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/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
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8a537b07 No.4291

192c9a9a No.4297

その日、駅の雑踏はいつもより騒がしく感じられた。俺はただ、日常の倦怠から逃れる何かを求めて、無目的に歩いていた。
下りのエスカレーターに乗ろうとしたその時、前を歩く女性の背中が目に飛び込んできた。
黒い長袖のトップスに、身体のラインを強調する白いタイトスカート。
足元は白のハイヒール。後ろ姿だけで、洗練された都会の女性だと分かった。彼女は凛として、エスカレーターのステップを一段ずつ上がっていく。
俺の心臓が、ドクンと大きく波打った。
(……決めた)
それは唐突な、けれど確固たる決意だった。
以前から少しずつ試していた、あの『TSF(転生・性転換)憑依術』を、この女性に試してみよう。
俺は精神を集中させ、指先から自身の魂の、ほんの一欠片を切り離した。
不可視の、淡い光を帯びたエネルギー体。
それを、前を歩く彼女の背中目掛けて、静かに放った。
魂のカケラは、彼女の背中にスッと吸い込まれていった。
手応えは、あった。
(よし……!)
心の中でガッツポーズを決める。
だが、表面上、彼女には何の変化も見られない。当然だ。
この術の肝は、相手に気づかれずに、徐々に精神を浸食していくことにある。
確認のため、俺は小走りで彼女の横に並び、声をかけた。
「あの、すみません。ちょっとお聞きしたいんですが……」
彼女は足を止め、ゆっくりと振り返った。
駅の明るい照明の下、現れたのは、整った、けれど冷ややかな顔立ちだった。
彼女は俺を見ると、すぐに露骨な嫌悪感を表情に浮かべた。
眉をひそめ、唇を一文字に結び、目は「不審者を見る目」そのものだった。
「……何ですか? 警察、呼びますよ」
冷たい声が返ってきた。
俺はとっさに、「あ、いえ、何でもないです。人違いでした」と頭を下げて、その場を離れた。
心臓はバクバク言っていた。
(くそっ……失敗か)
本体である俺は、落胆した。
彼女の自我があまりに強すぎて、俺の魂のカケラは弾き出されてしまったのだと思った。
俺はそのまま、トボトボと駅の改札を出て、自分のアパートへと向かった。
――だが、本体の俺は、気づいていなかった。
あの時、不審者を見る目で俺を睨んだ彼女の、その心の奥底で。
俺の放った魂のカケラは、弾き出されるどころか、彼女の精神の核へと、深く、深く潜り込んでいたのだ。

192c9a9a No.4298

(ふふ……馬鹿な本体め)
ここからは、彼女の中に生まれた、新しい『俺』の意識の独白だ。
(あの『不審者扱い』の表情は、完璧だったな。これで本体は、完全に『失敗した』と思い込んだはずだ。……すべては、計画通り)
そう、この『失敗』こそが、俺の、真の『TSF憑依計画』の第一段階だったのだ。

本体に成功を悟られれば、すぐに精神の主導権を奪い合わなければならなくなる。
それは、憑依が完了していない今の段階では、非常に危険だ。
だからこそ、俺は自身の分身であるカケラに、あえて『不審者として振る舞い、拒絶される』という演技を求めたのだ。
本体を騙し、無防備な状態で、彼女の精神を内側から完全に掌握する。
これこそが、俺の『完璧な憑依』の策略だ。
「……何、今の男。気持ち悪い」
彼女は小さく毒づきながら、また駅の雑踏へと戻っていく。
その足取りは、先ほどと変わらず凛としている。
だが、その内側では。
俺の魂のカケラが、彼女の精神を、少しずつ、けれど確実に、侵食し始めていた。
彼女の記憶、彼女の感情、彼女の思考回路……。
それらが、俺の意識と混ざり合い、少しずつ上書きされていく。
電車に揺られている間、彼女はふと、自分がいつもとは違う、奇妙な感覚に襲われていることに気づいた。
(あれ? 私、なんで今、左手に鞄を持ってるんだっけ? いつも右なのに。それに、なんだか、急にラーメンが食べたくなってきた。私、ラーメンなんて全然好きじゃないのに)
それは、俺の趣味嗜好が、彼女の意識に影響を与え始めている証拠だった。
彼女自身の自我は、まだその異変に気づいていない。
駅から自宅へと歩く夜道。
彼女の精神の侵食率は、すでに五十パーセントを超えていた。
(視界が、いつもより低い気がする。それに、このヒール、歩きにくいな。……早く家に帰って、靴を脱ぎたい)
それは、俺の身体感覚が、彼女の肉体と完全に同調し始めていることを意味していた。
彼女の歩き方は、無意識のうちに、俺の歩き方に似てきている。
カチャリ。
自宅のアパートのドアを開け、鍵を閉めた瞬間。
「……ふぅ、疲れた」
彼女の口から出たその声は、もう、以前の彼女の声ではなかった。
少し低く、どこか男性的で、けれど、彼女の身体から発せられる、不思議な魅力を持った声。
彼女は靴を脱ぎ、部屋の中へと入っていく。その足取りは、完全に俺のものだった。
(計画完了。……さて、俺の『新しい身体』を、じっくりと観察させてもらおうか)
部屋の隅にある、大きな姿見の前に立つ。
そこには、駅のエスカレーターで見かけた、あの洗練された女性が立っていた。
黒いトップス、白いスカート、白いハイヒール。
けれど、鏡に映るその表情は、先ほどの『不審者を見る目』ではなく。
どこかニヒルで、自信に満ち溢れた、俺の、新しい『俺』の笑みだった。
「……完璧だ。これなら、誰にも疑われない」
俺は、自分の身体(今は俺の身体)を撫で回しながら、声高らかに笑った。
本体の俺は、今頃自分の部屋で、敗北感に浸っていることだろう。
まさか、自分が騙されていたとも知らずに。
悪いな、本体(俺)。
この『彼女』の人生は、今日から、俺が、完全に俺のものとして、満喫させてもらうぜ。

192c9a9a No.4299

さて、身体の完全なコントロールは手に入れた。
だが、これだけではまだ「完璧」とは言えない。
彼女の人間関係、職場、パスワード、日々の習慣。
それらを引き継がなければ、明日からの生活ですぐにボロが出る。
「まずは、この体の『記憶』をいただくとするか」
俺の脳裏には、かつて読み漁ったTSF同人誌の知識がフラッシュバックしていた。
(たしか、よくある王道パターンだと『強烈な快感、あるいは未知の感覚による脳へのショック』が、肉体に眠る記憶のロックを解除する鍵になるんだよな)
俺はニヤリと笑うと、タイトスカートのジッパーに手をかけた。
ブラウスのボタンを外し、スカートを滑り落とす。
現れたのは、駅で見かけたクールな印象とは裏腹な、黒と白のコントラストが目に鮮やかなランジェリーだった。
繊細な黒いレースがあしらわれた白い生地は、彼女の透き通るような肌をいやらしく、かつ上品に引き立てている。
(外見は堅物そうなのに、下はこんなセクシーなものを身につけていたとはな。たまらんギャップだ)
俺は全身鏡に映る、下着姿の自分の――いや、「新しい俺」の姿をじっくりと観察した。
引き締まったウエストから、柔らかな曲線を描くヒップ。
そして、黒と白のブラジャーに窮屈そうに収まる、豊かな膨らみ。
ゴクリ、と無意識に喉が鳴った。
俺は両手をゆっくりと持ち上げ、その胸の膨らみを、下からそっとすくい上げるように揉み上げた。
「……っ!?」
その瞬間、指先から伝わる圧倒的な『柔らかさ』と『重み』、そして胸側から脳へと逆流してくる『触られている』という強烈な未知の感覚が、バチバチと火花を散らして神経を駆け巡った。
男の身体では絶対に味わえない、甘く痺れるような感覚。
それが脳のキャパシティを一瞬でオーバーフローさせ、強烈なスパークを引き起こす。
――バツンッ!
頭の中で、何かのストッパーが弾け飛ぶ音がした。
同時に、目の前が真っ白になり、圧倒的な情報量が怒涛の勢いで脳内に流れ込んでくる。

名前は、結城 凛(ゆうき りん)。26歳。
職業は、都内のIT企業に勤めるUIデザイナー。
趣味は、深夜にこっそり食べる激辛ラーメンと、休日のヨガ。
現在の悩みは、直属のプロジェクトマネージャーがやたらと食事に誘ってくること。
そして、この黒と白のランジェリーは、先週末に「気合いを入れるため」に買ったばかりのお気に入り――。


「はぁっ、はぁっ……!」
数秒か、あるいは数分か。
情報の波が収まった後、俺は鏡に手をつき、荒い息を吐いていた。
「成功、だ。全部、思い出した……いや、『俺の記憶』になった」
鏡に映る結城凛は、汗ばんだ肌と少し潤んだ瞳で、艶やかな笑みを浮かべている。
同人誌の知識も捨てたもんじゃない。
あの強烈な感覚のショック療法は見事に功を奏し、俺の魂は結城凛の脳髄と完璧にリンクを果たしたのだ。

「明日からは、俺が『結城凛』として完璧に生きてやるよ。ウザい上司も、この美貌と俺の計算高さで上手くあしらってやるさ」
胸の谷間を指でなぞりながら、俺は悪女のように微笑んだ。
本体の俺(アイツ)は今頃、この極上のボディと生活を逃したことも知らずに眠っているのだろう。

192c9a9a No.4307

記憶がリンクしたことで、脳裏にある「特定の情報」が鮮明に浮かび上がってきた。
凛が誰にも言えない秘密として、ベッド脇のサイドテーブルの奥深くに隠していた小さなピンク色のローター。
「へえ、こんなものを隠し持っていたとはな……」
引き出しの奥から取り出したそれを手に取り、スイッチを入れると、指先に心地よい微振動が伝わってきた。
鏡の中の自分——いや、凛の瞳は、どこかトロリと熱を帯びている。黒と白のブラジャーからはみ出た胸の先端は、すでに自覚症状のようにキュッと硬く尖っていた。
「試してみるか。凛の『お気に入り』の感覚を」
先端に静かにローターを押し当てた瞬間、全身を雷が駆け抜けたような強い快感が弾けた。
「ん……ッ!? ……ぁっ……」
男の時には想像もつかなかった繊細で甘い刺激が、脳髄を痺れさせていく。
あまりの心地よさに、思わず可愛らしい喘ぎ声が漏れそうになるが、俺は慌てて口元を細い腕で覆った。
ここはアパートだ。
隣の部屋にこの声が聞こえたら、いくら完璧な美女でも台無しになってしまう。
(くっ……声、出ちゃいそうだ……ッ。でも、ダメだ!)
歯を食いしばり、必死に声を押し殺しながら、快感の波に身を任せる。
声を我慢すればするほど、背筋を駆け上がるゾクゾクとした感覚は増幅していった。
俺の男としての意識と、凛としての肉体感覚が完全に溶け合い、やがて視界が真っ白になるほどの強い波が押し寄せた。
「んむぐぅ……ッ……!」
身体が小さく跳ね、荒い息をつきながら、俺は鏡の前でへたり込んだ。
汗ばんだ肌と、赤らんだ頬。鏡に映るその姿は、どこからどう見ても快感に溺れた一人の艶やかな女性そのものだった。
「ふぅ、ふぅ……やばいな、これ……癖になりそうだ」
火照った体を静めるため、俺は使用済みの下着を脱ぎ捨て、クローゼットへと向かった。 観音開きの扉を開け、下着がしまわれている引き出しの中には色とりどりのブラとショーツが綺麗に並べられている。
「さて、明日はどれを着て出かけるとするかな」
シルクの質感、繊細なレース、シックなネイビーに可愛らしいピンク。
これまでは「見る側」だった女性下着を、これからは「自分で選んで身につける」という新しい楽しみ。
胸の奥がキュンと鳴るような独特の高揚感を覚えながら、俺は指先でゆっくりと下着を物色し始めた。

