動くとしたら、人目の少ない深夜か?)
だが、深夜に出歩く若い女というのも、それはそれでパトロール中の警官から職務質問を受ける格好の的だ。
八方塞がりの状況に、俺は苛立たしく舌打ちをした。
コン、コン。
唐突に、部屋のドアがノックされた。
ビクッとして、俺の体が強張る。
(警察か!? いや、それにしてはノックの音が控えめすぎる)
息を殺し、足音を忍ばせてドアへと近づく。
ゆっくりとドアスコープから外を覗き込んだ。
そこに立っていたのは、制服姿の警官ではなかった。
20代後半くらいだろうか。少しラフな部屋着姿で、髪を軽くまとめた女性だった。
手ぶらで、警察官やホテルの従業員にはとても見えない。
おそらく、隣か向かいの部屋の宿泊客だろう。
(一般客? いったい何の用だ?)
少し迷ったが、居留守を使って騒ぎにされても困る。
俺はチェーンをかけたまま、ガチャリと少しだけドアを開けた。
「……はい? なんでしょうか?」
結衣の可憐な声で、少し不安げに問いかける。
ドアの隙間からこちらを見た女性は、少し気まずそうな、それでいて呆れたような表情を浮かべていた。
「あ、あの……突然ごめんなさい。私、隣の部屋に泊まっている者なんですけど」
「隣の……? は、はい」
「あのね、ちょっと言いにくいんだけど……さっき、その、すっごい声が聞こえてきて……」
「えっ……?」
女性の言葉に、俺は思考が数秒フリーズした。
「壁が薄いのか分からないけど、まる聞こえだったのよ。だから……これからの時間、少し気をつけてくれませんか? こっちもちょっと、休まらなくて……」
(――――っ!!)
顔から火が出るかと思った。
さっきの、限界突破して声を張り上げてしまったオナニーの喘ぎ声が、隣の部屋に筒抜けだったのだ。
「あ、あわわっ! す、すみません! ごめんなさい!!」
俺は真っ赤になった顔を手で覆い、女子大生としての恥じらいを全開にして平謝りした。
演技半分、マジの羞恥心半分だ。

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「えっと、その、彼氏と、電話で……その、変なことになって……ほんとに、ほんとにごめんなさい! もう絶対に静かにしますから!」
しどろもどろに言い訳をする結衣(俺)の姿を見て、女性も少し毒気を抜かれたようだった。
「あー……うん、まあ、若いから色々とあるんでしょうけど。一人で泊まってるのよね? ほどほどにしときなさいよ」
「は、はい……申し訳ありません……」
女性がため息をつき、自室へ戻ろうと踵を返しかけた、その瞬間。
俺の脳内に、悪魔的な閃きが走った。
(待てよ? こいつ、隣の部屋の客。年齢は20代後半、身なりもごく普通の一般人だ)
深夜に危険を冒して外へ出なくても、ここに「完璧な次の隠れ蓑」がいるじゃないか。
(この女の姿を奪えば、結衣の姿(リスク)をこの部屋に置き去りにできる。しかも隣の部屋の鍵さえ奪えば、朝までゆっくり休めるし、明日の朝、何食わぬ顔でチェックアウトできる!)
クレームを言いに来た隣人を罠にかけるなど、怪盗の美学からは少し外れるかもしれないが、背に腹は代えられない。
「あ、あのっ! お姉さん!」
俺はドアの隙間から、立ち去ろうとする女性に慌てて声をかけた。
「ん? なに?」
「あの、本当にご迷惑をおかけしたので……お詫びと言ってはなんですが、これ、もらっていただけませんか?」
俺はドアのチェーンを外し、ガウンの胸元を少しはだけさせたまま、女性に向かって一歩、廊下へと足を踏み出した。
(さあ、もう少しだ。あと一歩近づいてくれれば、俺の手が届く――)
可憐で無害な女子大生の仮面の下で、俺は獲物を狙う蜘蛛のように、甘い罠を張り巡らせていた。

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「これ……実家から送られてきた地元の銘菓なんですけど、すごく美味しいんですよ。もしよかったら、お詫びに……」
俺は架空の『地元の銘菓』を渡すフリをして、手元をモゾモゾと探る素振りを見せた。
「え、いいのよ、そんなの。別に怒ってるわけじゃ……」
「いえ、本当に恥ずかしくて、申し訳なくて……あっ、あれ? バッグの中に入れたはずなのに」
俺はわざと困ったように眉を下げ、ウルウルとした上目遣いで女性を見つめる。
「もしかしたら、ベッドのほうに置きっぱなしにしちゃったかも。お姉さん、ほんの少しだけ待っててもらえませんか? すぐ持ってくるので!」
「えっ? あ、うん……」
「あ、でも廊下で立たせておくのも申し訳ないから……よかったら、お姉さんの部屋で待っててもいいですか? すぐ戻ってくるので!」
「え? 私の部屋で?」
「はい! 私、恥ずかしすぎて、これ以上廊下にいると死んじゃいそうで……お願いします!」
少し強引ではあったが、泣きそうな女子大生の勢いに押され、女性は戸惑いながらも自分の部屋のドアを開けた。
「ま、まあ……いいけど。散らかってるからね」
「ありがとうございます!」
女性が先に部屋に入った瞬間――俺は背後から音もなく忍び寄り、その首筋に手刀を振り下ろした。
「え……?」
女性はくぐもった声を漏らし、そのまま糸が切れたように崩れ落ちた。
俺は咄嗟に体を支え、音を立てないようにベッドへと寝かせる。
「悪いな。お詫びの品はないけど、その体、しばらく借りるぜ」
俺は気絶した彼女の頬に手を触れ、能力を発動させた。
再び全身を包む熱。骨格が組み替わり、筋肉のつき方が変わっていく。
(……ほう)
変化が完了し、俺は自分の体をまじまじと見下ろした。
結衣のガウンは少し丈が短くなり、胸元が窮屈に感じられた。
どうやら、この女性は結衣よりも身長が少し高く、そして……全体的に肉付きが良いようだ。
俺は邪魔になったガウンを脱ぎ捨て、全裸のまま部屋の全身鏡の前に立った。
そこに映っていたのは、結衣の『モデル体型』とは全く違う、大人の女の魅力に溢れた『わがままボディ』だった。
「なるほど。こいつは当たりだな」
20代後半ならではの、少しだけ重力に逆らいきれなくなった、柔らかく豊かなバスト。
結衣のようにツンと上を向いているわけではないが、その分、手のひらからこぼれ落ちそうなほどのボリュームと重量感がある。
俺は両手でその豊かな双丘を下から持ち上げるように揉みしだいた。
「んっ……」
それだけで、甘い吐息が漏れる。
指先が乳首を掠めると、ビクッと体が跳ね、下腹部に熱が灯るのがわかった。
「感度も悪くない。むしろ、結衣とは違う、もっと成熟した快感がありそうだ」
続いて、ふくよかなヒップラインに手を這わせる。
結衣の小ぶりなお尻とは違い、肉厚で、指が沈み込むような極上の柔らかさだ。
撫でるだけでも、ゾクゾクとするような快感が腰のあたりに広がっていく。
(じっくり堪能したいところだが、今はまだその時じゃない)
俺は押し寄せる女の快感を強引に抑え込み、鏡から視線を外した。
「まずは、結衣の部屋に置きっぱなしにしてある極秘ファイルと、佐藤の制服たちを回収しなきゃな」
俺は部屋の隅に置かれていた女性の旅行用ボストンバッグを開けた。
中には、明日の着替えらしき服が何着か入っている。
「よし、これにするか」
俺は、落ち着いたネイビーのスキニーデニムと、少しゆったりとした白いVネックのサマーニットを選んだ。
下着は、彼女が予備として持ってきていた、少し大人びた黒のレースのものを身に着ける。
(ふむ、少し胸元がキツい気もするが……まあ、悪くない)
着替えを終え、大人の女性らしい落ち着いた装いになった俺は、女性の部屋のカードキーをポケットに突っ込み、自分の(結衣の)部屋へと向かうためにそっとドアを開けた。

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廊下に人の気配がないことを確認し、俺は音もなく自分の部屋――先ほどまで『橘結衣』として過ごしていた部屋のドアを開けた。
中は、数分前まで俺が情欲に身を浸していた空間そのものだった。
ベッドの上には乱れたシーツが残り、かすかに甘い香水の香りが漂っている。
「さて、忘れ物を取りに戻ったってわけだ」
俺はベッドの脇に放置していたバッグを手に取り、中身を確認する。
警察から盗み出した『極秘ファイル』。そして、その下に押し込んであった佐藤の制服と下着。
それらがしっかりと収まっていることを確認し、ボストンバッグのジッパーをしっかりと閉めた。
もし、この部屋の掃除や点検が入れば、ここに残された証拠から大騒動になるだろう。
しかし、俺がこの姿のままこの部屋に戻ってくることはもうない。
すべて回収した今、この部屋はただの「過去の隠れ家」だ。
「よし、完璧だ」
俺はボストンバッグをしっかりと抱え、自分の部屋のドアを静かに閉めた。
そのまま廊下を数歩歩き、隣の部屋――今や俺の新しい拠点となっている女性の部屋へと戻る。
カードキーをかざし、カチャリと音を立てて中に滑り込んだ。
オートロックが閉まるのを確認し、ふうっと息をつく。
「さてと……。新しい体を完全に我が物にするために、まずはこの女のプロフィールを確認しておくとしようか」
俺はベッドに腰掛け、女性のハンドバッグから財布や身分証明書を取り出した。
免許証の表面に視線を落とす。
(名前は……桐島 葵。年齢は28歳か)
住所の欄には、都内のマンション名が記されている。
職業についての直接的な記載はないが、名刺入れには大手IT企業のマーケティング部という肩書が並んでいた。
(桐島葵、か……。バリバリのキャリアウーマンってわけだ。どうりで、ただの一般客にしてはやけに肝が据わっていると思ったぜ)
財布の中身には、十分に余裕のあるクレジットカードの数々と、それなりの額の現金が入っている。これなら、当面の生活費や移動費に困ることはなさそうだった。
俺は免許証の顔写真と、室内の全身鏡に映る自分の姿を交互に見比べる。
すっきりとまとめた髪型、少し大人びた落ち着いた目元、そして先ほど確認した豊満な「わがままボディ」。
(結衣の清楚な女子大生スタイルも悪くなかったが、この葵の成熟した大人の色気も捨てがたい。警察の追っ手から逃れるための『カモフラージュ』としては、こっちの方がより自然に街に溶け込めるな)
極秘ファイルを手に入れ、さらに完璧な新しい身分と肉体までを手に入れた。
すべては計画通り、いや、それ以上の好転だ。
俺はボストンバッグの奥底に極秘ファイルを隠し直すと、ネイビーのスキニーデニムの上から、心地よい疲労感を覚える自分の豊かなヒップを軽く撫でた。
「さて、明日からは大人の女性『桐島葵』として、この街を優雅に歩かせてもらうとしようか……」
窓の外に広がる深夜の街の明かりを見下ろしながら、怪盗クロウは不敵で美しい笑みを浮かべた。