192c9a9a No.4308

指先がクローゼットに並ぶレースの上を滑る。
脳内の記憶を検索すると、「ふだんの凛なら、迷わず使い勝手の良いシンプルな黒を選ぶ」という答えが返ってきた。
無難で洗練された、彼女らしい合理的な選択だ。
だが、今の俺はただの凛じゃない。
「ふふ、せっかくの新しい人生なんだ。少し冒険したってバチは当たらないだろ」
俺が手にとったのは、大人っぽい繊細なレースが施された淡いピンクのランジェリー。
記憶を手繰り寄せると、先週末に彼女が『ここぞという時の勝負下着』として、少し緊張しながら購入したものだった。
結局使う機会がないまま眠っていたそれを、俺が最初に解禁してやるのだ。
「明日はこれを着て出社か……想像するだけでワクワクしてくるな」
勝負下着を脱衣所にセットすると、そのままバスルームへ向かった。
洗面所の鏡の前に立ち、凛の記憶が教えてくれる通りのルーティンを始める。
クレンジングオイルをポンプから手にとり、なめらかな指つきで顔全体になじませていく。
じわじわと浮き上がるファンデーションやアイライン。
ぬるま湯で丁寧に洗い流すと、鏡の中には、化粧を落としてもなお透明感あふれる、無防備で美しい素顔が現れた。
(すっぴんでこのクオリティかよ……本当にどこをとっても極上だな)
髪をクリップでサッとまとめ、浴室のドアを開ける。
温かい湯気と、凛が愛用しているフローラルハーブの甘い香りが脱衣所まで溢れ出してきた。
シャワーを浴び、泡立てたスポンジで身体を丁寧に洗っていく。
指先が滑らかな鎖骨から豊満な胸、そして深くくびれた腰のラインを辿るたび、先ほどのローターの余韻が微かに背筋をくすぐった。
自分自身を洗っているはずなのに、どこか他人の身体を愛撫しているような、甘い錯覚が抜けきらない。
「明日の朝のメイク、ちゃんと記憶通りに再現できるかな……まあ、身体が覚えてるだろ」
湯船に肩まで浸かり、火照った身体をじんわりとほぐしながら、俺は明日から始まる「結城凛としての日常」に思いを馳せて、不敵にニヤリと笑った。

192c9a9a No.4309

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192c9a9a No.4313

ピピピと電子音が鳴り響く前に、俺の意識は覚醒した。
肌に触れるシーツの滑らかさと、胸元に感じる心地よい重み。
目覚めた瞬間、自分が極上の美女「結城凛」になっている事実が、甘い快感となって脳を刺激する。
「さて……勝負の初出勤と行きますか」
まずは洗面所の鏡の前に立ち、スキンケアとメイクに取りかかった。
正直、男だった俺に女性の複雑なメイク技術なんて分かるはずもない。
だが、不安は一瞬で吹き飛んだ。
化粧水を肌に馴染ませ、ファンデーションを滑らせる指先は、まるで熟練の職人のように滑らかに動く。
記憶と体が完璧にリンクしているおかげで、アイラインの一筋、リップの塗り加減に至るまで、何の問題もなく完璧にこなすことができた。
鏡の中に、透明感のある美しい素顔が、完璧なオフィス仕様の顔へと仕上がっていく。
部屋に戻り、いよいよ昨夜選んだあの淡いピンクの勝負下着を身につける。
「よし……こうやって、寄せて上げると」
ブラジャーのカップの中に手を差し入れ、脇や背中から肉をぐっと寄せ集める。
美しい谷間が強調され、胸のシルエットが劇的に変わる。指先に伝わる柔らかな感触に、思わず息が漏れそうになった。
続いて、繊細なストッキングに足を通す。
スーッと引き上げていく途中、ショーツのラインが股ぐりやお尻に少し食い込む不快感があった。
「あー……これ、女の奴らがよくやってるやつか」
記憶の通り、俺は履きかけたストッキングの中にすっと腕を滑り込ませた。
薄いナイロン生地のの内側に手を入れ、食い込んだショーツの生地を手際よく引っ張り上げて位置を調整する。
お尻の肉を包み込むように整えると、すっきりと収まりが良い位置に落ち着いた。
仕上げに、オフィス用のセミカジュアルなブラウスと、体のラインを程よく引き立てる膝丈のスカートを着用する。
姿見の前に立ち、全身をチェックした。
大きな鏡に映っていたのは――どこからどう見ても、洗練された都会の働く女性、普段の「結城凛」そのものだった。
隙のないメイク、上品で少しセクシーな服装、そして凛とした立ち姿。
外見も、仕草も、何一つ破綻していない。完璧な変装、いや、完璧な憑依だ。
(ふふっ……誰も、中身が入れ替わってるなんて気づきもしないだろうな)
鏡の中の凛が、薄く可憐な唇の端を少しだけ吊り上げて、不敵に微笑む。
黒のヒールに足を通し、玄関のドアを開けた。
カツン、と朝の廊下に硬いヒールの音が心地よく響き渡る。
会社に「新しい結城凛」を魅せつけるために、俺は颯爽と街へと踏み出した。

192c9a9a No.4314

駅に到着し、いつものように混雑する改札へと足を向ける。
カツン、カツンと硬いヒールの音を心地よく響かせながら歩いていると、改札の手前でふと奇妙な視線を感じて立ち止まりそうになった。
視線の先にいたのは――なんと、俺の「本体」だった。
昨夜、憑依に失敗したと思い込んで凹んでいたはずの俺の男の体だ。
ボサボサの髪にどこかくたびれた服を着て、改札の脇で手持ち無沙汰そうにスマホをいじっている。
だが、その目はチラチラとこちらに向いていた。そして、俺――いや、結城凛が近づくにつれ、その視線ははっきりと俺の全身に固定された。
(マジかよ……まだ諦めきれずに、ここで張り込んでたのか?)
本体の奴は、首を傾げながら穴が空くほどこちらを見つめてくる。
昨日の「冷たい拒絶」にどこか納得がいかず、術の手応えの残像を確かめたくて未練がましく待っていたのだろう。
(哀れな本体め。まさか目の前を歩く美少女の中身が、お前が切り離した魂に乗っ取られているとは夢にも思ってないだろうな)
俺は心の中でニヤリと笑いを噛み殺した。
動揺を一切顔に出さず、背筋をスッと伸ばして凛とした歩調を保つ。
目線はまっすぐ前方へ向け、本体の存在など最初から視界に入っていないかのように振る舞った。
徹底して「無関心な他人」を演じ切るのが最善策だ。
すれ違いざま、本体の視線が俺の胸元や、風に揺れる髪、そして今日のために仕込んだピンクの勝負下着が作る美しいシルエットに注がれるのが分かった。
すれ違いざまに漂うハーブの香水の香りに、本体が一瞬、ハッとしたように息をのむ気配が伝わってくる。
俺は完璧なスルーを決め込み、涼しげな顔のまま本体のすぐ横を通り過ぎた。
改札にICカードをタッチし、ホームへ向かうエスカレーターに乗る。
ちらりと見下ろすと、本体は改札の外で、俺の遠ざかる後ろ姿を悔しそうに、そしてどこか羨望の入り混じった目で見送っていた。
(悪く思うなよ、本体。お前を出し抜いて手に入れたこの極上の体で、俺はこれから会社に行って『結城凛』の人生を完璧に楽しんでくるぜ)
ホームに滑り込んできた電車のドアが開く。
俺は優雅な足取りで車内へと乗り込み、吊り革を掴んだ。
窓ガラスに映る自分――隙のないメイクと洗練された装いに身を包んだ「結城凛」と目が合う。
不敵な笑みをかみ殺しながら、俺はオフィス街へ向かう電車に揺られ始めた。

192c9a9a No.4316

乗車したのは、凛の記憶にある毎朝の定位置――女性専用車両だ。
周りを見渡せば、どこを見ても女性ばかり。
甘い香水の香りやシャンプーの匂いが微かに漂う空間に、俺も当然のような顔をして溶け込んでいる。
(誰も俺の中身が男だなんて、微塵も疑っちゃいないな)
窓ガラスに映る自分を見る。
洗練されたメイクに、勝負下着の上から着こなしたオフィスカジュアル。
周囲の女性たちと比べても頭一つ抜けたスタイルの良さに、密かな優越感が込み上げてくる。
誰一人として俺を不審に思う様子はなく、隣に立つ女性はスマホに夢中なままだ。
不意に、男だった頃の邪悪な好奇心が頭をもたげた。
一般車両に移って、この艶やかな肉体で男どもを惑わせたり、あるいは思わせぶりな隙を見せて誘惑してみるか――?
(いやいや、待て待て。そんな刺激的なお遊びは、まだ後にとっておけばいい)
今はまず、結城凛としての完璧な日常を手に入れ、この極上のボディをじっくりと噛みしめるのが先決だ。
焦ってボロを出す必要はどこにもない。
車内アナウンスが目的地の駅名を告げる。
吊り革を握る細くしなやかな指先と、綺麗にケアされたネイルを見つめながら、俺は口元に浮かびそうになる不敵な笑みを必死に噛み殺した。

69b2dc2d No.4358

#ご指摘ありがとうございました。

23df34ea No.4362

オフィスビルに到着し、凛の記憶が導くままに女性社員用の更衣室へ足を踏み入れた。
割り当てられた自分のロッカーを開け、通勤用のバッグを押し込む。
ふと周囲を見渡すと、室内にはすでに何人かの女性社員がいて、着替えや身だしなみ直しの真っ最中だった。
「あー、今日も外暑すぎ! もうブラの中まで汗かいちゃったよー」
「わかるー。私なんて駅からの数分でメイク溶けた気がするし」
男の気配が一切ない、女性だけの閉鎖空間。
そこには男社会では絶対にお目にかかれない、特有の「油断しきった空気」が充満していた。
制服のベストに着替えるためブラウスを無造作に脱ぎ捨てる者、ストッキングを履き直すためにスカートを限界までたくし上げている者。
かがんだ拍子にチラリと覗く色とりどりの下着や、深い谷間。
彼女たちは同性しかいない気安さからか、下着が見えていようが全く気にする様子がない。
(すげえ。女の更衣室って、本当にここまで無防備で大胆なのか)
男だった頃なら一瞬で鼻血を出して倒れそうな光景だが、今の俺の外見は完璧な『結城凛』だ。
誰一人として俺に不審な目を向ける者はおらず、俺も涼しい顔を崩さずに、内心でだけこの極上のシチュエーションをたっぷりと堪能した。
「さてと、俺も準備するか」
小さく呟き、ロッカーの扉裏についた鏡と向き合う。
通勤で少し崩れた髪を手ぐしでサッと整え、夏場特有のじんわりとした汗を清涼感のあるボディシートで拭き取った。
ひんやりとした制汗スプレーを手に取り、首筋から胸元のデコルテにかけてシューッと吹きかける。
(んっ……冷たくて気持ちいい。この香りも、すっかり俺の匂いって感じだ)
ブラウスの隙間から、今朝身につけたピンクの勝負下着のレースがわずかに覗く。
それを手際よく直し、最後に軽くリップを引き直して唇にツヤを与えた。
パチン、とロッカーの扉を閉める。
その小気味良い音が、俺の脳内スイッチをカチリと切り替えた。
(よし!ここからは完全に『仕事モード』だ。デキる女、結城凛の幕開けだな)
「あ、凛ちゃん! おはようー!」
気合いを入れた直後、ポンと肩を叩かれた。
振り返ると、同期の麻衣が人懐っこい笑顔で立っていた。
彼女もブラウスのボタンを胸元まで開けたまま、無防備な姿でメイク直し用のポーチを抱えている。
「おはよう、麻衣。今日も暑いね」
記憶から彼女のパーソナリティを引き出し、俺は淀みなく、いつもの凛のトーンで微笑み返した。
「ほんとそれ! 駅から歩くだけでサウナかと思ったよー。っていうか凛ちゃん、今日なんか雰囲気違くない? いつもより、こう……色っぽいっていうか、キラキラしてる!」
「そう? メイクを少し変えてみたからかも。それに、今日はちょっと気合いを入れたくて」
「えー! なになに、デート!? もしかして、例のウザいプロジェクトマネージャーの誘い、ついに根負けしてOKしちゃったとか!?」
「まさか。あんなおじさんの誘いに乗るわけないじゃない。ただの気分転換よ」
「あはは、だよねー! 凛ちゃんがあのオジサンに靡くわけないし! あ、そういえば聞いた? 営業の佐藤くんがさ、今度うちの部署の……」
麻衣の他愛のない社内ゴシップを聞きながら、俺は相槌を打ち、ふふっと上品に笑い声をあげた。
(完璧だ。長年付き合いのある同期でさえ、俺が中身ごと入れ替わっていることなんて欠片も気づいていない。むしろ『色っぽくなった』とすら感じている)
女同士のとりとめもない会話。香水と化粧品の匂い。
この刺激的で甘い日常が、今日から完全に俺のものなのだ。
「……ねえ凛ちゃん、聞いてる?」
「ええ、聞いてるわよ。それで、佐藤くんがどうしたの?」
俺は女友達との会話を心から楽しみながら、更衣室を出てオフィスへと向かった。

23df34ea No.4366

オフィスでの業務は、拍子抜けするほど完璧だった。
UIデザイナーとしての凛のスキルは、俺の思考と完全に同期していた。
マウスを滑らせ、キーボードを叩く細い指先は迷いなく動き、複雑なデザインツールもまるで長年使い込んだ手足のように自在に扱える。
(ふん、凛の奴、見かけによらずかなり優秀じゃないか。まあ、その優秀な頭脳もキャリアも、今は全部『俺』のものだけどな)
心地よい優越感に浸りながらサクサクとタスクをこなし、時計の針が定時の少し前を指した頃だった。
「お疲れ様、結城さん。今日も遅くまで頑張ってるねぇ」
背後から、ねっとりとした不快な声が降ってきた。
同時に、俺の右肩にポンッと無遠慮な男の手が置かれる。
記憶が即座に警告を発した。例のウザい直属のプロジェクトマネージャーだ。
(うわっ……キッツ)
記憶から引き出された女性としての嫌悪感と、俺自身の男としての生理的な拒絶反応が混ざり合い、背筋にゾワリと鳥肌が立った。
いつもなら、波風を立てないように愛想笑いを浮かべ、適当な理由をつけてやんわりと躱すのが「結城凛」の処世術だった。
だが、今日の俺は一味違う。
俺はタイピングする手をピタリと止め、ゆっくりとオフィスチェアを回転させてマネージャーを見上げた。
「……何かご用ですか?」
「いやね、この後の予定どうかなって。駅前に美味しいイタリアンの店を見つけたんだよ。最近、結城さんもプロジェクトで少しお疲れみたいだし、ここらでパーッとさ」
ニヤニヤと笑いながら顔を近づけてくるマネージャー。
俺は、肩に乗せられたその手を、あからさまに嫌そうな手つきでピシャリと払いのけた。
「えっ……?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、遠慮しておきます」
乾いた音が響き、マネージャーが間の抜けた声を漏らす。
俺は極限まで温度を下げた冷ややかな視線で、彼の目を真っ直ぐに射抜いた。
「私、仕事とプライベートは完全に分けたい主義なんです。それに――」
あえて少しだけ声を張り、周囲の席にも聞こえるようなトーンで言い放つ。
「業務に無関係なボディタッチは非常に不快なので、二度とやめていただけますか?」
周囲の空気が、一瞬ピーンと凍りついた。
隣の席の同僚たちが、キーボードを打つ手を止めて驚いたようにこちらをチラ見している。
いつもはおとなしく誘いを躱していた凛からの、予想外の強烈なカウンター。
マネージャーは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になり、みるみるうちに顔を真っ赤にして後ずさった。
「あ、あぁ……ご、ごめん。べ、別に他意はなかったんだ。そ、それじゃあお疲れ!」
周囲の冷たい視線にいたたまれなくなったのか、逃げるように自分のデスクへと去っていく背中を見送りながら、俺は内心で腹を抱えて笑った。
(ひっひっひ、ざまぁみろ。極上の美女に見下されて、大勢の前で恥をかく気分はどうだ? あー、最高にスッキリしたぜ)
それから数十分後。
定時を告げるチャイムが社内に鳴り響いた。
俺はやり終えたデザインデータを保存し、PCをシャットダウンする。
「お先に失礼します」
周囲に美しく響く凛の声で挨拶を済ませ、デスクを立つ。
同僚の麻衣が「凛ちゃん、さっきの凄かったね! スッキリしたー!」と小声で親指を立ててきたので、ふふっと上品なウインクで返しておいた。
更衣室でロッカーを開け、通勤用のバッグを肩にかける。
今日の仕事はこれでおしまいだ。ウザい上司も完膚なきまでに撃退し、業務も完璧にこなした。体調も気分も絶好調。
(さてと。最高の気分のまま、この極上ボディで少し夜の街をブラついて帰るか。それとも、まっすぐ家に帰って、昨日の続きで『自分』の体をたっぷり可愛がってやるか……)
オフィスのエントランスを抜け、夕暮れの風が吹き抜ける街へと踏み出す。
ピンクの勝負下着に包まれた胸をツンと張りながら、俺は誰にも気づかれないように、ひっそりと不敵な笑みを浮かべた。

23df34ea No.4369

夕闇が迫るオフィス街。駅へ向かう足取りは、朝よりもさらに軽やかだった。
すれ違うサラリーマンたちの視線が、チラチラと俺の顔や足元に吸い寄せられているのがわかる。
(ふん、見とれてる見とれてる。でも残念だったな、この極上ボディの中身は、お前らと同じ男なんだよ)
そんな優越感を胸に秘めながら、俺はふと足を止めた。
まっすぐ家に帰って昨日の続きを楽しむのも悪くないが、今日は初陣の完全勝利記念だ。少し寄り道をして帰るのも一興だろう。
凛の記憶を探ると、通勤ルートの途中にある、少し敷居の高そうなオーセンティック・バーの存在が浮かび上がった。
普段の凛なら「一人で入る勇気がない」と通り過ぎていた店だ。
「……行ってみるか。今の俺なら、怖いものなんて何もないしな」
重厚な木の扉を押し開けると、落ち着いた照明とジャズの音色が俺を迎えた。
店内にいた数人の客とマスターの視線が、一瞬にして俺(凛)に釘付けになったのがわかった。
俺は男だった頃なら絶対に気後れしていたであろうその空間を、堂々とした足取りで進み、カウンターの端に優雅に腰を下ろした。
「マティーニを。……少し、強めで」
涼しげな声で注文する。
グラスを傾ける仕草すら、脳内のUIデザイナーとしての美意識と、男としての計算高さが相まって、完璧に妖艶に決まった。
案の定、五分も経たないうちに、少し離れた席にいた身なりのいいエリート風の男が声をかけてきた。
「隣、いいですか? もしよければ、一杯ご馳走させてください」
男の視線は、俺の首筋や、ブラウスの隙間から微かに透けるピンクのレースにねっとりと這い回っている。
昔の俺ならコンプレックスを刺激されそうなイケメンだが、今の俺の前ではただの滑稽な『発情したオス』でしかない。
「……ふふっ、ありがとうございます。でも」
俺は男の目を真っ直ぐに見つめ、わざと色っぽく微笑みながら、小悪魔のように囁いた。
「私、今夜はこの後『とびきり愛してくれる人』との予定が控えているんです。だから、ごめんなさい」
男は一瞬ポカンとし、やがて顔を真っ赤にして「そ、そうですか……失礼しました」と慌てて引き下がっていった。
(ひゃはは! 傑作だ! あの手のエリート男が、俺の一言でタジタジじゃないか。美貌っていう最強の武器、マジで半端ねえな!)
男を適当にあしらった余韻を楽しみながら、カクテルを飲み干して店を出る。
夜の街を歩きながら、俺の体は奇妙な熱を帯びていた。
男の欲情した視線を浴びたこと、そして自ら口にした「とびきり愛してくれる人」――つまり『俺自身』との夜を想像したことで、体の奥底が疼き始めているのだ。
歩くたびに勝負下着の繊細なレースが敏感な肌をかすめ、甘い電流を走らせる。
ストッキングの締め付けすら、今はもどかしい。
(くそっ……こんなことで感じちまうなんて。凛の体、どんだけ感度がいいんだよ)
少し早足になりながらマンションにたどり着き、急ぐように鍵を開けた。
玄関のドアを閉め、チェーンをかけた瞬間。
俺はもう、完璧なキャリアウーマンの仮面を投げ捨てた。
「はぁっ、はぁっ……あつっ……」
ヒールを蹴り脱ぎ、這うようにしてベッドルームへ向かう。
ブラウスのボタンを乱暴に外し、タイトスカートのジッパーを下ろして脱ぎ捨てると、昨夜選んだ淡いピンクのレース下着が姿を現した。
全身鏡に映る自分は、酒と欲情で頬を赤く染め、瞳をトロンと潤ませた、絶頂寸前のメス顔だ。
「待たせたな、俺の体。今日は一日、よく頑張ったご褒美をたっぷりくれてやるよ」
俺はベッドに倒れ込みながら、サイドテーブルの引き出しに手を伸ばした。
今日一日の完璧な勝利と、この極上のボディを一人占めする絶対的な優越感。
ウザい上司も、街の男たちも、そして何より本体の俺すらも置いてきぼりにして。
「んっ……あぁっ……!」
誰にも邪魔されない、俺と俺だけの甘く長い夜が、再び幕を開けた。

23df34ea No.4371

ベッドに倒れ込んだ俺は、すぐさま起き上がり、部屋の隅にある大きな姿見の前へと移動した。
床にへたり込み、鏡の中の自分と真正面から向き合う。
記憶によれば、普段の凛はいつも部屋の明かりを落とし、目を閉じて、今をときめく人気のイケメン俳優を甘くイメージしながら、この密やかな行為を楽しんでいたらしい。
真面目な彼女らしい、どこか乙女チックで可愛らしい秘密だ。
「……だけど、今日の俺は違う」
俺は手にしたローターのスイッチを入れた。
ヴンッ、と心地よい振動音が静かな部屋に響く。
こんなにも極上の『オカズ』が目の前にあるというのに、わざわざ見ず知らずの男の顔を思い浮かべるなんて勿体ないにもほどがある。
淡いピンクのレース越しに、振動する先端をそっと押し当てる。
いきなり強い刺激を与えるのではなく、あくまで焦らすように、丁寧に。
押し当てる角度を変えながら、ねっちりとした執拗な刺激をじっくりと与えていく。
「んっ……ぁ、ああっ……んんっ……」
静かな部屋に、甘く色っぽい喘ぎ声がこぼれ落ちた。
自分で出しているはずなのに、耳に届くその声は信じられないほど愛らしく、そして淫らだ。
声を聞くたびに、さらに体の奥底がキュンと締め付けられる。
鏡の中を見つめる。
そこに映っているのは、乱れた髪と、熱を帯びて潤んだ瞳、そしてピンクの勝負下着から溢れんばかりの白い胸を上下させて喘ぐ、絶世の美女の姿。
俺は今、男としての『視覚的な興奮』と、女としての『肉体的な快感』を同時に味わっているのだ。
「はぁっ、はぁ……すごい、な……っ。この体、どんだけエロいんだよ……っ」
鏡に映る自分自身のメス顔を見るたびに、男としての背徳的な興奮が脳を焼き切る。
そしてその興奮が、凛の身体の感度をさらに何倍にも引き上げていく。
視覚からの欲情と、肉体からの快感が、完全に無限ループに入っていた。
「あっ、あぁっ! だめ、これ……っ、気持ち、よすぎ……っ!」
ねっちりとした執拗な振動が、ついに臨界点を突破する。
俺は自分自身の艶やかな姿から目を逸らすことができないまま、大きく背中のアーチを反らせた。
「んんんっーーーッ!!」
甘く高い悲鳴のような喘ぎ声とともに、目の前が真っ白に弾け飛ぶ。
足の指先までピンと伸びきり、全身が小刻みに痙攣した。
これまでの男の人生では経験したことのない、波のように押し寄せては引いていく、深く、長い絶頂。
「はぁっ……はぁっ……ぁ……」
鏡の前で、俺は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
ピンクのレースは汗で肌に張り付き、鏡の中の結城凛は、完全に快感に屈しただらしなくも美しい表情を晒している。
「……ふふっ、最高だ。イケメン俳優なんかより、俺自身の姿が一番の媚薬じゃないか」
荒い息を整えながら、俺は鏡の中の自分に向けて、とびきり妖艶な笑みを浮かべた。
本体の俺すら知らない、底なしの快感と絶対的な自己愛。
この『結城凛』としての新しい日常は、俺の想像を遥かに超える、最高のエンターテインメントになりそうだった。