786ad045 No.4356

ベッドの横の床には、気絶したままの『本物の桐島葵』が無防備に横たわっている。
俺――いや、今の桐島葵は、シャワーを浴びてさっぱりした体に適当な部屋着を纏い、ホテルのベッドに腰掛けてコーヒーをすすっていた。
(ふう、やれやれ。これで一段落、明日の朝のチェックアウトまでゆっくり休めるとするか……)
そう思った矢先だった。
コン、コン、コン。
規則正しい、しかし逃げ場のない硬質なノックの音が部屋に響いた。
(……っ!?)
瞬間、背筋に冷たいものが走る。
心臓がドクリと大きな音を立てた。
ドアスコープから外を覗くと、そこには制服姿の警察官が数名、険しい顔で立っていた。
(くそっ! まだこのフロアをしらみつぶしに捜索しているのか!?)
一瞬、居留守を使おうかという考えが頭をよぎる。
しかし、ホテルの一室で電気がついていながら出ないのは、かえって不自然すぎる。
それに、隣の部屋(結衣の部屋)で騒動を起こした直後だ。
ここで怪しまれたら、一巻の終わりだった。
(落ち着け。今の俺は、指名手配されている怪盗クロウでも、追われている女子大生でもない。しがない会社員の桐島葵だ。化けの皮が剥がれるわけがない)
俺は冷や汗をぐっと飲み込み、顔の表情筋を「迷惑そうな一般客」のそれに整えた。
深呼吸を一つし、ゆっくりとドアの鍵を開けて、チェーンをかけたまま少しだけ扉を開ける。
「……はい、どちら様ですか?」
少し不機嫌そうな、しかし怯えてはいない大人の女性の声色で問いかける。
ドアの前に立っていた若い警官は、俺の顔を見るなり、少し表情を和らげつつも、真剣なトーンで切り出した。
「夜分遅くに申し訳ありません。警察の者です。実は、このホテルの同じフロアにお泊まりの方にお尋ねなんですが」
「警察……? あの、何かあったんですか?」
「ええ、実はですね……この隣の部屋に宿泊されている若い女性――橘結衣さんという方なんですけど、ご存知ありませんか?」
(っ! 結衣の名前が出た……!)
心臓が跳ね上がったが、表情には微塵も出さない。俺は少し怪訝そうな顔を作って首を横に振った。

786ad045 No.4357

「結衣さん……? いえ、私は知りませんけど。隣の方ですか?」
「はい。実は、その方を探していまして……。先ほど、彼女が利用していた部屋を確認したんですが、本人が見当たらなくてですね。ただ、その……部屋の状況からして、何者かに連れ去られたか、あるいは自分で姿を消した可能性があるんです」
警官の言葉に、俺は内心で冷や汗をかきながらも、頭をフル回転させる。
(なるほど。警察は、結衣が「何者かに連れ去られた」か「自ら逃げた」と踏んでいるわけか。俺がトイレで気絶させて、バッグに服を詰めて逃げたことまではまだバレていないらしい)
「はあ……そんなことがあったんですか。知りませんでしたけど、物音とかは特に……あ、でも、さっきまで隣から変な声が聞こえてうるさかったくらいですけど……」
俺がそう言うと、警官は少し気まずそうな顔をした。
「あ、その件についても、他の部屋の方から苦情が入りまして……。もしかしたら、その行方不明になっている橘さんに関係があるかもしれないと、このフロアの宿泊者の方々にお話を伺っているところなんです」
警官はそう言うと、鋭い視線を少しだけ俺の部屋の奥へと向けた。
ベッドの横の床には、気絶した本物の葵が転がっている。もしこの隙に踏み込まれたら、一発でゲームオーバーだ。
俺は自然な動きでドアの隙間を少し塞ぎ、大人の女性らしい呆れたようなため息をついた。
「そうですか……。大変なんですね。でも、私は夜遅くで寝ていたところですし、これ以上はちょっと……協力できませんけど」
「あ、いえ、ご協力ありがとうございます。もし、その橘結衣さんらしき人物を見かけたり、何かご存じのことがあれば、すぐにフロントか私たちに通報してください」
「はい、わかりました。お疲れ様です」
ガチャリ。
警官が頭を下げたのを確認し、俺は静かにドアを閉め、そして素早くチェーンをかけた。
背中を伝う冷たい汗を拭いながら、俺はふうっと長いため息をつく。
(危なかった……。一歩間違えれば、あの警官たちに本物の葵の姿を見つかるところだった)
警察は今、「消えた女子大生(結衣)」を探している。
だが、その結衣の姿をした怪盗クロウは、今や全く別の人間――「桐島葵」として、彼らの目の前で悠然と息をしているのだ。
(これぞ、完全犯罪ってやつだな)
俺はベッドに戻り、冷めかけたコーヒーを一口飲むと、再び不敵な笑みを浮かべた。
追う者たちの鼻先を華麗にすり抜けながら、俺は明日からの新しい生活に思いを馳せるのだった。

786ad045 No.4359

部屋に警官が来たことで、このホテルも絶対の安全圏ではないと痛感した。
とはいえ、明日の朝までここで息を潜めるのがベストな選択だ。
本物の葵を気絶させたまま連れ歩くわけにもいかないし、無闇に動けば警戒網に引っかかる。
だが、一つだけ、今すぐ済ませておかなければならないことがあった。
『極秘ファイル』の処理だ。
(こんな危ない代物、いつまでも手元に置いておくわけにはいかない。早急に手放して、金に換える算段をつけなきゃな)
俺はベッドに置いたボストンバッグを開け、中から分厚い極秘ファイルを取り出した。
あらかじめ用意してあった、中身の透けない厚手のレターパックにファイルを滑り込ませる。宛先は、俺が昔から情報提供の取引に使っている、裏社会にも顔が利くゴシップ雑誌のフリー記者だ。
「よし、これをポストにぶち込めば、この厄介な荷物ともおさらばだ」
俺は結衣の姿の時に買っておいたレターパックを大きめのトートバッグに隠し、部屋の鍵(カードキー)をポケットに入れた。
気絶している本物の葵を一瞥し、目覚める気配がないことを確認してから、俺は静かに部屋を出た。
深夜2時過ぎ。
ホテルの廊下は静まり返っており、先ほどの警官たちの姿もすでになかった。
エレベーターで一階に降り、ロビーを足早に通り抜けて外へ出る。
深夜の冷たい風が、薄手のカーディガン越しに桐島葵の豊かな体を撫でた。
目的地は、ホテルから歩いて5分ほどの場所にある、大きなポストが設置されている24時間営業のコンビニエンスストアだ。
歩道を歩きながら、俺は警戒を怠らず周囲に目を配る。
時折、パトカーのサイレンが遠くで鳴り響き、街全体がまだ薄気味悪い緊張感に包まれているのがわかる。
(警察はまだ『結衣』の姿を探しているはずだ。この『桐島葵』の姿なら、職務質問されるリスクは極めて低いが……油断は禁物だ)
やがて、コンビニの煌々とした明かりが見えてきた。
店の前にある赤いポストに近づき、周囲に人がいないことを確認して、トートバッグからレターパックを取り出す。
コトン。
重い音を立てて、国家の機密がポストの底へと落ちていった。
これで、俺が怪盗クロウとして警察署に侵入した最大の目的は達成された。
あとは、ほとぼりが冷めるまでこの葵の姿でやり過ごすだけだ。