23df34ea No.4374

火照った体からじわりと滲む汗を手のひらで拭いながら、俺はふうっと長く、甘い息を吐き出した。
「さすがに汗だくだな。お風呂にするか」
火照りを冷ますため、そして先ほどの甘美な行為の余韻を洗い流すために、俺はクローゼットへと向かった。
開け放たれた扉の中で、いくつものランジェリーが並んでいる。
その中から記憶を手繰り寄せ、奥のほうにひっそりとしまい込まれていた一つの下着セットを引っ張り出した。
それは、純白のレースがふんだんにあしらわれた、ひたすらに「可愛らしさ」を強調したデザインだった。
凛の記憶が教えてくれる。
この下着は、デザインに一目惚れして買ったものの、「26歳のクールな自分には、少し乙女チックすぎて年齢に合わない」と気恥ずかしくなり、ほとんど使用されずにお蔵入りになっていたものらしい。

「もったいない。こんな清楚で可愛い下着、男のロマンの塊じゃないか。普段クールな女が、家ではこんな可愛らしい下着をつけてるなんて……ギャップ萌えの極みだろ」
俺は躊躇なくその白のレース下着を手に取り、嬉々として脱衣所へと向かった。
服を完全に脱ぎ捨て、バスルームのドアを開ける。
シャワーのハンドルをひねると、勢いよく温かいお湯が降り注いできた。
「あぁ……気持ちいい……」
頭から温かいシャワーを浴びると、今日一日の緊張や疲れがふわりと解けていく。
だが、それと同時に、先ほどの激しい絶頂の余韻が残る敏感な肌が、水圧に対して過剰に反応していることに気づいた。
シャワーのお湯が、滑らかな首筋から鎖骨を伝って、豊かな胸へと流れ落ちる。
たったそれだけのことなのに、お湯の粒が胸の硬い突起に当たるたび、ツンッ、とした心地よい刺激が脳を駆け抜けるのだ。
「うそだろ……シャワーのお湯が当たるだけで、こんなに気持ちいいのか……?」
男の体だった頃には到底考えられないほどの、圧倒的な超高感度。
お湯の温かさと、絶え間なく降り注ぐ細かな水圧の振動が、無数に見えない指となって柔らかな肌を愛撫してくるかのようだ。
胸に当たるお湯の感触だけで、思わず口から甘い吐息がこぼれそうになる。
そのうち、俺の脳内にさらなる悪戯心が芽生えた。
(これだけ水圧が気持ちいいのなら……もっと『敏感な場所』に当てたら、どうなるんだ?)
俺はシャワーヘッドを壁のフックからカチャリと外し、右手に持った。
そして、少しだけ足を開き、勢いよくお湯を噴き出しているシャワーヘッドを、下腹部の方へとゆっくり近づけていく。
「んっ……ぁ……っ」
まだ直接当てたわけでもない。周囲を伝い落ちるお湯の温もりがそこを撫でただけで、足の先が微かに震え、腰がビクッと跳ねた。
そして、意を決して水流の焦点を、最も熱を持っている秘所へと合わせた瞬間。
「あぁっ! ……んんっ、ひゃあッ……!」
ローターの直接的で硬質な振動とは違う。
温かなお湯による、柔らかく包み込まれるような刺激。それでいて、絶え間なく叩きつけられる細かな水圧が、全身の神経をどろどろに溶かしていく。
ザーッという激しいシャワーの音にかき消されるのをいいことに、俺はもう、声を我慢するのをやめた。
「すごい、これ……っ、お湯だけで……こんなに、気持ちいいなんて……っ!」
タイルの壁に空いた左手をつき、シャワーのお湯の束がもたらす極上の快感に身を委ねる。
膝がガクガクと震え、立っていられなくなりそうになるのを必死に堪えた。
脱衣所のカゴの中では、清楚で可愛い白のレース下着が、お風呂上がりの俺を待っている。
この火照りきった身体を拭いた後、あの乙女チックな純白の布でこの体を包み込む――その背徳感と期待が、頭の中をさらにピンク色に染め上げていった。
俺の、いや結城凛の熱いバスタイムは、どうやらもうしばらく終わりそうになかった。

403d2fa6 No.4439

翌朝、目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされ、ベッドの上でうーんと大きく背伸びをする。
指先からつま先までしなやかに伸びる肉体の感覚。
胸元にまとった純白のレースが肌をかすめ、昨日味わった甘美な熱の残り香を微かに思い出させた。
「ふぁ……さてと、今日もデキる女・結城凛のスタートだな」
ベッドから抜け出し、洗面所で完璧なオフィスメイクを施した俺は、クローゼットの前で今日の勝負服(コーディネート)を選び始めた。
昨日はフェミニンなタイトスカートだったが、凛のワードローブには洗練されたパンツスタイルも豊富に揃っている。
「今日はこれにするか」
手に取ったのは、上質な生地のネイビーのテーパードパンツと、とろみ感のある白のブラウス。
パンツスタイルは腰からヒップ、そして太ももへと続く美しいボディラインが露骨に出る。
今朝選んだ薄手のシームレスなランジェリーをつけ、パンツに足を通すと、すっと脚が長く見え、引き締まったヒップの形が見事に浮き彫りになった。
姿見の前に立ち、くるりと一回転する。
昨日までの可憐な雰囲気とは打って変わり、そこには知的でスタイリッシュなキャリアウーマンが立っていた。ハイヒールを履けば、足長効果は抜群だ。
「よし、クールビューティーな凛ちゃんも最高に様になってるな」
自画自賛しながら部屋を出て、爽やかな朝の風を切って駅へと向かった。
カツン、カツンと硬いヒールの音を響かせながら駅の改札に近づいた、その時だった。
(ん? マジかよ)
俺の視線が、改札脇の柱の陰に固定された。
そこにいたのは、昨日と全く同じ、ボサボサ頭でどこかくたびれた服を着た「俺の本体」だった。
スマホを弄るフリをしながら、改札を通過する女性たちを食い入るように見つめている。
(また張り込んでやがったのか。 一体何を考えてるんだ?)
俺は心の中で不敵に笑いながら、歩調を変えずに観察を続けた。
本体の脳内にある考えが、元が同じ魂だからこそ、手に取るように推測できた。
(なるほどな……本体のヤツ、まだ諦めきれてないんだ)
本体の思考はこうだ。
『昨日は失敗したと思ったが、あの女(凛)とすれ違った時、魂の根底が引き寄せられるような妙な違和感があった。もしかして俺の魂の欠片は弾かれたんじゃなくて、定着してるんじゃないのか?』
あるいは、『単純に、あの圧倒的な美貌とスタイルが忘れられず、もう一度見たくて張り込んでいる』……その両方だろう。自分の手からこぼれ落ちた(と思っている)奇跡に、未練たらたらで執着しているのだ。
本体の視線が、歩いてくる俺へと向けられた。
今日の俺はパンツスタイルだ。
昨日のタイトスカートとは違うが、ハイウエストのパンツが強調する足の長さ、歩くたびにキュッと引き締まるヒップラインに、本体の目が釘付けになるのが分かった。

(穴が開くほど見てるなぁ、本体。自分の元から切り離された魂が、その身体の中で最高に熟しきってる事も知らずにな)
俺はわざとらしく背筋をピンと伸ばし、顎を少し上げて、颯爽と本体の真横を通り過ぎた。
「……あ」
すれ違いざま、本体の口から小さな漏れ声が聞こえた。
昨日と同じ、凛が愛用するハーブの香水の香りがふわりと鼻腔をくすぐったのだろう。
本体はハッとしたように目を見開き、俺の後ろ姿を追いかけるように半歩踏み出してきた。
『おい、もしかしてお前……』
そんな言葉が、本体の喉元まで出かかっているのが目に見えるようだった。

403d2fa6 No.4440

自分が仕掛けた手応えの残像と、目の前の完璧な美女。
その二つが脳内で激しく交錯し、混乱と欲望で頭がいっぱいになっているのだろう。
だが、俺が振り向くわけがない。
(惜しかったな、本体。全部お前の思い通り……とはいかないのが、この作戦の面白いところなんだよ)
ICカードを改札にタッチし、振り返ることもなくエスカレーターへと向かう。
背中に突き刺さる本体の視線は、悔しさと焦燥感、そして美女への情けない欲望が混ざり合った、実に無様なものだった。
電車に乗り込み、窓ガラスに映る自分を見つめる。
ネイビーのパンツスーツを着こなした完璧な美女が、ガラス越しに薄く不敵な笑みを浮かべていた。
(悪いな、本体。お前が指をくわえて指を指してる間に、俺はこの体で『結城凛』としての最高の一日を楽しんでくるぜ)
ドアが閉まり、電車が滑り出す。
本体を完全に置き去りにした優越感に浸りながら、俺は今日始める新しい業務へと意識を向けた。

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電車がオフィス街の駅に到着し、ドアが開く。
流れるようにホームへ降り立ち、俺はカツン、カツンと力強く心地よいヒールの音を響かせながら改札を目指した。
今日の服装はネイビーのテーパードパンツ。
歩くたびに太ももからヒップにかけてのラインがしなやかに躍動し、パンツ越しにもわかる引き締まった下半身の曲線が、周囲の視線を惹きつける。
(スカートの時の『守ってあげたくなる可憐さ』もいいが、パンツスタイルの『洗練された美しい女社長感』もたまらんな……)
ビル風に髪をなびかせながらオフィスのエントランスを潜ると、エレベーターホールで同期の麻衣とばったり出くわした。
「あ、凛ちゃん! おはよう……って、うわあぁっ!?」
麻衣は俺の全身を見るなり、目を丸くして大声をあげた。
「な、なに? 朝からそんなに驚いて」
「だって今日の凛ちゃん、かっこよすぎでしょ! なにそのスタイルの良さ! 脚長っ! お尻小さっ! モデルさんかと思ったよ!」
「ふふ、大袈裟ね。たまには気分を変えてパンツスーツにしてみただけよ」
凛としての涼やかな微笑みを浮かべて答えるが、心の中ではガッツポーズだ。
(ひっひっひ! 同期の女にここまで絶賛されると絶頂ものだな。やっぱりこの体、素材が良すぎる)
エレベーターに乗り込み、部署のフロアへと向かう。
執務室に入ると、昨日俺に強烈なカウンターを喰らった例のウザいプロジェクトマネージャーが、自席でビクビクしながらこちらを伺っていた。
いつもなら「結城さ〜ん」とねっとり寄り添ってくるはずの男が、今日は目を合わせることすらできず、俺が近くを通るだけで小さく肩を竦めている。
(ハッ、すっかり去勢された駄犬みたいになってるな。昨日の今日じゃ、トラウマになって当然か)
デスクに着き、PCを立ち上げる。
昨日以上に集中力は研ぎ澄まされており、複雑なUIデザインのレイアウト修正も、ショートカットキーを駆使して圧倒的なスピードで片付けていった。
「結城さん、例の新規プロジェクトのワイヤーフレーム、もう上がったんですか!?」
「ええ、確認お願いします。ユーザーの導線を見直しておきました」
「すごい……完璧です! 助かります!」
後輩社員からの尊敬の眼差し。
仕事ができる美人の先輩――そのポジションを完璧に演じ切る快感は、男だった頃の冴えない日常では絶対に味わえないものだった。

9fa6ee49 No.4465

あっという間に昼休みになり、俺は麻衣たち同僚女子数人と近所のオシャレなカフェレストランへランチに出かけた。
「〜〜でさ、昨日の凛ちゃんがプロジェクトマネージャーをバッサリ切った話、もう他の部署にも噂広まってるよ!」
「えっ、本当? ちょっと恥ずかしいわね……」
「ううん、みんな『結城さん超カッコいい!』って絶賛してた! ほら、最近ハラスメントに厳しいし、凛ちゃんが毅然とした態度取ってくれてスカッとしたって」
パスタをフォークに巻きながら、麻衣たちが盛り上がっている。
「男ってさー、ちょっと優しくするとすぐ勘違いするじゃん? ほんとウザいよね〜」
「わかるー。自分の立場利用して誘ってくるの、ほんとキモい!」
女子会の毒舌トークが花を咲かせる。
俺は「ふふ、本当ね」と上品に相槌を打ちながら、心の内でニヤリと笑っていた。
(男の浅はかな欲望なんて、男だった俺が一番よく知ってるからな。だからこそ、どう扱えば一番ダメージが入るかも熟知してるのさ)
女子社員たちの中心で「頼れる憧れの先輩」として君臨しながら、美味しいカルボナーラを口に運ぶ。
女同士の友情、秘密の連帯感。その輪の中に自然に溶け込んでいる自分自身に、深い満足感を覚えずにはいられなかった。
午後の業務も何の問題もなく終了し、定時を迎えた。
ロッカーで私服――といっても今日はスタイリッシュなパンツスーツのままだが――に着替え、バッグを肩にかける。
(さて……今日も一日、完璧に『結城凛』を全うしたぞ)
会社を出ると、夕暮れの街には心地よい風が吹いていた。
パンツ越しに伝わる脚のラインと、歩くたびにキュッと引き締まるヒップの感覚を楽しみながら、俺は駅へと向かって歩き出す。
(今夜はどんな風に自分を可愛がってやろうか……。昨日の『なりきり演技』も捨てがたいし、新しい玩具を試してみるのもありだな)
本体の俺(アイツ)が今頃どこで指をくわえて泣いているかも知れぬ街で、俺は美貌と知性を兼ね備えた無敵の美女として、優雅に夜の街へと消えていった。

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オフィス街を抜け出し、夕闇が広がる繁華街へと足を延ばした。
ネイビーのパンツスーツを着こなした完璧なオフィススタイル。
颯爽と街を歩きながら、俺はある目的地を目指していた。
(さて……今夜の楽しみをさらにアップデートするために、大人のお店に寄っていくとするか)
向かったのは、繁華街の少し奥まった場所にある、女性向けのアダルトグッズショップだ。
最近はそういったグッズを取り扱う店舗も増え、外観は一見すると高級化粧品店や雑貨屋のように洗練されている。
店内へ足を踏み入れる前に、俺はふと凛の記憶を検索してみた。
(そういえば……あんなに感度のいいエロい体をしてるのに、部屋にあったのはあの小さなローターひとつだけだったな。なんでだ?)
記憶の奥底を探っていくと、すぐにその理由が判明した。
凛は容姿端麗でスタイルも抜群なため、大学時代から社会人に至るまで、常に彼氏が途切れたことがなかったのだ。
(あー、なるほどな。わざわざ自分一人で楽しむための玩具を買い揃える必要なんてなかったわけだ。常に男がいて、相手に満足させられてたからな)
男に愛され、求められてきた記憶。
だが、今の彼女の身体を支配しているのは、他ならぬ俺だ。男に委ねる快感ではなく、自分の手で、己の意思でこの極上ボディを欲望のままに開花させる――その悦びを知ってしまった。
(昔の彼氏どもには悪いが、今日からは俺がこの身体を世界で一番気持ちよくしてやるよ)
洗練された店内に入ると、アロマの甘い香りが漂っていた。
客層は若い女性やカップルが多く、ネイビーのパンツスーツに身を包んだ「いかにも仕事終わり」といった風情の美しい凛の姿は、店の中でもひと際目を引いていた。
周囲の目を気にするフリをして少し頬を赤らめつつも、心の中では興味津々で棚を物色する。
(うおっ、最近のグッズってこんなに種類があるのか!?)
男だった頃には知らなかった、女性向けのアダルトグッズの多種多様さに目を見張る。
最新式の吸うタイプのローター(吸引バイブ)。水圧やお湯とも違う、空気の波動でピンポイントに吸い上げる最新技術。パッケージを見るだけで興奮してくる。
静音性に優れた多機能コードレスローター。引き出しにあったものより遥かに強力で、何通りもの振動パターンが選べるスリムなタイプ。
お肌に優しい温感ローション。人肌に温まり、シルクのような滑らかな指通りを約束する保湿ローション。
「……これと、これ、あとこれもだ」
凛の記憶にある「彼氏たちには教えてやらなかった一番敏感な場所」を効率よく攻めるため、俺は迷うことなく数種類の最新グッズを手に取った。
レジに向かい、上品な笑顔を保ちながら会計を済ませる。
店員の手によって、中身が一切分からない厚手のシックな紙袋へと商品が収められていく。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「ええ、ありがとう」
紙袋を受け取り、店を出た。
手元に伝わるずっしりとした紙袋の重みが、これからの時間を約束しているようで、胸の奥がキュンと甘く疼く。
(ひっひっひ! 昔の彼氏たちも教えられなかった未開の快感を、今夜たっぷりこの体に教えてやるぜ)
ネイビーのパンツの裾をなびかせ、ハイヒールを鳴らしながら、俺は自分と凛の待つ愛巣へと急ぎ足で向かった。

9fa6ee49 No.4541

帰りの電車は幸いにも適度に空いており、俺は吊り革に掴まりながら、手に下げた紙袋の心地よい重みに口元を緩めていた。
(ふふっ、どれから使かおうかな? やっぱりあの『吸うやつ』か? それとも温感ローションと多機能ローターのダブル攻めか?)
吊り革を握る右手の爪をチラリと見つめつつ、脳内では今夜の「実験計画」が留まることを知らずに膨らんでいく。
以前の彼氏たちとの記憶をいくら手繰り寄せても、彼女がこんな未知の体験をしたことは一度もないはずだ。
未開の扉を俺自身の手で押し開けるという興奮だけで、体の深部がぐっと熱を帯びていく。
ネイビーのテーパードパンツと、その下に仕込んだ薄手のシームレスショーツ。
その内側は、想像と期待だけでとっくにじっとりと熱く潤い、準備万端の状態になっていた。
歩くたびに生地が擦れ、爪先までじんわりと甘い痺れが駆け抜ける。
(くっ……やばいな。電車の中でここまで熱くなるとか、身体が素直すぎるだろ……ッ)
必死に涼しい顔を装いつつ、目的地である最寄り駅までの数分間が、まるで永遠のように長く感じられた。



――カチャリ。
マンションの部屋に辿り着くやいなや、ドアの鍵とチェーンを締め、ヒールを脱ぎ散らかす。
部屋の明かりをつける間も惜しんでベッドルームへと直行し、ドサリとベッドの上に腰掛けた。
「はぁっ……はぁっ……やっと帰って来られた……」
バッグと紙袋をベッドの上に放り出し、俺は待ちきれない手つきで紙袋の封を破いた。
いくつか買い揃えたパッケージの中から、一番目立つ洗練された小箱——『エアプレッシャー・吸引バイブ』を掴み取る。
箱を開けると、そこにはまるで高級美容家電のような、滑らかな曲線を描くマットピンクの最新グッズが収まっていた。
指先で触れると、シルクのようにしっとりとしたシリコンの質感が伝わってくる。
先端には、小さな柔らかい吸引口がちょこんと開いていた。
「へぇ、これが噂の『吸う』やつか……」
説明書を指先で滑らせる。
直接的な振動ではなく、非接触の空気振動によってピンポイントで吸い上げる技術——。
俺はパンツのジッパーに手をかけ、火照った体にその最新兵器をあてる瞬間のことを思い浮かべながら、ニヤリと熱い笑みを深めた。

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テーパードパンツのジッパーを下ろし、スッと膝まで滑り落とす。
続いてブラウスのボタンを上から順に外すと、今朝身につけた薄手のシームレスランジェリーが露わになった。
想像だけでじんわりと湿り気を帯びたショーツの感触に、俺は喉を鳴らした。
(期待感だけでこんなに準備万端になってるとか、マジで素直すぎる体だぜ……っ! 昔の彼氏どもに見せてやりたいねぇ)
ベッドの背もたれに体重を預け、右手に持ったマットピンクの吸引バイブの電源ボタンを長押しする。
小さく『ピピッ』と音がして、先端の柔らかいシリコンカップが、ヴッ……ヴッ……と静かな空気振動を刻み始めた。
「……よし。今夜も『結城凛』ちゃんになりきって、この未知の感覚を全身で受け止めてもらうとするか」
俺は意識的に表情を柔らかく作り直し、口元に手を添えて、可憐で少し気恥ずかしそうな声を絞り出した。
「やだっ。私、こんな変な形したおもちゃ使うなんて、本当にどうかしてるっ」
(ふははっ、いいぞ、声のトーン最高! 照れる乙女の真骨頂だな!)
心の中でガッツポーズを決めながら、今度はついでに買ってきた温感ローションのボトルを手に取り、トロリとした透明な液体を指先とバイブの先端に垂らした。
じわリと手応えのある温かさが広がる。
「んっ……温かい。ねえ……こんなの、彼氏ともやったことないのに……。自分でこんなこと覚えたら……わたし、ダメな女になっちゃう」
セリフを口にするたびに、凛の脳内に眠る『清純な自分でありたい』という自意識と、今まさに快感を求めようとする肉体の本能が激しく衝突し、全身の皮膚にゾクゾクとした鳥肌が立つ。
(演技のセリフがそのまま身体の感度を押し上げてやがる! 自作自演の言葉責め、効きすぎだろ!)
俺は足を開き、ショーツのクロッチ部分を横へと指で大きくずらした。
熱く火照った一番敏感な部分が、夜の空気に晒されてキュッと固く身構える。
「ダメ、もう……我慢できない。わたし……気持ちよくなりたいっ!」
意を決して、プルプルと震える空気振動の吸引口を、直接その硬い突起へと押し当てた。
――シュポッ。

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「ッ~~~~~~~!?!?!?」
声にならない悲鳴が、喉の奥で詰まった。

ローターのような『ガツガツとした固い振動』ではない。
まるで、目に見えない小さな唇が吸い付き、甘く力強い波動で内部の神経ごと奥へ奥へとキュウッと引っ張り上げてくるような、強烈すぎる非接触の快感。
「あッ! なに……これっ!? 吸われてるっ!? んああっ、嘘、嘘嘘……っ! すごい……すごすぎるよぉ!」
あまりのショックに、俺はベッドの上で大きく背中を反らせた。
脚が勝手にバタバタと跳ね、つま先がピンと限界まで伸びきる。
(うおわぁぁぁッ!? なんだこれマジでヤバい!! 吸引バイブってこんな次元の違う快感なのかよッ!? 男の頃の俺の知識を超越してやがる!!)
心の中の『俺』が大絶叫する一方で、凛の口からは留まることなく甘く可憐な喘ぎ声が溢れ出ていた。
「ひぁあッ! んっ、んん~ッ! やだぁ……っ、止まらな! 誰か……助けてぇっ! わたし……おかしくなっちゃうぅ!」
「これっ、普通のバイブと全然違うっ!」
「 中から……奥のほうからっ、トロトロに溶かされちゃうような感覚なの……」
「あうっ……! んぁんっ……!」
「気持ちいい……気持ちよすぎるよぉ……っ! こんなの知らないッ!」
セリフを吐き出すたびに、自分が『結城凛』という美少女であり、自分の手で未知の淫乱な快感に開眼させられているという背徳感が、脳髄を容赦なく焼き切っていく。
(ひーー泣き叫びながら喘ぐ凛ちゃんの顔、鏡で見なくてもわかる……絶対に最高にエロいメス顔になってる……っ!)
強弱のパターンを『強』へと切り替えるボタンを指先で押した。
ヴヴヴ……ッ!
波動の周期が早まり、吸引の圧力が跳ね上がる。
「ヒッ……!? ああぁぁぁぁぁーーーッ!!」
「だめっ、ダメダメダメ! それ強いっ! 強いの来ちゃう……っ! んむぐぅぅっ……!」
隣の部屋への配慮も忘れて、俺は枕に顔を押し付け、必死に声を殺そうとした。だが、漏れ出す吐息はどこまでも甘く、高らかに響いてしまう。

「んんーッ! んッ! いっちゃうっ! 自分で……おもちゃでっ、私、いっちゃうからぁぁッ!!」
カチリ、と頭の中の何かが弾け飛んだ。
全身の筋肉が収縮し、視界が真っ白な光で満たされる。
波のように押し寄せる絶頂は一度では終わらず、エアプレッシャーがもたらす連続の波動によって、二重、三重の波となって身体を容赦なく引き裂いていった。

833a75d4 No.4560

「あぁぁっ……! はぁっ、ひぁ……ッ! んあ…………っ!」
ビクンビクンと小刻みに震える足腰。
ベッドの上に力なく崩れ落ち、俺は荒い息を吐きながら、涙で潤んだ目を天井へと向けた。
シームレスショーツはすっかり濡れそぼり、汗ばんだ肌にぴたりと張り付いている。
指先一つ動かせないほどの疲労感と、それを遥かに上回る圧倒的な多幸感。
(はぁ……っ、はぁっ……すげぇ。吸引バイブ、恐るべしだな……昔の彼氏どもがどれだけ頑張っても辿り着けなかった境地に、俺は数分で到達しちまったぞ)
少しずつ呼吸が整ってくる中で、俺はゆっくりと上半身を起こし、ベッドの脇に置かれた他のグッズ――多機能コードレスローターや各種オイルの入った袋を見つめた。
「ふふ……っ、あははっ……!」
思わず、凛の綺麗な顔立ちで、男らしい不敵な笑いが漏れ出した。
「おいおい……こんな最強のアイテムがまだ何種類もあるんだろ? たまらん……この生活、マジで病みつきになるわ」
乱れた前髪を細い指先でかき上げながら、俺は次の獲物(グッズ)へと手を伸ばした。
本体の俺が哀しく一人夜を過ごしていることも忘れ、俺は結城凛という最高の肉体と、新しく手に入れた玩具たちとの『甘く淫らな実験』を、夜が更けるまで心ゆくまで遊び尽くすのだった。