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だが、その「やり過ごす」という言葉が、俺の心の中に小さな波紋を広げた。
(この葵の体、確かに極上だが、いつまでも借りておくわけにはいかないよな)
ホテルに置き去りにしている本物の葵が目覚めれば、すぐに警察を呼ばれる。
そうすれば、今度は『桐島葵』が手配の対象になる。
俺が自由に行動し続けるためには、常に「次の隠れ蓑」を用意しておかなければならない。
俺はポストから離れ、コンビニの中へと足を踏み入れた。
深夜のコンビニは、人もまばらだ。店員はレジの奥で退屈そうに品出しをしている。
缶コーヒーでも買おうとドリンクコーナーへ向かいながら、俺の視線は自然と、店内にいる数少ない『女性客』たちへと向けられていた。
(さて、次はどんな体がいいかな……?)
雑誌コーナーで立ち読みをしている、金髪ショートヘアのギャル風の女。
少し派手だが、夜の街に紛れるにはちょうどいいかもしれない。
スイーツの棚をじっと見つめている、メガネをかけた地味めなスーツ姿のOL。
目立たないという点では、隠れ蓑として完璧だ。
あるいは、レジでおでんを頼んでいる、少しふくよかな中年女性。
あそこまで年齢が離れれば、誰も怪盗クロウの変装だとは疑うまい。
(いや、どれもピンとこないな)
様々な女性の体つきや雰囲気を値踏みしながら、俺は怪盗としての冷静な計算と、男としての純粋な好みを交差させていた。
結衣のモデル体型も、葵のわがままボディも、それぞれに極上の『着心地』と快感があった。一度その味を知ってしまうと、ただ隠れるためだけの妥協した体には、どうにも食指が動かない。
「……贅沢な悩みだな」
俺は自嘲気味に笑い、無難にブラックの缶コーヒーを手に取った。
レジで会計を済ませ、店を出る。
(まあいい。葵の体でいられる時間はまだ少しある。
明日の朝、ホテルを出るまでに、ゆっくりと「極上のターゲット」を探すとしよう)
缶コーヒーの温もりを手のひらに感じながら、俺は再び深夜の闇の中を、ホテルへと歩き出した。
桐島葵としての、静かで、そしてスリリングな夜は、まだ終わらない。

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冷えた缶コーヒーを片手に、俺は深夜のホテルの部屋へと戻ってきた。
ドアの鍵を静かに開け、中へと滑り込む。
足元には、まだ意識を取り戻す気配のない本物の桐島葵が、無防備に横たわっていた。
「さて、あと数時間もすれば朝が来るか……」
ベッドの脇に腰掛け、缶コーヒーのプルタブをプシュッと開けて口に含む。
苦味が、昂ぶった頭を少しだけクールダウンさせてくれた。
(警察の網をかいくぐり、機密ファイルはすでに安全な場所へ飛ばした。
残る問題は、このホテルをどうやって、どの姿でチェックアウトするかだ)
本物の葵をこのまま部屋に置き去りにすれば、チェックアウトの時間か、あるいはルームクリーニングの際に大騒ぎになるのは確実だ。
もっとも、その頃には俺はすっかり別の場所へ消えているだろうが。
しかし、ホテルのロビーやエレベーターには防犯カメラがある。
この桐島葵の姿で正面から堂々と出ていくのは、警察がまだ周辺を警戒している以上、少しばかりリスクが高い。
(かといって、このまま部屋に引きこもるわけにもいかないしな……)
思案に暮れていると、窓の外の空がわずかに白みはじめてきた。
新しい一日の始まり、そして怪盗クロウの逃亡劇の新たな一日が、音もなく幕を開けようとしていた。

1cae6af8 No.4729

「……それにしても、この葵の体、やっぱりよく馴染むぜ」
俺はベッドに横たわり、ネイビーのスキニーデニム越しに自分の豊かなヒップを軽く撫でた。
大人の女性ならではの落ち着いた色気と、適度な肉感。
昨夜から纏っているこの『桐島葵』という仮面は、想像以上に居心地がいい。
だが、いつまでもこの部屋に留まるわけにはいかない。
(朝のチェックアウトの混雑に紛れてロビーを抜けるか。それとも、ホテルの外に出る前に、もう一度別の誰かに姿を変えておくか……?)
脳内で素早くシミュレーションを繰り返す。
もしこのまま葵の姿でホテルを出る場合、万が一にも昨夜の警官と顔を合わせれば、どれだけ完璧に化けていようと余計な詮索を受ける原因になる。
いっそ、ロビーですれ違う宿泊客の中から、まったくノーマークの別のターゲットを引っ捕らえて、新しい姿に『着替えて』しまうのが最も安全で確実な手だ。
「よし……そろそろ動き出すか」
俺はベッドから立ち上がり、軽く伸びをした。
サマーニットの裾がわずかに持ち上がり、引き締まったウエストのラインが鏡に映し出される。
名残惜しさはあるが、怪盗クロウに感傷は似合わない。
俺はトートバッグを肩にかけ、ポケットにカードキーを押し込んだ。
ドアの鍵を静かに開き、外の気配を伺う。
廊下にはまだ朝の静けさが漂っており、人の気配はない。

(さて、華麗なる変身劇の第3幕といくか。今度はどんな『お気に入り』が俺を待っているのやら)
不敵な笑みを浮かべた桐島葵――その中身である怪盗クロウは、静かに部屋のドアを閉め、朝の廊下へと踏み出した。

1cae6af8 No.4742

早朝の静まり返った廊下を、桐島葵の優雅な足取りでエレベーター前へと向かう。
カツン、カツンとヒールを鳴らしながら角を曲がった瞬間、俺は思わず足を止めた。
エレベーターのボタン前。そこに立っていたのは――見知った顔だった。
「ふぁ……眠っ……」
口元を手で覆い、大きなあくびをしているのは、交通課の美人婦警・佐藤として潜入した際、一緒にパトカーで巡回したあの元気な後輩婦警――長瀬だった。
制服ではなく、大きなロゴの入ったオーバーサイズのパーカーに、ダボッとしたグレーのスウェットパンツという完全にオフのラフな格好だ。
髪も少し跳ねており、目の下にはうっすらとクマがある。
昨夜の俺(佐藤)の失踪劇のせいで非番も潰れ、家に帰ることもできず、警察が手配したこのホテルで数時間の仮眠を取らされていたのだろう。
(まさか、こんなところで出くわすとはな……だが、これは絶好のチャンスだ)
俺の脳内で、怪盗としての計算が高速で弾き出される。
長瀬の姿を奪えば、捜査の渦中にいる警察の最新情報や動きが丸見えになる。これ以上のカモフラージュと情報源はない。
俺は即座に桐島葵の落ち着いた笑みを貼り付け、声を落として彼女に近づいた。
「あら……大丈夫ですか? すごく辛そうだけど」
「えっ? あ、はい……ちょっと仕事で突発的なトラブルがありまして……」
長瀬は眠気眼でチラリとこちらを見た。大人の雰囲気を纏う綺麗なお姉さん(葵)の登場に、警戒心も薄い。
「実は私、あっちの部屋に泊まっている者なんですけど……栄養ドリンクの予備がたくさんあるの。もしよかったら、一本飲んでいかない? 少しは楽になるわよ」
「えっ、本当ですか!? でも、見ず知らずの私にそんな……」
「いいのよ、困ったときはお互い様。すぐそこだから、おいで」
疲労困憊で思考力が低下していた長瀬は、葵の包容力のある笑みと優しい声にいとも簡単に引っかかり、「すみません、お言葉に甘えて……」とフラフラついてきた。
部屋に入った瞬間、俺は素早くドアを締め、チェーンをかけた。
「あの、栄養ドリンクって――」
「悪いな、長瀬ちゃん」
振り返ろうとした彼女の首筋に、俺は間髪入れずに鋭い手刀を叩き込む。
「くっ……!?」
短いくぐもった声を残し、長瀬の体が崩れ落ちた。
俺は彼女をしっかりと抱きとめ、部屋の奥へと運ぶ。
ベッドの脇の床には、昨夜気絶させた本物の桐島葵が静かに横たわっていた。その隣に長瀬を並べて寝かせる。
(よし……それじゃあ、警察の情報をいただくとするか)
俺は気絶している長瀬の頬に手を触れ、能力を解放した。
――全身を駆け巡る熱い奔流。
葵の豊満で大人びた骨格が劇的に縮み、筋肉と皮膚の質感が組み替わっていく。
胸元の重みが急速に削ぎ落とされ、視線がグッと低くなった。

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「っふぅ……」
変化が治まり、俺は長瀬のダボついたオーバーサイズパーカーとスウェットパンツを素早く脱がせた。
現れたのは、若い警察官らしく、無駄な肉はないが柔らかさの残る、健康的で小柄な体躯。
身につけている下着は、飾り気のないシンプルなグレーのスポーティな上下だった。
「へえ……案外、引き締まってるじゃないか」
自分の手で、新しい身体――長瀬の肌を撫でてみる。
佐藤のグラマラスな肉感とも、結衣のスレンダーなモデル体型とも、葵の大人の色気とも違う。日々訓練を重ねている若手警官らしい、弾力とハリのあるフレッシュな質感だ。
シンプルなグレーのスポーティブラは、小ぶりだがハリのある胸をしっかりと固定しており、胸元に吸い付くようなフィット感がある。
ショーツも運動性を重視したシンプルな作りで、小さく引き締まったお尻をぴっちりと包み込んでいた。
「飾り気はないが……このフィット感、動きやすくて悪くない」
鏡の前に立ち、長瀬の可憐でボーイッシュな顔立ちと、スポーティな下着姿の自分を見つめる。
(さて、まずは彼女のポケットから警察のICカードや連絡用端末、身分証を引っ張り出すか。そして、長瀬としてこの警察の混乱をじっくり楽しむとしよう)
気絶した葵と長瀬を見下ろし、怪盗クロウは長瀬の元気な声帯を使って、クスリと不敵に笑った。

1cae6af8 No.4744

床に脱ぎ捨てられていた長瀬のオーバーサイズパーカーに頭から袖を通し、ダボッとしたスウェットパンツを穿き直す。
シンプルでスポーティなグレーの下着の上に重なる綿の肌触りと、小柄な身体を丸ごと包み込むようなダボついたサイズ感。
ポケットを漁り、警察の身分証、警察手帳、そして端末類をすべて長瀬の服のポケットへと移し替えた。
(よし、これで外見も持ち物も、どこからどう見ても『長瀬』本人だ)
俺は手早く作業を進めた。
部屋にあった備え付けのタオルや充電コードを使い、床に倒れている本物の桐島葵と長瀬の二人を、動きが取れないよう頑丈に縛り上げる。
口には粘着テープをしっかりと貼り、意識が戻っても声を出せないよう処置を施した。
これで彼女たちが目を覚ましても、助けを呼ぶことはおろか、身動き一つ取れない。
バッグから葵の部屋の鍵を抜き取り、廊下に出ると、ドアノブに『起こさないでください(Do Not Disturb)』のカードを静かに掛けた。
これで清掃スタッフが入ってくることもなく、少なくともチェックアウトの時刻過ぎまでは完璧な時間が稼げる。

1cae6af8 No.4745

「さて……次は長瀬の部屋で情報収集だな」
長瀬のポケットに入っていたホテルの部屋番号が記されたカードキーを確認し、俺は彼女の自室へと向かった。
キーをかざしてドアを開け、室内へ足を踏み入れる。
部屋の中は、突発的な呼び出しと疲労困憊の捜査状況を物語るように、脱ぎ散らかされた予備の私服や飲みかけのペットボトルが散乱していた。
俺はベッドの端に腰を下ろし、長瀬の仕事用スマホを取り出す。
指紋認証に長瀬の指(今の俺の指)を当てると、カチャリと簡単にロックが解除された。
警察専用の連絡アプリや内部チャットの画面を開くと、そこはすでに俺――『怪盗クロウ』に関する緊急通知と捜査情報でびっしりと埋め尽くされていた。
『【緊急手配】怪盗クロウ変装疑惑および交通課・佐藤隊員の拉致事件について』
『各員、署内での変装潜伏の可能性を念頭に警戒を密にせよ』
『駅前および商業施設エリアの検問を強化中』

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「へえ……長瀬ツバキ、ね」
警察手帳を開き、彼女のフルネームを確認する。長瀬ツバキ、22歳。交通課の新人警官。
スマホの内部チャットをスクロールしていくと、捜査本部が現在把握している最新の状況が手に取るように伝わってきた。
本物の佐藤が女子トイレで発見されたこと。
その後、俺が佐藤の姿で長瀬とパトカーに乗り込み、商業施設で撒いたこと。
警察は「クロウは一般人に変装して潜伏中、もしくはすでに市外へ脱出した可能性がある」と踏んでおり、現場の警察官たちは不眠不休で市内の検問と防犯カメラの解析に追われていること――。
「くすっ……必死だな、捜査本部」
長瀬ツバキのボーイッシュで可憐な声で、俺は不敵な独り言を漏らした。
彼らが血眼になって探している大怪盗は、今や彼らの身内――それも捜査の真っ只中にいる新人婦警の身体と立場を完全に奪い取り、こうして警察内部のチャットをリアルタイムで特等席から眺めているのだ。
スポーティな下着の心地よいフィット感と、オーバーサイズのパーカーのぬくもりに包まれながら、俺は長瀬ツバキとして、次なるチェスの駒を動かすための完璧な作戦を練り始めた。

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画面に流れるテキストを素早くフリックしながら、俺――ツバキは口角を吊り上げた。
内部チャットのログによると、警察の警戒網は駅周辺と主要幹線道路、そして商業施設の周辺に集中している。
本物の佐藤が女子トイレで発見されたことで「変身能力を持つ危険人物」としての警戒レベルは跳ね上がっていたが、捜査本部の全指揮系統はいまだに「クロウは女子大生か、あるいは別の一般人に変装して市外へ逃走を図っている」という前提で動いていた。
(まさか捜査員の一人、それも昨日まで一緒にパトカーに乗っていたツバキの身体の中にクロウが入っているとは、夢にも思うまい)
だが、油断は禁物だ。
ツバキの姿は警察関係者の顔パスとして最強の通行手形だが、同時に「交通課の新人・長瀬ツバキ」としての行動パターンから逸脱すれば、勘の鋭い上司や同僚に怪しまれるリスクも孕んでいる。
怪盗クロウの流儀は、完璧な勝利と美学だ。無駄なリスクは一切侵さない。
俺はツバキの仕事用スマホのGPS機能を素早くオフにし、裏口や防犯カメラの死角となっているルートを捜査マップから網羅した。
「よし……ルート確定だ」
ツバキの少し高めでハリのあるボーイッシュな声で呟くと、ダボついたオーバーサイズパーカーのフードを深くかぶり、ホテルを後にした。
朝の空気が頬を刺す。
スポーティなグレーの下着の上に重なるスウェットパンツの柔らかな感触と、動きやすい小柄な身体の軽快さを感じながら、俺は路地裏へと滑り込んだ。
途中、駅へ向かう大通りには、緊迫した表情で通行人に鋭い視線を送る制服警官たちの姿が見えた。
検問線だ。
彼らはすれ違う女性客や若い男性の顔を必死に覗き込んでいるが、路地からひょっこり現れた「非番で私服の同僚(ツバキ)」には、警戒の「け」の字も向けない。
それどころか、一人の先輩警官がこちらに気づき、痛々しいものを見るような目で見つめてきた。
「あ、長瀬。お前もホテルで少しは休めたか? 昨夜から大変だったな」
「あ……はい、お疲れ様です! 先輩方も、捜査本当にお疲れ様です……!」
俺はとっさにツバキらしい、少し恐縮したような元気な後輩の表情を作り、ハキハキと頭を下げた。
動きやすい身体のおかげで、警官特有のキリッとした敬礼の動作も体に染み付いているように自然だ。
「佐藤の件、マジで焦ったよな……。まあ、上の指示で検問は昼まで続く予定だから、お前は無理せず休めよ」
「はい! ありがとうございます、お気をつけて!」
完璧だ。微塵の疑いも持たれていない。

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先輩警官と別れた俺は、警察が「検問の抜け道」としてマークしていない旧市街の商店街へと足を向けた。
アーケード街の薄暗い路地裏を通り抜け、事前に割り出しておいた防犯カメラの設置率が限りなくゼロに近い廃線沿いの裏道へと抜ける。
ツバキの持っていた警察端末から得たリアルタイム配置図のおかげで、警察の巡回ルートやパトカーの位置はすべて手取るように把握できている。
まるでレーダーを見ながら敵の陣地を悠々と散歩しているようなものだ。
(市外へ抜ける高速バスの臨時停留所……ここなら検問の対象外になっているな)
ダボッとしたスウェットのポケットに両手を突っ込み、ツバキの小柄な身体で軽やかにステップを踏みながら進む。
小ぶりで引き締まったお尻を包むスポーティなショーツと、無駄な肉のない健康的で柔軟な肉体は、長距離の移動や急なパルクールにも完璧に対応できるポテンシャルを秘めていた。
(佐藤のグラマラスな色気も、結衣のモデル体型も、葵の大人の魅力も良かったが……逃走劇のパートナーとしては、このツバキの軽快な身体が一番しっくりくるかもしれないな)
手に入れた極秘ファイルはすでにポストの中だ。あとは俺自身がこの街を完全に脱出し、悠々と次のアジトで報酬を受け取るだけ。
旧市街の先に見えてきたバス停で、俺は停留所の陰に身を潜めた。
まもなく、隣県へと向かう長距離バスが滑り込んでくる。
「警官の情報を握った警官自身が逃げ出すんだ……追いかけっこにもなりやしないぜ」
フードの奥で可憐なツバキの顔に不敵で淫靡な笑みを浮かべ、怪盗クロウは悠然とバスのステップへと足をかけた。

1cae6af8 No.4802

長距離バスの最後尾のシートに深く腰掛け、俺――ツバキはオーバーサイズパーカーのフードを深く被り直した。
プシューという音とともにドアが閉まり、バスが静かに動き始める。
車内のWi-Fiに警察専用端末を接続し、画面を素早くタップして捜査本部の最新ログを読み込む。
『【状況更新】怪盗クロウは依然として警察署管内、あるいは隣接する商業エリアの防犯カメラ死角に潜伏中と推定。各班、空き家および宿泊施設の捜索を継続せよ』
「くすっ……まだ管内で右往左往してやがる」
画面に並ぶ焦燥感に満ちたメッセージを眺めながら、ツバキの可憐な声で小さく失笑を漏らす。
警察の捜査本部は、俺がすでに網の目をすり抜け、彼らの同僚である長瀬ツバキの身体を使って市外行きのバスに揺られているなど、夢にも思っていない。
完全な裏をかいた勝利だ。
だが――怪盗クロウの頭脳は、次のリスクをすでに弾き出していた。
(とはいえ、このツバキの身体でいられる時間もそう長くはないな)
あのホテルの部屋には、ドアノブに『起こさないでください』のプレートを下げてある。
だが、清掃員のチェックイン準備や、あまりに連絡が取れないことを不審に思った同僚が部屋に突入すれば、縛り上げられた本物の桐島葵と、そして本物の長瀬ツバキが発見されるのは時間の問題だ。
「ツバキ本人が発見された瞬間、『長瀬ツバキ』という存在そのものが指名手配の対象に切り替わる……」
そうなれば、全国の警察ネットワークにツバキの顔写真が緊急手配として回る。いくら警察の情報端末を持っていても、この顔のまま街を歩くのは自殺行為だ。
(このバスが隣県に入り、次のターミナル駅で降りたら……速やかに『次の着ぐるみ』へ着替えるとしよう)
俺はダボッとしたスウェットパンツの上から、自分の小ぶりで引き締まった太ももをポンポンと軽く叩いた。
スポーティなグレーの下着に包まれた、健康的で軽快なツバキの肉体。
急場をしのぐ逃走劇のパートナーとしては最高に優秀だったが、潮時を見極めるのもプロの条件だ。
窓の外を流れる景色が、徐々に市街地から高速道路の防音壁へと変わっていく。
隣県まではおよそ1時間。
「さて……次はどんな美しい獲物(身体)が俺を待っているかな」
フードの陰でツバキのボーイッシュな唇に妖艶な笑みを浮かべ、俺は次のターミナル駅で狙うべき「完璧なターゲット」のイメージを頭の中で描き始めた。