833a75d4 No.4571

息を整え、乱れた髪を払いながら、俺はベッドの上に転がっている次の獲物に手を伸ばした。
次に手に取ったのは、スリムな形状の『多機能コードレスローター』と、とろりと暖かな『温感ローション』だ。
「よし……次はこれの出番だな。さっきは凛になりきって乙女ぶってみたが、今度はわざわざ演技なんかしないで、俺の素のまま楽しんでやるとするか」
ローションをたっぷりと指先に取り、火照りきった下腹部へと滑らせる。
人肌にじんわりと温まるローションが、敏感な肌をヌルりと包み込んでいく。
そして、ローターのスイッチを最高出力のランダム振動モードに設定した。
ヴヴヴ……! と強力な揺れを放つ先端を、惜しげもなく一番熱を持っている場所へと直接押し当てる。
「んっ……あぁっ! くそっ、マジで効くなこれ!」
部屋に響き渡ったのは、可憐で透き通るような結城凛の美声。
だが、そこから発せられる言葉は、完全に粗暴な男そのものだった。
「おいおい! 温感ローションとこの強力振動、やばすぎだろ……! 男の頃の俺じゃ絶対味わえなかった快感だぜ、これ!」
可愛い声で、男口調のセリフが口をついて出まくる。
声と見た目は完璧な絶世の美少女なのに、言っている内容はただのスケベな男の独白。
そのあまりにも歪で不協和音なギャップが、脳に強烈な背徳感のスパークを走らせた。
(うわっ、なんだこれ。 凛のかわいい声で男のセリフ吐くの、めちゃくちゃ興奮するじゃねぇか!)
「ははっ、見ろよこの格好! 昼間は澄ました顔でデザイナーやってる凛ちゃんがよぉ、夜は一人でローター押し当ててヨダレ垂らしそうになってんだぜ! ざまぁみろ!」
「あっ、あぁッ! ひぁんっ! くっそ、なんだこの体っ! ちょっと突いただけで、すぐビクビク反応しやがって! 本当にエロい体だな、おい!」
強がりな男口調で自画自賛を叩きつけながらも、身体から押し寄せる快感には勝てず、俺の口からは次第に「はしたない喘ぎ声」が漏れ出し始めた。
「んむぐぁぁっ! あ、あダメだっ、振動強すぎるだろこれぇっ! んあぁっ! ぁっ、ひぁうッ……!」
「くそっ、俺の、俺の男のプライドが! こんなおもちゃの振動ごときに屈してたまるかっ……! んんんーーーッ!!」
口では強気な男の捨て台詞を吐き捨てながらも、凛の可愛らしい喉からは、恥ずかしいほど淫らに掠れた高音の喘ぎ声がボロボロと溢れ出る。
足はガクガクと震え、腰が勝手に浮き上がり、指先はシーツを破らんばかりの力で揉みしだいていた。
「あぁっ……! ダメだ、耐えらんねぇっ! 行く、行っちゃうぞこれっ! 俺の勝ちだ、このエロボディめぇっ……!!」
可愛い声で男の勝ち誇りを叫んだ瞬間、ローターの激しい振動がトドメを刺した。
「んあぁぁぁぁぁぁッーーー!!」
絶叫に近い、はしたない悲鳴とともに、全身が弓なりにしなった。
頭の中が真っ白になり、温かな快感の奔流が何度も何度も脳髄を焼き尽くしていく。
手足の先端までじんじんと痺れ、身体中の力が一気に抜け落ちた。

「はぁっ……はぁっ……ぜぇ……っ……」
ローターを畳の上にぽろりと落とし、俺はベッドの上で大の字になって倒れ込んだ。
乱れたブラウスから溢れ出た胸が大きく上下し、汗で濡れた太ももが力なく小刻みに震えている。
「ふぅっ……あははっ 最高じゃねぇか……」
仰向けになったまま、結城凛の綺麗な顔で、俺は男らしく豪快に笑ってみせた。
可愛い声で男のセリフを吐き捨てながら、欲望のままに絶頂を迎える背徳感。
本体の俺が狭いアパートで虚しく過ごしている間に、俺はこの極上の美少女ボディで、男としての欲求も、女としての快感も、すべてを貪り尽くしているのだ。
「次は……どのグッズで遊んでやろうか……」
俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、まだ熱の冷めやらない体を感じながら、次の楽しみに思いを馳せた。

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「はぁー……食った食った、快感を食いまくったぜ」
ベッドの上に大の字になり、胸を大きく上下させながら荒い息を吐き出す。
吸引バイブと強力ローターという最新兵器の連続攻撃に散々弄ばれた凛の身体は、全身がぽかぽかと熱を帯び、じんわりと心地よい汗をかいていた。
「だが……これで終わりだと思うなよ。せっかく買った温感ローションがまだたっぷり残ってんだからな」
身体を起こすと、ローションのボトルを手に取り、掌にトロリと惜しみなく垂らした。
人肌に素早く馴染む温かな液体。それを両手に広げ、まずは自分の豊満な胸元へと滑らせていく。
「うおっ! なんだこれ、すっごいヌルヌルっ! 指が滑りすぎて笑えてくるぞ」
鏡の前に移動し、ローションで濡れて艶やかに光る自分の全身を映し出す。
凛の鈴を転がすような甘い声で、口調だけは完全に調子に乗ったスケベな男のままだ。
「見ろよこのおっぱい。手に余るくらいのボリュームがあるのに、形が崩れてねぇ。ローション塗ったら、光を反射してさらにエロさ倍増じゃねぇか」
左右の胸を両手で優しく包み込み、下から押し上げるようにして揉みしだく。
ヌルヌルとした感触とともに、指先から伝わる圧倒的な柔らかさと弾力。
自分の手で触れているのに、触られている胸の側からも、じんと甘い痺れが脳へと送られてくる。
「んっ、あふっ! やだ、触るたびに胸の先がキュンってなってる! 自分で揉んで自分で感じるとか、つくづく無敵のシステムだな、この身体は!」
さらにローションを追加し、今度はキュッと引き締まったウエストから、丸みを帯びた滑らかなヒップ、そして太ももへと手を滑らせていく。
「ウエスト細ぇ〜……。なのに腰からお尻にかけてのラインが最高に女らしくて。ははっ、昔の彼氏どもも、この身体を独占できてさぞかし満足だったろうなぁ!」
だが、俺は不敵に笑いながら、鏡の中の凛の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「でもな、残念だったな! 今この極上ボディを頭から爪先まで遊び尽くせるのは、世界で俺一人なんだよ!」
自分で自分を絶賛し、男口調で語りかけながら全身を愛撫していく。
可愛い声と下品な男のセリフ、そして滑らかなローションがもたらす極上の手触り。
そのすべてが混ざり合い、すでに限界を迎えたはずの身体が、再び甘く疼き始めていた。
「あっ、やべっ……また熱くなってきたっ。本当に素直でスケベな体だぜ、結城凛ちゃんよぉ……」
「んっ……あぁっ……! もう、今夜はこれで満足してぐっすり寝てやるよ!」
最後に胸をギュッと強く揉み込んでから、俺は満足感たっぷりの溜息を吐き出した。

33e760be No.4621

シャワーで軽くローションを洗い流し、今夜は凛のワードローブにあった、少し透け感のあるシルクのキャミソールとショートパンツの部屋着に着替えた。
サラリとした生地が肌を撫でる感覚すら、火照った身体には心地よい刺激だ。

ベッドに潜り込み、ふかふかの枕に顔をうずめる。
スマホの画面を付けると、明日のスケジュールが表示された。
明日も会社に行けば、俺に怯えるマネージャーと、俺の美貌を称賛する同僚たちが待っている。
そして駅に行けば、相変わらず情けなく張り込んでいる『本体』がいるのだろう。
(本体の奴、明日もあのくたびれた格好で待ってんのかな。明日はどんな服着て、どんな風にあいつの前を通り過ぎてやろうか)
自分の圧倒的な勝利と、手に入れた最高の日常。
指先まで満たされた快感の余韻に浸りながら、俺はゆっくりと目を閉じた。
結城凛としての、最高に甘く背徳的な夜が、静かに深まっていく。

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アラームが鳴る前に、スッキリとした目覚めを迎えた。
シルクのキャミソール越しに伝わる朝日が心地よい。
昨夜のアダルトグッズによる激しい快感の余韻はすっかり抜け、全身が軽やかでエネルギーに満ち溢れている。
「ふぁ……よし、今日も完璧な一日を始めるか!」
ベッドから起き上がり、さっそく今日の勝負服を選ぶべくクローゼットの前に立った。
昨日の知的なパンツスーツから一転、今日は『大人の女性らしい上品なおしゃれ感』をテーマにコーディネートを組み上げる。
主役に選んだのは、歩くたびに優雅なドレープを描くネイビーのロングスカートだ。
ハイウエストの美しいシルエットがキュッと引き締まったウエストを強調し、裾に向かってふんわりと広がるデザイン。
トップスには柔らかいオフホワイトのノースリーブニットを合わせ、薄手のカーディガンを肩掛けした。
「うん、すごくいい。清楚でありながら、どこか色っぽい……」
姿見の前でくるりと回ると、ロングスカートの裾からチラリと覗く細い足首と、歩くたびにスカートの生地が太ももを撫でる触感がたまらない。
下着には、スカートのラインに響かない黒のシックなレースセットをチョ示しておいた。
そこからはいつもの朝のルーティンだ。
念入りなスキンケアで肌にツヤを与え、秋らしい落ち着いたトーンのリップを引く。
お気に入りのハーブの香水を首筋と手首にひと吹き。
完璧な『結城凛』の完成だ。

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カツン、カツンとヒールの音を静かに響かせながら、爽やかな秋晴れの街へと繰り出す。
そして、いつもの駅へと近づいたとき――。
(……ぷっ、やっぱり居やがった)
改札の手前、柱の陰。
そこには今日も、ボサボサの髪にくたびれた服を着た「俺の本体」が突っ立っていた。
三日連続の張り込みだ。
男だった頃の俺の執念深さと未練たらたらな性格が、これでもかと露骨に表れている。
スマホをいじる手は完全に止まっており、改札へ向かう女性たちの群れの中から「結城凛」の姿を必死に探しているのが一目瞭然だった。
(本当、哀れなやつ。自分の魂が抜け出たことすら確信を持てず、ただ目の前の美貌に惹きつけられてここに立ってるんだもんな)
俺は心の中で嘲笑を浮かべながら、背筋をスッと伸ばした。
紺色のロングスカートの裾を優雅になびかせ、颯爽と本体の視界の中へと躍り出る。
本体の視線が、一瞬で俺へと固定された。
上品なノースリーブニットが描く美しい胸のライン、引き締まったウエスト、そして歩くたびに揺れる紺色のロングスカート。
本体の目が、まるで吸い寄せられるように俺の全身を舐め回す。
(穴が開くほど見てろよ、本体。お前が指をくわえて眺めているこの美貌も、洗練されたスタイルも、全部俺のものなんだからな)

俺は本体の存在など一切視界に入っていないかのように、涼しげな横顔のまま、すれ違いざまにすっと通り過ぎた。
ふわりと漂うハーブの香水と、ロングスカートが風を孕むかすかな音。
本体が息を呑み、悔しさと欲望の入り混じた表情で半歩前に乗り出してくる気配を感じたが、俺は完璧なスルーを決め込んで改札にICカードをタッチした。
エスカレーターに乗りながらチラリと見下ろすと、改札の外で遠ざかる俺の後ろ姿を、未練がましく見送り続ける本体の姿があった。
(あばよ、本体。お前が情けなく突っ立ってる間に、俺は今日も『結城凛』として最高に輝いてくるぜ)
不敵な笑みを噛み殺しながら、俺はホームへと滑り込んできた電車へと向かった。