16396c36 No.4834

高速バスが大きく揺れ、目的地の隣県ターミナル駅のロータリーへと滑り込んだ。
プシューっとエアブレーキの音が響き、ドアが開く。
俺――ツバキはオーバーサイズパーカーのフードを深く被ったまま、乗客の波に紛れてバスを降りた。
(さて、ここからはスピード勝負だ)
スマホの画面をチラリと確認する。
まだ警察の内部チャットに動きはない。
ホテルの部屋の二人はまだ眠っているか、縛られたまま悶えている最中だろう。
だが、いつ「長瀬ツバキ捜索」の緊急打電が入るか分からない。
タイムリミットは確実に迫っている。
俺は混雑する駅改札を抜け、そのまま直結している巨大な駅ビルへと足を踏み入れた。
吹き抜けの開放的なショッピングモール。
ガラス張りの店舗、華やかな照明、甘い香水の匂い。
休日の駅ビルは、買い物を楽しむ多様な女性客やショップ店員で溢れかえっている。
まさに、怪盗クロウにとっての『最高の衣装部屋』だ。
(さて……次の『最高の一着』はどれだ?)
ツバキのボーイッシュで愛くるしい顔立ちを活かし、不審がられないようジューススタンドのカップを片手に、俺はエスカレーターを上がりながら獲物を品定めし始めた。

16396c36 No.4835

とりあえず3人のターゲットを見つけた。
1人目。
2階の高級セレクトショップで、客に洗練された笑みを向けている20代半ばの美女。
黒のタイトなロングドレスを身に纏い、スラリとした高身長と整ったメイクが目を引く。
(スタイリッシュで格好いいな。接客業の顔パスや、高級ホテルへの潜入にはうってつけだ。あの引き締まったモデルのようなボディラインも試してみたいところだが目立ちすぎるのが玉にキズか)

2人目。
カフェのテラス席で一人、文庫本を読んでいるお嬢様風の女性。
白のレースブラウスに柔らかなチュールスカート。
おっとりとした雰囲気に、小ぶりで可愛らしい手足。
(男の庇護欲を掻き立てる完璧な容姿だ。警戒心を抱かせずに人に近づくには最高のカモフラージュだな。あのふわふわした体つきも、触り心地が良さそうだ)

3人目。
3階のブティック前で、高級そうなスーツをビシッと着こなし、難しい顔でビジネススマホを操作している30歳前後の女性。
黒髪をハーフアップにし、知的なメガネの奥には鋭い瞳。細身ながらもしっかりと主張するバストと、タイトスカートから伸びる艶やかなストッキングの脚ラインが美しい。
(大人の知性と色気が同居した極上品だな。身分証や所有物によっては、さらに面白い情報にアクセスできるかもしれない)



「ふふ……迷うな」
ツバキの可憐な口元から、漏れ出そうになる笑みを必死に抑える。
佐藤の圧倒的な肉感、結衣のスレンダーなモデル体型、葵の豊満なわがままボディ、そしてツバキの引き締まったスポーティな肉体――。
これまで手に入れてきたどの身体も、それぞれに違った極上の『着心地』と快感を与えてくれた。
(一度味わっちまうと、妥協した見た目じゃ満足できなくなる。これが怪盗の贅沢な悩みってやつか……)
俺はジュースを一口すすると、目を細めてターゲットたちの行動パターンと、周囲の『死角』――安全に気絶させて姿を奪える場所(フィッティングルーム、従業員用トイレ、防犯カメラの少ない非常階段など)の位置関係を計算し始めた。
(さあ……俺の次の『皮膚』になってくれるのは、どこのお嬢さんだ?)

16396c36 No.4836

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2階の高級セレクトショップで、客に洗練された笑みを向けている20代半ばの美女

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カフェのテラス席で一人、文庫本を読んでいるお嬢様風の女性。

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カフェのテラス席で一人、文庫本を読んでいるお嬢様風の女性  2

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3階のブティック前で、高級そうなスーツをビシッと着こなし、難しい顔でビジネススマホを操作している30歳前後の女性。

b7308a78 No.4921

「よし、次のターゲットはあのお嬢様だ」
カフェのテラス席で静かにページをめくる彼女を見つめ、俺は心の中で微笑んだ。
だが、ここで一瞬の思考。
これまでは気絶させて服を脱がせ、その場に縛り上げて放置してきた。
しかし、ここは人が行き交う巨大な駅ビルだ。
気絶した人間を放置すれば、遠からず発見されて通報される。
さらに『長瀬ツバキ』の失踪と重なれば、警戒網が一気に跳ね上がってしまう。
(リスクが高すぎるな。……今回は『姿(見た目)』だけをいただくとするか)
禁断の能力は、接触することさえできれば姿形を完璧にコピーできる。
服まで奪う必要はない。
だが――今の俺はダボッとしたオーバーサイズパーカーにスウェットパンツという、ツバキのボーイッシュなラフ姿だ。
この格好のまま清楚なお嬢様の顔に化ければ、アンバランスで目立ってしまう。
(まずは、あのお嬢様に似合いそうな服を手に入れるのが先決だな)
怪盗としての長年の目利きと、これまで数々の女の体を纏ってきた経験が威力を発揮する。
遠目から一瞥しただけで、彼女の肩幅、バストのふくらみ、ウエストのくびれ、そして足のサイズまで寸分の狂いもなく把握できた。
俺はツバキの小柄な身体で軽やかにステップを踏み、同じフロアにある上品なレディースブティックへ向かった。

b7308a78 No.4922

店内には、彼女が着ているような清楚で可憐な服が並んでいる。
俺は迷うことなく、淡いアイボリーのボウタイブラウスと、柔らかいラベンダー色のロングフレアスカート、そして足元に合わせるシアーなストッキングと上品なパンプスをピックアップした。
「いらっしゃいませ。ご試着もできますよ」
「あ、これ、友達へのプレゼントなんです! すごく似合いそうだなと思って」
ツバキの可憐でハキハキとした声で店員に微笑みかける。
ツバキ自身のボーイッシュな雰囲気と、プレゼントを買おうとしている可愛らしい仕草のギャップに、店員もすっかり好印象を抱いたようだ。
「まあ、素敵なお友達ですね! サイズはお分かりですか?」
「はい、バッチリ把握してます♪ プレゼント用に綺麗にラッピングしてもらえますか?」
「かしこまりました!」
怪しまれることなく、完璧なサイズ設定の洋服一式を華やかなショップバッグに納めてもらった。
会計を済ませ、手提げ袋を抱えて店を出る。
(準備完了だ。あとは……どうやってあのお嬢様に自然に触れるかだな)
俺はショップバッグを片手に、再びカフェのテラス席へと向かった。
文庫本に没頭している彼女は、まだ俺の存在にすら気づいていない。
すっと息を整え、ツバキの素朴で元気な雰囲気を演じながら、俺は彼女のテーブルのすぐ横を通りかかる。
そして――わざとらしく足を少しもつれさせ、手にしたショップバッグを彼女の肩口に優しく触れさせるようにして、一瞬だけ彼女の腕に自分の手を重ねた。
「あ、すみませんっ! 足がもつれちゃって……大丈夫でしたか!?」
「えっ? あ、はい……大丈夫です……」
おっとりとした声で驚く彼女。
その短い接触の瞬間――俺の身体の奥底で、禁断の能力が静かに起動していた。
(もらった……!)
「本当にごめんなさい! お怪我はなさそうですね、よかった……それじゃあ失礼します!」
ぺこりと頭を下げ、怪しまれないテンポでその場を離れる。
ショップバッグを抱え、俺は一目散に近くの多目的トイレへと滑り込み、内側からカチリと鍵をかけた。

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さあ、変身の刻だ。

体温が跳ね上がり、骨格がわずかに変化していく。
ツバキの健康的で引き締まった肉体が解きほぐされ、手足の先までしなやかで柔らかい、華奢で小さな守ってあげたくなるような肉体へと再構築されていく。
胸元はツバキよりも少しだけふんわりとした柔らかさを持ち、肌は陶器のように白く滑らかに変わった。
「ふう……っ」
能力の残熱が収まったのを確認し、俺は購入してきたばかりのショップバッグを開けた。
ツバキのダボついたパーカーとスウェットを脱ぎ捨てる。
下着はツバキのシンプルなグレーのスポーティなものだが、サイズが小柄な同士のため、この新しい体にもピッタリとフィットしている。
淡いアイボリーのボウタイブラウスに腕を通し、リボンを丁寧に結ぶ。
ラベンダー色のフレアスカートに足を通すと、細いウエストにすっと収まり、柔らかな生地が膝下を優しく包み込んだ。
シアーなストッキングを履き、パンプスに足を入れる。
仕上げに鏡の前に立った。
そこに映っていたのは、先ほどまでカフェで本を読んでいた、誰もが守りたくなるような清楚で可憐なお嬢様――そのものだった。
「ふふ……完璧ね」
彼女の、おっとりとして鈴を転がすような甘い声で呟いてみる。
本物を縛り上げるリスクを冒さずとも、怪盗クロウの鮮やかな変身は留まることを知らない。
ツバキの服と警察端末をショップバッグの奥底に隠し、俺は可憐な笑みを浮かべながら多目的トイレのドアを開けた。

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多目的トイレを出た俺――いや、今はどこからどう見ても清楚でおっとりとした雰囲気の『可憐なお嬢様』は、華やかなショップバッグを軽やかに抱えながら、駅ビルの奥へと足を進めた。
(まずは、過去の痕跡を完全に消し去る)
事前に目星をつけておいた、駅ビルの旧館と新館を繋ぐ連絡通路の脇へ向かう。
そこは自動販売機の裏手に位置し、照明も薄暗く、防犯カメラの死角となっている絶好のブラインドスポットだ。
誰の視線もないことを素早く確認し、俺は自販機の狭い隙間の奥深くへとショップバッグを滑り込ませた。
中には『長瀬ツバキ』のダボついたパーカーとスウェットパンツ、そして位置情報を特定されかねない警察専用端末が眠っている。
これで俺と「長瀬ツバキ」を直接繋ぐ物理的な証拠は一切なくなった。
「さようなら、ツバキちゃん。助かったわ」
彼女の鈴を転がすようなおっとりとした甘い声で、小さくささやく。
ツバキの制服のポケットから拝借しておいた財布には、十分すぎるほどの現金が入っていた。
これだけあれば、しばらくの電車代や宿泊費、食事代に困ることはない。
逃走資金としては完璧だ。
(本物の『私』がカフェで本を読んでいるうちに、ここを離れるとしよう)

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すれ違う人々が、思わず振り返るほどの可憐な美貌。
チュールスカートの裾をふんわりと揺らしながら、俺はカフェがあるフロアを大きく迂回し、駅の改札口へと向かった。
ピッ――。
自動改札機に切符を通し、ホームへ降り立つ。
ちょうどタイミングよく、隣の県の中核都市へと向かう普通列車が滑り込んできた。
特急や新幹線のような目立つ移動手段は避け、あえてローカル線を何度も乗り継いでいくのが、追っ手を撒くための鉄則だ。
開いたドアから車内へ入ると、窓際の空いているシートにゆっくりと腰を下ろした。
ガタン、と重い音を立てて電車が動き出す。
窓の外を流れる駅のホーム。
その片隅のカフェには、今頃まだ何も知らずに文庫本を開いている『オリジナルの彼女』がいるはずだ。
自分が今、全く同じ顔をした人間によって追っ手から逃げるカモフラージュに使われているなど、夢にも思っていないだろう。
「ふふ……」
シアーなストッキングに包まれた細い脚を上品に揃え、俺はボウタイブラウスの胸元を軽く整えた。
ツバキの引き締まった身体とは違う、華奢で守ってあげたくなるような柔らかい肉体。
その内側に秘められた怪盗クロウの冷徹な知性と、追っ手を完全にあざ笑う絶対的な優越感が、胸の奥で甘い快感となって広がる。
(さて……電車を乗り継ぎながら、次の隠れ家となる街を目指すとするか)
ガタンゴトンと心地よい揺れに身を任せながら、俺は可憐なお嬢様の澄んだ瞳を輝かせ、窓の外の広大な景色を見つめた。

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ガタン、ゴトン――。
ローカル線独特の規則正しい振動が、車両全体を心地よく揺らしている。
車内は日中ののどかな空気が漂い、乗客の数もまばらだ。
窓から差し込む柔らかい陽光が、俺の膝元でふんわりと広がるラベンダー色のフレアスカートを鮮やかに照らし出していた。
(ふぅ、ようやく一息つ行けるか)
俺はシアーなストッキングを履いた細い脚を上品に揃え直し、背もたれに深く体を預けた。
警察署の女子トイレから始まり、パトカーでの逃走、多目的トイレでの着替え、満員電車での痴漢回避、ビジネスホテルでの極秘ファイルの処理とオナニー、そして長瀬ツバキの姿を使ったターミナル駅への脱出――。
目まぐるしく変化する状況の連続だったが、俺はすべてを完璧にコントロールし、追っ手を完全にあざ笑う形でこの『お嬢様』の身体を手に入れたのだ。
自分の胸元にそっと手を当てる。
ボウタイブラウスの柔らかな生地越しに伝わるのは、ツバキの健康的で硬質な肉体とは打って変わった、華奢で儚げな体温だ。
下着はツバキから奪ったシンプルなグレーのスポーティなものを着けたままだが、サイズ感が近いせいか、この華奢な体の胸やお尻にも不思議なほどピタリと吸い付くようにフィットしている。
(見た目は可憐で清楚なお嬢様なのに、身につけている下着は警察官のスポーティなインナー……このギャップも、なかなか唆るものがあるな)
可憐な見た目に似合わぬ不敵な笑みが、漏れそうになるのを必死で抑え込む。
その時だった。
「あの……すみません」
不意に、頭上から少し緊張したような若い男の声が降ってきた。
(ん……?)
薄く目を開けると、俺のシートの前に一人の男子大学生風の男が立っていた。
手には文庫本を抱えている。
顔を少し赤らめ、おどおどとした様子で俺を見下ろしていた。
「えっ……? はい、何か……?」
俺は瞬時に『可憐なお嬢様』のスイッチを入れ、首をかしげながら、おっとりと甘い声で問いかけた。
澄んだ瞳を少し見開いて上目遣いを作る。
それだけで、男の顔が一気に真っ赤に染まった。

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「あ、あの! 差し出がましいかもしれないんですけど……その、バッグのファスナーが開きっぱなしになっていて、中のものが落ちそうだったので……」
「えっ……? あら、本当……!」
見れば、肩に提げていたトートバッグのサイドジッパーが半分ほど開いており、ツバキの財布の端が覗き見えそうになっていた。

「まあ……教えてくださって、ありがとうございます。全然気づきませんでした……」
俺は胸元に小ぶりな手を添え、心から恐縮したように胸を撫で下ろした。
可憐なお嬢様が見せる、無防備で隙のある仕草。男の視線が、俺の華奢な首筋やボウタイブラウスの胸元、そして膝から覗くストッキングの脚へと吸い寄せられるように釘付けになるのが手に取るように分かった。
(くすっ……見ている見ている。男って生き物は、ほんと単純だな)
中身が警察から逃げおおせ、全国を股にかける大怪盗クロウであることなど夢にも思わず、目の前のみおしとやかな美女に鼻の下を伸ばしている。
この圧倒的な視線の支配感。
男たちの欲望を一方的に浴びながら、それを完璧に騙し切っている快感が、背筋を甘くゾクゾクと駆け抜けた。
「い、いえ! 無事でよかったです! あの、もしよければ、隣……座ってもいいですか?」
男は舞い上がった様子で、俺の隣の空席を指差した。
普通なら警戒して断る場面かもしれない。だが、俺は可憐な微笑みを崩さないまま、優しく頷いてみせた。
「ええ、どうぞ。お礼と言ってはなんですけど、お隣へどうぞ」
「あ、ありがとうございます……!」
男が緊張した面持ちで隣に腰を下ろす。
触れ合いそうなほど近い距離感。男から漂う緊張した汗と洗剤の匂いを感じながら、俺は膝の上で両手を上品に重ねた。
(さあて……次の乗り換え駅までの退屈しのぎに、このお兄さんを少しだけ『翻弄』してやるとするか)
おっとりとしたお嬢様の仮面の下で、怪盗クロウは淫らで不敵な笑みを深く深く潜ませていた。

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隣に腰掛けた男子学生は、背筋をピンと伸ばしたまま固まっている。
彼から漂うガチガチの緊張感が伝わってきて、俺は密かに可憐な口元を緩めた。
「あの……お兄さんも、読書がお好きなんですか?」
おっとりとした声で問いかけると、彼は弾かれたようにこちらを向き、手にした文庫本を大切そうに胸元で抱え直した。
「あ、はい! 旅先で本を読むのが好きで……。君も、さっき駅の近くで本を読んで……あ、いや、すみません! 盗み見てたわけじゃないんです!」
「ふふ、いいんですよ。本が好きな方に悪い方はいませんもの」
上目遣いで優しく微笑むと、彼はさらに顔を赤くして「そ、そうですか……」と視線を泳がせた。
電車はガタンゴトンと一定のリズムを刻みながら、長閑な田園風景の中を走り続けている。
警察の追っ手、張り巡らされた検問網、女子トイレでの極秘ファイルの奪取——ほんの数時間前まで繰り広げられていた命懸けの攻防が、まるで遠い異国の出来事だったかのように思えるほど、車内には平和で穏やかな時間が流れていた。
(完璧だな……)
手に入れた機密情報はすでにポストへ投函し、手元には十分な逃走資金。
そして、警察の捜査網を完全に攪乱する完璧な容姿。
俺は膝の上のフレアスカートを静かになでながら、車窓の遠くを見つめた。
男たちの視線を集めるほどの美貌と可憐な佇まいを武器に、誰にも怪しまれることなく、ただの「日常」に溶け込んでいく。
追う者たちが血眼になって幻影を追いかけている間、俺はこの穏やかな電車の揺れに身を任せ、次の目的地へと向かうだけだ。
「……次の駅、もうすぐですね」
男子学生が少し名残惜しそうに呟いた。
ホームが近づき、電車のスピードがゆっくりと落ちていく。
「ええ。親切にしていただいて、ありがとうございました」
俺は可憐な微笑みを浮かべながら立ち上がり、上品に会釈をした。
開いたドアからホームへと一歩を踏み出すと、心地よい季節の風がスカートの裾をふわりと揺らした。
雑踏の中に紛れ込みながら、怪盗クロウは静かに次のステップへと足を進めた。