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ホームに滑り込んできた電車のドアが開き、今日も迷わず女性専用車両へ足を踏み入れる。
男性の混雑から解放された安心感はもちろんのこと、ここにはもうひとつ、男だった頃の俺にとって絶対に見ることのできなかった「最高のメリット」が存在していた。
(やっぱり女性専用車両は最高だな……安全だし、何より目の保養になりすぎる)
吊り革を掴んでふと隣に目をやると、制服を着た可愛らしい女子高校生がスマホを見つめている。ふわっと漂うシャンプーの甘い香りと、幼さの残る横顔。
今の俺は「綺麗なお姉さん」としてその隣に自然に溶け込んでおり、怪しまれる心配は一切ない。
さらに視線を斜め前に向けた瞬間、俺の目は釘付けになった。
座席に座っているのは、今どきの大学生らしき若い女性。
短めのミニスカートを履いているのだが、脚の組み替えや姿勢の緩みのせいで、スカートの隙間から清楚な白のパンツがチラリと覗いていた。
同性しかいない安心感からか、本人も周りも全く気にする素振りを見せていない。
(うわっ……マジかよ。白のパンツがチラ見えしてんじゃん……! ガード緩すぎだろ!)
男だった頃なら、もしこんな光景に出くわしても「不審者と思われる恐怖」から視線を泳がせるしかなかった。
だが今の俺は、洗練された紺色のロングスカートを纏う完璧な美女・結城凛だ。
優雅に吊り革を握り、涼しげな表情でまっすぐ前を見つめるフリをしながら、視界の端でその刺激的な光景を思う存分に堪能する。
(ふふっ……誰も俺の中身が男で、こんな邪悪な視線を送ってるなんて気づいてない。美貌という最強の隠れ蓑、本当に使い勝手が良すぎるぜ)
車内に響くガタゴトという規則的な揺れを感じながら、俺は不敵な笑みを深く口元に忍ばせ、オフィス街へと向かう時間を優雅に楽しんだ。

5b1ea881 No.4830

オフィスビルに到着し、デスクに腰を下ろす。
紺色のロングスカートを軽やかになびかせながら「おはようございます」と挨拶を交わせば、部署内の男性社員たちが一瞬鼻の下を伸ばすのが分かった。
あのトラウマを植え付けてやったウザいマネージャーも、遠巻きにビクビクと俺を窺うばかりで、もう余計な干渉はしてこない。実に快適な職場環境だ。
PCを立ち上げ、いつものようにスマートかつ完璧にデザイン業務をこなしていく。
キーボードを叩く指先は迷いなく動き、凛の優秀な頭脳と直感がサクサクとタスクを処理してくれた。
(ふふん……業務は絶好調。で、今日は仕事が終わったら何をしようか……?)
頭の片隅で昨夜手に入れたアダルトグッズの余韻に浸りつつ、今夜の「実験計画」をアレコレと妄想していると、昼休みのタイミングで同期の麻衣が話しかけてきた。
「凛ちゃん! ちょっと相談というか、おすすめしたいところがあるんだけど……!」
「ん? なあに、麻衣?」
俺は凛のトーンで、首を少し傾げて問いかける。麻衣は目を輝かせながら、スマホの画面を見せてきた。
「ここ、最近私が通ってるエステサロンなんだけどさ! 技術も腕もすごく良くて、初回限定でめちゃくちゃ安くなるんだよ。でね、友達を紹介すると私も割引特典がもらえるの! もし良かったら、今日の仕事終わり、一緒にいかない?」
画面に映し出されたのは、落ち着いた雰囲気の高級感あふれるプライベートサロンのWEBサイトだった。
リンパマッサージ、フェイシャル、全身のアロマトリートメントなど、女性の美を磨き上げる極上のメニューがずらりと並んでいる。
(エステ!? 男だった頃なら逆立ちしても縁のなかった、未体験ゾーンじゃないか!)

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凛の記憶を検索すると、日頃のスキンケアやセルフマッサージは入念にやっていたものの、プロの手による全身エステには最近行けていなかったようだ。
プロの手技で、この極上の『結城凛』の身体がどのように解きほぐされ、磨かれていくのか――考えただけでゾクゾクとした好奇心が込み上げてくる。
「へぇ、素敵なサロンね。腕が良いなら、ちょうど最近肩も凝ってたし興味あるかも」
「本当!? やったぁ! 凛ちゃんが一緒なら嬉しい! さっそく今日の夕方、二人分で予約入れちゃうね!」
「ええ、お願い。楽しみにしてるわ」
麻衣が「よしっ!」と嬉しそうにスマホを操作するのを見送りながら、俺は内心で不敵にニヤリと笑った。
(プロのエステティシャンに、この極上ボディを頭から指先まで隅々まで揉みほぐされるわけか。しかも麻衣の紹介で格安なんて最高すぎる。今夜はグッズ攻めとはまた一味違う、極上の『癒やしと快感』が待ってそうだな)
仕事終わりの新たな楽しみに胸を躍らせながら、俺は午後の業務へと取りかかった。

5b1ea881 No.4832

午後の業務中。
デザインのレイアウトチェックを終えた俺がブレイクタイムに給湯室へ向かおうと立ち上がった時、後ろから恐る恐る声をかけられた。
「あ、あの……結城先輩、今ちょっとお時間よろしいでしょうか……?」
振り返ると、そこにいたのは今春入社したばかりの新人の男社員・佐藤だった。
まだサイズの少し合っていないスーツを着崩し、手にはデザイン案をプリントアウトした紙を大事そうに抱えている。
「ええ、大丈夫よ。どうしたの、佐藤くん?」
俺は優しく微笑みながら、凛の透き通るような声で応じる。
それだけで佐藤は顔を真っ赤にし、「あ、はいっ!」と固くなった声で返事をした。
「実は、来月リリース予定のキャンペーンバナーのデザインを作ってみたんですが……どうしても全体的にパッとしなくて。結城先輩にアドバイスをいただけないかと……」
「どれどれ、見せて?」
俺は佐藤のデスクの隣に回り込み、彼のPC画面を覗き込んだ。
その瞬間、俺のフレグランス(ハーブの香り)と、ノースリーブニットから覗く白い腕、そして紺色のロングスカートの裾がふわりと彼の膝元にかすめた。
「ひっ……!」
佐藤が分かりやすく肩をビクッと跳ねさせ、身体を強張らせる。
近距離から漂う洗練された大人の女性の香りと美貌に、すっかり気圧されているようだ。
(ふふっ、可愛いとこあるじゃねぇか。新人くん、顔が真っ赤だぞ?)
心の中で男らしくニヤリと笑いつつ、俺は仕事モードへと切り替えた。
凛の脳内にあるプロの知識と実績が、瞬時に問題点を弾き出す。
「うん、全体のトーン&マナーは悪くないわ。でもね、一番伝えたい『メインのキャッチコピー』と『CTAボタン』のコントラストが弱いから、ユーザーの目線が迷っちゃうの」
俺は彼のキーボードにそっと手を伸ばし、マウスを操作しながら画面上の要素を素早く組み替えて見せた。
「こうやってフォントの強弱をつけて、余白をもう少し広く取ってあげると……ほら」
「うわ……! すごい! 一気に洗練されて、どこをクリックすればいいか一目で分かります……!」
佐藤の目が輝く。
尊敬と憧れ、そしてほんの少しの淡い恋心が混ざり合った純粋な視線。
「デザインはね、見た目の華やかさだけじゃなくて、ユーザーの視線を導く『誘導の設計』が一番大事なの。佐藤くんのアイデア自体はすごく良いから、自信持っていいのよ?」
俺はそう言って、彼の顔を覗き込むようにして優しく微笑んだ。
「は、はいっ! ありがとうございます、結城先輩! 僕、修正して絶対に良いものにします!」
完全にノックアウトされた表情で頭を下げる新人社員を見送りながら、俺は胸の内で優越感を爆発させていた。
(くぅ〜ッ! カッコいい先輩女子社員のムーブ、気持ち良すぎるだろ! 仕事ができて優しくて綺麗なお姉さん……こんなの好きにならない男いねぇわ!)
頼れる美しき先輩として職場での地位を完璧なものにしつつ、俺はエステという新たな『お楽しみ』が待つ退勤時間に向けて、気分良く給湯室へと向かった。

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給湯室でマグカップにハーブティーを注いでいると、パタパタと軽やかな足音が近づいてきた。
振り返ると、隣の部署の同僚・莉乃(りの)が「あ、凛ちゃん!」と笑顔で入ってきた。
「お疲れ様〜! ちょうど凛ちゃんに会いたかったんだよね。さっき新人くんの指導してるとこ見ちゃった! 相変わらず教え方上手だし、かっこいい〜」
俺はマグカップを手に、凛としての洗練された優しい笑顔を浮かべた。
完全に『結城凛』になりきり、女性同士のノリにスッと溶け込んでいく。
「お疲れ様、莉乃。ううん、そんなことないわよ。佐藤くん、すごく素直で頑張り屋さんだから、こっちも応援したくなっちゃうのよね」
「ほんと優しいなぁ。あんな綺麗な先輩に優しく教えられたら、新人くん一発でノックアウトでしょ! あ、そういえばさ、今日の服もすごく素敵! その紺のロングスカート、シルエットがめちゃくちゃ綺麗だね」
「ありがとう。ハイウエストだから脚長効果があって気に入ってるの。……あ、でもね」
俺は少し声を潜め、女性特有の『内緒話』をするような仕草で、いたずらっぽく小首を傾げた。
「ロングスカートって歩くたびに風が入って気持ちいいんだけど、今日はラインが出ないように黒のシックなレース下着にしてきたの。ちょっと締め付けが心地よくて気が引き締まる感じ」
「えっ、黒のレース!? 凛ちゃん、見えないところまで完璧すぎない……!? 普段クールなのに下着が黒レースとか、ギャップでキュンとしちゃうんだけど!」
狙い通り、会話は自然と『下着』の話題へとシフトした。
完全になりすました俺は、好奇心いっぱいの表情で莉乃に問いかける。
「ふふ、そんな大袈裟な。莉乃だって、いつもおしゃれじゃない。ねえ……ちなみに莉乃は今日、どんな感じの下着にしてるの?」
「えーっ!? 私の? やだなぁ、凛ちゃんに言えるほど勝負下着じゃないよ〜!」
莉乃は頬を少し赤らめながらも、女性同士ならではのオープンなノリで嬉しそうに語り始めた。
「今日はね、完全にお仕事モードだから、響きにくいベージュのシームレス! でも胸元にちょっとだけピンクのリボンがついてるやつ。やっぱりテンション上げたい日はお気に入りのランジェリーつけるよね」
「わかるわ。下着って誰に見せるわけじゃなくても、自分だけの密かなこだわりがあるものね」
「そうそう! 職場だと服はフォーマルにしなきゃいけないから、下着でこっそり遊ぶのが最高なんだよね。あ、そういえば凛ちゃんって、普段はどんな色が多いの? ピンクとか白の可愛い系も着たりする?」

33e760be No.4894

一瞬、昨夜着たあの『純白のレース下着』と、それを身につけた自分を激しく愛撫した記憶が脳裏をよぎった。
だが、俺は涼しげな表情を崩さず、お茶を一口含んでから答える。
「うーん、普段は黒やネイビーの大人っぽいのが多いかな。でも……実はたまに、自分には可愛すぎるかなって思うような、真っ白のレース下着をつけたくなる日もあるのよね」
「キャーッ! なにそれ、可愛すぎる! 白レースの凛ちゃんとか絶対天使じゃん! ギャップ萌えで倒れる人続出だよ!」
「もう、からかわないでよ。莉乃は他にどんなデザインが好き?」
「私はね、最近ワイヤレスのレースブラにハマってる! 楽なのにホールド感あって、見た目もすごく繊細でエロ可愛いの。今度の週末、新作見に買いに行こうかなと思ってて……凛ちゃんも今度一緒に行かない?」
「ええ、ぜひ行きましょう。新しいランジェリーを選ぶのって、すごくワクワクするし楽しそう」
(同僚の女の子から直接『下着のこだわり』や『おすすめのランジェリー』の話を引き出せるなんて! 男の時には絶対に入れなかった領域に完全になりすまして溶け込めてるぞ!)
心の中で男としての歓喜を爆発させながらも、見た目はどこまでも優雅で美しい『結城凛』のまま。
「あ、そろそろ戻らなきゃ。莉乃、楽しかった。また後でね」
「うん! 凛ちゃん、またね〜!」
給湯室を出て自席へ向かう足取りは、さらに軽やかだった。
(女同士のトーク、楽しすぎるだろ。今日の仕事終わりのエステも楽しみだし、週末は下着屋さん巡りか? 結城凛としての日常、どこまでも最高だぜ)
不敵で満足げな笑みを薄く浮かべながら、俺は午後のデスクワークへと戻っていった。