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ホームを降り立ち、混雑する駅の雑踏へ溶け込んだ俺は、そこからさらに綿密な逃走ルートを辿った。
乗り継ぎの過程で、リスクを極限まで減らすために『変身』を重ねた。
あの可憐なお嬢様から、途中のパーキングエリアで仕留めたボーイッシュな運動着の大学生へ。
さらに乗り換えた高速バスのターミナルで、品のある清楚な主婦へ。
そして最後——セーフハウス近くの商業施設で狙いを定めた、洗練された知的な女性へと乗り換えた。
――カチャリ。
重厚な防音ドアの鍵を閉め、俺はようやく息を吐いた。
そこは、俺が事前に偽名で確保していた、都会の喧騒から離れたマンションの一室。怪盗クロウの隠れ家(セーフハウス)だ。
「……ふぅ。これで本当の『安全圏』だな」
俺は全身鏡の前に立ち、現在の自分の姿を見つめた。
そこに映っているのは、落ち着いたベージュのセンタープレスパンツに、くすみブルーのシルクブラウスを合わせた、スタイリッシュなショートカットの美人OLだ。
シュッと引き締まった顎ラインと知的な目元、そしてパンツ越しにもわかる、程よく上がった小ぶりで美しいヒップライン。
3回の連続変身を経て辿り着いたこの肉体は、大人の洗練された魅力に満ちており、都市の雑踏に溶け込むにはこれ以上ない『完璧な皮膚』だった。
パンプスを脱ぎ捨て、素足でフローリングを踏みしめながら、リビングのソファへ深々と身体を沈める。
テーブルの上のリモコンを取り、壁掛けの大型テレビの電源を入れた。
画面に映し出されたのは、緊急ニュースのニュース速報だった。
『――続いてのニュースです。本日未明、警察署内で発生した重要書類の紛失事案について、先ほど警察署長による緊急記者会見が行われました』
画面の中では、黒いスーツを着た警察署長と幹部たちが、無数のフラッシュを浴びながら深々と頭を下げていた。
『「市民の皆様の信頼を損ねる事態となり、誠に申し訳ございませんでした。現在、全力を挙げて原因の究明と、紛失した資料の回収にあたっております」……』
神妙な面持ちでマイクに向かい、通り一辺倒の謝罪の言葉を述べる署長。
テレビの前の俺は、ショートカットの端整な顔に、心底おかしそうに不敵な笑みを浮かべた。

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「くすっ……『紛失』ねぇ。相変わらず、身内の不祥事を覆い隠すのがお上手なことで」
彼らはまだ、機密ファイルが「ただ紛失しただけ」という体裁を取り繕おうとしている。
怪盗クロウに侵入され、変装能力で署内をかき乱され、まんまと極秘情報を奪われたなどと口が裂けても言えないのだ。
だが、俺は知っている。
あのファイルに記されていた、警察上層部と政治家たちによる悪質な裏金作りと捏造の証拠を。

「可哀想に。今夜あたりには、俺が投函したあのレターパックが、大手週刊誌の編集部に届くはずだ……」
デスクの上の缶ビールを開け、喉を鳴らして一口煽る。
冷えたアルコールが、大人の女の喉を心地よく潤していく。
「ただの『書類紛失』で済んでいるのは、今この瞬間だけだぞ、署長さん。明日、そのネタが爆弾となって世の中に公開されたら……こんな謝罪会見くらいじゃ、到底収まりがつかないぜ?」
テレビの中で汗をぬぐう幹部たちの顔を見つめながら、俺はベージュのパンツに包まれた長くて美しい脚を組み替えた。
逃走劇は幕を閉じ、俺の勝利で終わった。
あとは、この洗練された美人OLの姿で最高級のワインでも開け、明日巻き起こるであろう警察組織の大炎上を、高みの見物と洒落込むだけだ。
怪盗クロウは、静かなセーフハウスの中に、甘く淫らな勝利の吐息を響かせた。

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セーフハウスの広いベランダから見下ろす街並みは、朝の柔らかい日差しに包まれていた。
「ふぁ……よく寝たな」
ベッドから起き上がり、全身鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは、数日前のショートカットのOLとも違う、また新しい『日常の皮膚』だ。
艶やかなダークブラウンのセミロングヘアが、滑らかな肩のラインにハラリと落ちている。
白のシルクのキャミソールと、裾が広がるルーズな部屋着のパンツを纏った姿は、一見すると休日の朝を優雅に過ごす都会の美女そのものだ。
だが、そのスタイルは『かなり』いい。
キャミソールの胸元からは、ふっくらとした豊かな双丘が覗き、キュッと引き締まったウエストから、女らしく豊かなカーブを描くヒップラインへと流れている。
手足もすらりと長く、どんな服を着ても様になる抜群のプロポーションだった。
「怪盗に『休日』なんて言葉はおかしいかもしれないが……まあ、オフの日くらいあっても罰は当たらないだろ」
ダークブラウンの髪をかき上げ、鏡の中の自分にニヤリと可憐で妖艶な笑みを投げかける。
リビングへ戻り、大型テレビのスイッチを入れた。
画面には、連日世間を賑わせているあのニュースが映し出されている。
『――警察組織の巨大な裏金工作と証拠捏造疑惑について、今朝発売の週刊誌が第二弾となるさらなる追及記事を掲載しました。提示された機密文書の写しには、現職幹部数名の署名が含まれており……』
画面の中では、リポーターが興奮気味にマイクを握りしめ、警察庁前で右往左往する幹部たちの狼狽した様子を伝えている。謝罪会見で「単なる書類紛失」でお茶を濁そうとしていたあの署長は、今やマスコミの集中砲火を浴びて青ざめていた。

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「くすっ……いいぞ、もっとやれ」
俺はソファに深く身体を沈め、艶やかな髪を揺らしながら喉を鳴らして笑った。
あの夜、俺がポストに投函した『極秘ファイル』は、狙い通り週刊誌の手に渡り、警察組織の腐敗を容赦なく暴き立てている。
そして、その裏で動いていたブローカー経由の「仕事の報酬」も、俺の暗号化口座へとしっかりと巨額の数字として振り込まれていた。
権力者の鼻を明かし、世間を大騒ぎさせ、懐には潤沢な資金が入ったのだ。
これ以上ないほど最高の気分だった。
「さて……せっかくの最高な休日だ。この極上の身体とたっぷりの報酬で、思いっきり贅沢な一日を楽しむとしようか」
俺はクローゼットを開け、このダークブラウンのセミロング美人に相応しい、洗練されたコーディネートを選び始めた。
深めのVネックが美しい黒のニットセーターに、ボディラインを美しく強調するマーメイドラインのロングスカート。
足元には上質なレザーのショートブーツを合わせる。
スタイル抜群なこの身体が着こなすと、街を歩くだけで誰もが振り返るような、圧倒的な大人の色気が完成した。
「よし、完璧だ」
高級な香水を首筋にひと吹きし、小さなブランドバッグを肩にかける。
怪盗クロウとしての緊迫したスリルも最高だが、こうして完璧な美女に成り代わり、優雅に街へ繰り出すオフのひとときもまた、格別の快感だった。
ホテルの最上階にあるロケーション抜群のブランチラウンジで贅沢な食事を愉しみ、その後は高級ブランド店が立ち並ぶメインストリートでショッピング。
すれ違う男たちがダラしなく視線を送り、女性たちが憧れと嫉妬の混じった視線を向けてくる。
全員が、この洗練された美女の中身が、警察を大パニックに陥れた天下の大泥棒だとは夢にも思っていないのだ。
「ふふっ……やっぱり、この『化かし合い』はバカバカしくて、最高に楽しいぜ」
優雅にショッピングバッグを揺らしながら、俺はダークブラウンの髪を風になびかせ、晴れやかな街の雑踏へと一歩を踏み出した。

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「はぁい、カメラ目線こちらにお願いしまーす!」
「手元、もう少し角度つけてもらえますか!?」
「最高です! めちゃくちゃ可愛いです!!」
無数のフラッシュが、バシャバシャと激しい音を立てて焚かれる。
レンズの群れが、一斉に俺の全身へと向けられていた。
ここは都内最大級のイベント会場で開催されている、大型コスプレイベントの屋上広場。
澄み渡る秋晴れの空の下、熱気と熱狂が渦巻くその中心に、俺――『怪盗クロウ』は立っていた。
「……ふふ、みんなそんなに焦らなくても、ちゃんと順番に撮らせてあげるわよ♡」
口元に手を当て、少し首をかしげながら、鈴を転がすような甘い声で囁く。
たったそれだけの仕客と微笑みで、取り囲む大勢のカメラマンたちから「うおぉっ!」「可愛い!!」「女神すぎる……!」と地鳴りのような歓声が上がった。
(見ている見ている。どいつもこいつも、鼻の下を伸ばしちゃって)
怪盗に休日なんてものはない――いや、正確に言えば『オフの日の遊び』すらも、俺にとっては極上のエンターテインメントであり、同時に冷徹な計算に基づく「訓練」だった。
若者のサブカルチャー、最新のトレンド、SNSのバズの法則、そして「今、世間がどんな女性像に狂狂し、どうすれば人の視線と意識を完全に支配できるか」。
これらを肌感覚でアップデートしておくことは、どんな変装術よりも鋭い「武器」になる。万が一、次なる潜入任務で若い世代のコミュニティやイベント会場に紛れ込む必要が出た際、この「現場の空気感」を知っているかどうかで勝敗が分かれるのだ。
だが……今回の理由はそれだけじゃない。
何よりの理由は、俺自身の「趣味」と「探求心」だった。
(それにしても……我ながら、今回選んだ『この身体』は最高に当たりだな)
俺は心の中で、自分自身の全身のラインを密かに自賛した。
今日、俺が扮しているのは、今世界中で爆発的な人気を誇るスマホゲームの看板キャラクター――爆乳で小悪魔的な魅力を持つ、グラマラスな魔法銃士のヒロインだ。
胸元が極限まで大胆に開いたドレス風のカッティング、キュッと締め上げられたコルセット、そして太ももを露わにするハイレグ状の裾。
この衣装を寸分の狂いもなく、完璧な二次元のプロポーションで着こなすために、俺は数日前に街へ繰り出し、完璧な条件を満たすターゲットを探し出したのだ。
ターゲットに選んだのは、都内の有名フィットネスクラブに通う20代前半のグラビアモデル。
豊満で柔らかく、こぼれ落ちそうなほどの圧倒的なバスト。
それでいてウエストはキュッと引き締まり、上向きのプリッとした肉厚なヒップと、スラリと伸びたしなやかな美脚。
まさに「次元を超えて飛び出してきた」としか思えない、奇跡のような爆乳グラマラスボディだった。
コスプレ衣装の胸元を押し上げるように主張する、圧倒的な重量感。
体を少し揺らすだけで、フリルの隙間から豊かな双丘がぷるんと揺れ、衣装の摩擦が敏感な肌を心地よく刺激する。
スポーティなツバキの体も、清楚な結衣のモデル体型も良かったが、この「圧倒的な暴力的な色気」を全身で纏う快感は、男としても怪盗としても、脳が溶けそうなほどの優越感を与えてくれた。

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「あのっ! コスプレイヤーさん! お名前聞いていいですか!?」
「Xのアカウント教えてください! 今、トレンドに写真上がってますよ!!」
カメラマンの一人が、興奮で声を上ずらせながらスマホの画面を掲げて見せてきた。
そこには、ほんの30分ほど前に別の参加者が撮影して投稿した俺の写真が載っていた。
『【悲報】コスプレ会場に本物のヒロインが降臨してしまう』
『再現度1000%。胸の迫力がやばすぎる』
『この神コスプレイヤー誰!? 拡散希望!!』
リポスト数はすでに数万を超え、いいねのカウントが勢いよく跳ね上がり続けている。いわゆる「超絶バズり」状態だ。
「あら……? 私、そんなに話題になっちゃってるの?」
俺は魔法銃の小道具を胸元に抱きかかえるようにして、少し困ったような、だが挑発的な上目遣いでカメラマンたちを見つめた。
豊満な胸がぎゅっと小道具に押し潰され、さらに深く淫らな谷間が強調される。
「「「ひぇっ……!!!」」」
囲んでいたカメラマンたちから、悲鳴に近い歓声が上がった。シャッター音がさらに激しさを増し、まるでマシンガンの連射のように響き渡る。
「やばい、笑顔が神すぎる……!」
「ポーズ変えて! お願いします、少し後ろ向いてもらえますか!?」
「ふふ、後ろ向きね? いいわよ……こうかしら?」
俺はゆっくりと背を向け、腰をくの字に軽くくねらせた。
コルセットで絞られた細い腰から、ハイレグの裾から覗くプリッとした豊かなヒップライン、そしてシアーな黒ストッキングに包まれた太ももが、カメラマンたちの眼前に晒される。
「くっ……!」
背中を向けるポーズをとった瞬間、自分自身のヒップと太ももに衣装の生地が食い込む感触が伝わってきた。
このグラマーな肉体は、ほんの少し体を動かすだけで、下着や衣装越しに独特の甘い締め付け感と熱を生み出す。
(ふぅっ。この体、見た目が派手なだけじゃなくて、感度も信じられないくらい良いんだよな……)
大勢の男たちの熱い視線を全身に浴び、その欲望の視線が自分の弾力ある肌に突き刺さるたびに、背筋をゾクゾクとするような甘い痺れが駆け抜ける。
中身が天下の大泥棒『怪盗クロウ』であることなど誰も知らない。
彼らはただ、俺が提示した「完璧な美女の肉体」という幻影に狂喜し、群がっているのだ。この圧倒的な支配感。
「おい、あそこなんか凄い人だかりだぞ!?」
「マジで!? 誰か有名人の囲み?」
「いや、なんかめちゃくちゃハイクオリティな一般のコスプレイヤーらしい! 行ってみようぜ!」
バズったSNSの投稿を見た参加者たちが、噂を聞きつけて広場へと続々と押し寄せてきた。
最初は十数人程度だった囲みが、あっという間に数十人、百人を超え、俺を中心にして巨大な人間の二重三重の輪が出来上がっていく。
「警備員さん来ちゃうかも……! 大丈夫ですか!?」
「平気よ。せっかくみんなが会いに来てくれたんだもの、もう少しだけ楽しんでいってね♡」
俺はグラマラスな胸を大きく張って深く息を吐き、キャラクターになりきった甘く小悪魔的なセリフを囁いた。
熱気は最高潮に達していた。

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「撮影されるの、本当は少し恥ずかしいんだけど……みんながこんなに喜んでくれるなら、私、もっと頑張っちゃおうかな?」
俺は両手を頬に当て、恥ずかしがる仕草をしてみせた。
豊満な胸が上下に揺れ、集まった観客たちから「おおおっ……!」と地響きのような吐息が漏れる。
(クスクス……単純だなあ、男ってやつは)
これだけの大人数を引きつけ、たった一つの仕草、たった一言のセリフで翻弄する。
これは怪盗として、大観衆の目を引きつけてターゲットから注意を逸らす「デコイ(とり)」の極上な訓練でもあるのだ。
もし将来、何千人という群衆の中で警察を撒かなければならない局面が来ても、この「人を惹きつける技術」があれば、簡単に現場をコントロールできる。
「あのっ! 最後に一枚だけ、決めポーズお願いできますか!?」
前列のカメラマンが、汗を拭いながら必死の顔で叫んだ。
「ええ、いいわよ。じゃあ……とっておきの、いくわね?」
俺は脚を少し開き、魔法銃の小道具をカメラに向けながら、体を捻って胸とヒップを同時に強調する、キャラクターの「ウインク・勝利ポーズ」を決めた。
「『ターゲット、ロックオン♡ 私に撃ち抜かれたいのは……だぁれ?』」
完璧なキャラクターの声色と、甘く淫らな笑み。
バシャシャシャシャシャシャッ!!!!!
広場全体が白い光に包まれるほどのフラッシュの嵐。
「かわいすぎるーっ!」「撃ち抜かれましたー!!」「神様ありがとう!!」と絶叫が響き渡り、もはやちょっとしたライブ会場のような狂乱状態となっていた。
「はい、そこまで! 混雑して危険ですので、一度撮影を中断してください! 通路を開けてください!」
案の定、遠くから笛を鳴らしながら警備員たちが駆け込んできた。
あまりの人の多さに、イベントの運営が動き出したのだ。

「あら、警察……じゃなくて、警備員さんが来ちゃったわね」
俺はクスリと可憐に笑うと、魔法銃を小道具の袋に収め、集まった大勢のファンに向かってしとやかに手を振った。
「みんな、素敵な写真をたくさん撮ってくれてありがとう! またどこかで会えたら、可愛く撮ってね♡」
「ありがとうーっ!」「お疲れ様でしたー!」「名前教えてー!」
惜しみない拍手と歓声に見送られながら、俺はグラマラスな身体の裾をふわりと揺らし、人混みをすり抜けて更衣室エリアへと歩き出した。

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更衣室へと続く静かな裏通路に入ると、俺はようやくふぅっと甘い息を吐き出した。
「はぁ……楽しかったぜ」
キャラクターのおっとりした口調から、怪盗クロウとしてのぶっきらぼうで妖艶な地声に戻る。
自分の豊かなバストを、両手で下から優しく持ち上げるように揉んでみた。
衣装越しに伝わる、モチモチとした柔らかい弾力と温もり。
「大勢の視線を浴びて昂ぶったせいか、この体……また少し熱くなってきやがったな」
首筋にうっすらと浮かんだ汗を指先で拭い、ペロリと舐める。
大人の女の香水と、グラビアモデルの肌の甘い匂いが混ざり合い、濃厚な快感を漂わせていた。
スマホを取り出して画面を見ると、Xのトレンド1位には『#神コスプレイヤー』『#奇跡の爆乳魔法銃士』のワードが堂々と鎮座していた。俺の写真がタイムラインを埋め尽くしている。
警察署を大混乱に陥れ、組織の裏金を暴いて世間を騒がせた大怪盗が、休日にコスプレ会場で最高峰の美貌を披露し、ネット上を大バズりさせている。
この滑稽で、最高にスリリングな事実。
「警察の連中がこれを見たら、どんな顔をするだろうな……? まさか自分たちが血眼になって探しているクロウが、イベント会場でアイドル扱いされてるなんて夢にも思わないだろうぜ」
鏡に映るグラマーな自分の姿に向かって、俺は不敵で淫靡な笑みを浮かべた。
今回は『若い文化の吸収と、群衆の視線誘導の訓練』という名目の休日だったが、実に実りのある、最高のオフになった。
この身体の感触をもう少し堪能したら、次は更衣室で別の『一般客の女性』に声をかけ、また新しい姿へと静かに乗り換えるとしよう。
「さて……次はどんな『新しい皮膚』に着替えて、どんな事件を起こしてやろうか」
怪盗クロウは、グラマラスな胸元を軽く整えながら、次なるスリルに満ちた獲物を求めて、妖しく可憐に微笑むのだった。



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