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定時のチャイムがオフィスに響き渡ると同時に、俺は手際よくPCをシャットダウンした。
「凛ちゃん、お待たせ! 準備できた?」
バッグを手に駆け寄ってきた麻衣に、俺は優雅に微笑みかける。
「ええ、バッチリよ。行きましょうか」
オフィスを出て、夕闇に包まれた街へと繰り出す。
麻衣に案内されて到着したのは、繁華街の喧騒から少し離れた高級マンションの一室にあるプライベートサロンだった。
店内に入ると、ほのかに漂うアロマオイルの甘い香りと間接照明の温かな光が包み込んでくれる。
「結城様、お待ちしておりました。本日は『全身極上アロマリンパ&引き締めコース』でご用意しております」
上品なセラピストの女性に案内され、鍵付きの個室へと通された。
「お着替えとして、こちらの紙ショーツにお着替えいただき、ガウンを羽織ってお待ちくださいね」
渡されたのは、薄手のガウンと、申し訳程度の布地しかない小さな紙ショーツだった。
「うわ、なにこれ。布地、小さすぎだろ……」
セラピストが部屋を出た瞬間、俺は心の声で思わずツッコミを入れた。
紺色のロングスカートと黒レースの下着を脱ぎ捨て、全裸の上にその小さな紙ショーツだけを身につける。
ハイウエストのパンツやロングスカートで隠されていた凛の豊満な胸と、キュッと引き締まったウエスト、そして滑らかな太ももが無防備に露わになった。
(くっ……紙ショーツ、心もとなすぎる……。履いてないのと変わらないレベルだぞ)
ガウンを羽織り、温められた施術ベッドの上に仰向けになる。
しばらくすると、トントンとノックの音がして、女性セラピストが入ってきた。
「失礼いたします。では、お背中からほぐしていきますね。ガウンを失礼します」
ガウンがはらりと肌から滑り落ち、温かな人の手が、人肌に温められたアロマオイルとともに俺の背中へそっと置かれた。

33e760be No.5055

「んっ……」
「あ、お力加減はいかがですか?」
「あ、いえ……っ、大丈夫です。すごく……心地いいです……っ」
凛の可憐な声で答えながら、俺は必死に声を殺した。
プロの手技は容赦がない。温かい手のひらが、肩甲骨から腰、そしてヒップのふくらみのギリギリまで、たっぷりのオイルとともに滑らかに滑り落ちていく。
(う、嘘だろ!? プロの手つき、気持ちよすぎる!!)
「結城様、すごくお肌がモチモチで綺麗ですね。それに、お背中から腰にかけてのラインがとっても美しいです」
「ふふ……っ、ありがとうございますっ。あ……んっ……!」
セラピストの手が、腰のくびれからヒップの付け根を念入りに揉みほぐすたびに、紙ショーツ越しに伝わる体温と摩擦で、下腹部がじんと熱を帯びてくる。

(やばい! 凝りをほぐされてるだけなのに、身体が敏感になりすぎてて、エロい刺激に変換されちゃってるぞ……ッ!)
「では、次は仰向けになっていただき、デコルテとお腹周り、脚のリンパを流していきますね」
「は、はい……っ」
仰向けになると、セラピストの細い指先が、豊かな胸の谷間から鎖骨にかけて、オイルを伸ばしながら優しく撫で上げていく。
胸の膨らみのすぐ脇を指がかすめるたび、突起がツンと硬く緊張するのが分かった。
「んぁ……っ……あっ……」
「お胸の周りのコリも少し溜まっていらっしゃいますね。少し圧をかけますね」
「あ、ダメ……っ、そこ……っ! んんっ……ふぁ……っ!」
セラピストは完璧にプロとして施術してくれているだけなのに、俺の口からは、はしたない甘い喘ぎ声が漏れ出して止まらない。
(だ、ダメだっ! 凛ちゃんの身体が素直すぎて、プロの指先で本気で感じちゃってる! セラピストさんに変なお客さんだと思われるだろこれッ!)
「お召し物のラインが出やすいお腹周りも、しっかり流しておきますね」
温かい手が下腹部へ滑り落ち、紙ショーツのギリギリのラインまで指先が潜り込んでくる。
「ひぁっ……! あ……んっ、そこ、は……っ!」
「あ……申し訳ありません、少し敏感なところでしたか?」
「い、いえ……っ! ダイジョウブ……ですっ……んふぅ……っ」
顔を真っ赤にしながら、俺はベッドのシーツをぎゅっと掴みしめた。
全身がオイルで滑らかに光り輝き、プロの絶妙な指使いによって、身体の芯からドロドロに溶かされていく。
昨夜自分で仕込んだ刺激とはまた違う、包み込まれるような極上の快感に、頭の中がぽわんとピンク色に染まっていく。
(はぁぁっ、プロの手技、恐るべし……ッ。格好つけて来たのに、全身トロトロにされちゃってるぜ……)

33e760be No.5056

施術が終わり、シャワーを浴びて着替えを済ませると、全身の血行が良くなって肌が内側からポカポカと発光しているようだった。
ロビーに戻ると、先に施術を終えてお茶を飲んでいた麻衣が、俺の顔を見るなり目を見張った。
「うわぁぁ……! 凛ちゃん、お肌プルプルでめちゃくちゃ色っぽい! 顔もうっすらピンク色で、なんかすごく艶っぽいよ!?」
「ふふ、本当? すごく気持ちよくて……私、少し寝ちゃいそうだったわ」
凛の澄ました顔で微笑みながら、俺はハーブティーを口に含んだ。
服の下の肌は、今もアロマの香りとプロの愛撫の余韻で、熱くじんじんと痺れている。

「でしょー! 腕最高だったよね! また来月も一緒に来ようよ!」
「ええ、ぜひ。毎月の楽しみにしちゃおうかしら」
麻衣と笑い合いながらサロンを後にする。
秋の夜風が、火照りきった身体に心地よく吹き抜けていく。
(ふふっ……プロの手で全身ピカピカに磨き上げられて、身体の感度もさらに上がっちゃったな。……よし、今夜は家に帰ったら、この最高に仕上げられた身体で何を試してやろうか)
紺色のロングスカートをなびかせ、優雅に歩きながら、俺は今夜の密かな宴に思いを馳せて口元をニヤリと緩めたのだった。

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「ねえ、凛ちゃん! このまま帰るの、なんか寂しくない? もし良かったら……うちに寄っていかない? お酒でも飲んで、もっとお喋りしようよ!」
サロンを出たところで、麻衣が少し上気した顔で俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
エステ上がりで全身が血行促進され、肌も心も心地よく解放されているタイミングだ。
断る理由なんてどこにもない。
「ええ、いいわね。じゃあ、近くのコンビニで何か買っていきましょうか」
「やったぁ! 凛ちゃん大好き!」
凛の可憐な笑顔で応じると、麻衣は嬉しそうに俺の腕を両手で抱え直した。
麻衣の柔らかい胸の感触が、ノースリーブニットの上から腕に直に伝わってくる。
男だった頃なら一発で意識が飛んでいたようなシチュエーションだが、今の俺は「仲良しの女子同士」。
その距離感の近さに、心の内でニヤリと笑みがこぼれた。
(女子同士のノリ、最高すぎるだろ。腕組みなんて当たり前だし、距離感がバグっててたまらん!)
コンビニに寄り、二人でカゴを手に店内を物色する。
麻衣は「私、今日は甘めのカクテルにする〜!」と缶チューハイを数本カゴに入れ、俺は少し大人っぽくハイボールと、エステ後の体に染み渡るようなクラフトビールをチョイスした。
さらにおつまみとして、チーズやポテトチップス、限定のスイーツを買い込み、準備は万端だ。

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麻衣のマンションに到着し、部屋のドアが開く。
「散らかってるけど、入って入って〜!」
靴を脱いで足を踏み入れた瞬間、俺はその可愛らしい空間に目を奪われた。
部屋全体がパステルピンクとホワイトで統一されており、ベッドの上やソファには大小さまざまなぬいぐるみが所狭しと並べられている。
クッションもふわふわした素材ばかりで、まさに「女の子の部屋」の理想形のような空間だった。
(うわぁ……マジで女子の部屋だ。ぬいぐるみの量がすごすぎるだろ……! 男の部屋には逆立ちしてもない甘い香りが漂ってやがる)
「可愛いお部屋ね、麻衣。すごく麻衣らしくて落ち着くわ」
「本当〜? 凛ちゃんにそう言ってもらえると嬉しい! ほらほら、ソファに座って!」
俺は紺色のロングスカートの裾を優雅に整えながら、ふわふわのクッションが置かれたソファに腰を下ろした。
膝の上にちょこんと置かれたクマのぬいぐるみを自然に抱きかかえると、麻衣が「凛ちゃん、それ抱っこしてるの超可愛い〜!」とスマホで写真を撮ろうとしてくる。
「ちょっと、麻衣ったら変な写真撮らないでよ?」
「だって似合いすぎなんだもん! 普段クールな凛ちゃんがピンクのクマ持ってるなんて、激レアなんだから!」
くすくす笑い合いながら、缶をプシュッと開けて乾杯した。
「エステお疲れ様〜! 乾杯!」
「乾杯!」
冷えたビールを喉に流し込む。
エステで水分が抜けていた身体に、アルコールがじんわりと染み渡っていく。
お酒が入ると、麻衣のテンションはさらに上がっていった。
「ねえねえ、凛ちゃん。さっきのサロンのセラピストさん、めちゃくちゃ手際良くなかった!?」
「ええ、すごく上手だったわね。肩の凝りがすっかり取れちゃった」
「私なんてさ、太もも揉まれてるとき、気持ちよすぎて『んっ……』とか変な声出そうになっちゃって焦ったよ〜!」
「ふふ、麻衣ったら。でも分かるわ、私も少し恥ずかしかったもの」
完全に女子の会話になりきりながら、俺もお酒を進めていく。
だが、麻衣の方はお酒にそこまで強くないのか、二缶目に突入したあたりから一気に酔いが回り始めていた。
「う〜……凛ちゃんさぁ……最近、どんどん綺麗になってない……?」
頬を真っ赤に染めた麻衣が、ろれつの怪しい甘えた声で俺の方へと寄り添ってきた。
そのまま、すっと距離を詰めてきて、俺の肩に自分の頭をぽてんと預けてくる。
「え? そうかしら……?」
「そうだよぉ……! 肌はモチモチだし、雰囲気もなんか色っぽくなったし……。会社の男どもが凛ちゃんのことチラチラ見てるの、私気づいてるんだからね!」
麻衣の吐息が、俺の首筋に吹きかかる。
ほんのりと甘いお酒の香りと、彼女の体温が直に伝わってきて、俺の心臓がどきりと跳ねた。
(う、うおっ……! 麻衣、距離近すぎだろ……ッ!? 肩に頭乗せてくるとか、これ男だったら完全に勘違いするやつだぞ!)
「男なんてさぁ、みーんな単細胞なんだから! 凛ちゃんみたいに綺麗で、仕事もできて、優しくされたら、速攻で勘違いして好きになっちゃうんだから!」
「ふふ、麻衣、お酒回りすぎよ。少し落ち着いて」

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俺は苦笑しながら、麻衣の柔らかい肩を抱き寄せるようにして支えてあげた。
すると麻衣は、さらに身を乗り出すようにして、俺の顔を至近距離でのぞき込んできた。大きな瞳が潤んでいて、無防備な隙だらけの表情だ。
「落ち着けないよ〜! ねぇ、凛ちゃん……最近、好きな人とかできたりしてないの? ほら、こんなに綺麗になったんだから、絶対何か理由があるんでしょ〜?」
「好きな人……? うーん、今は特にいないわよ」
「嘘だぁ〜! だって、今日の下着だって黒のレースだったんでしょ!? 見せない下着に気合入れてるなんて、絶対怪しい〜!」

麻衣はえへへといたずらっぽく笑うと、なんと俺の膝の上にすっぽりと乗っかるようにして抱きついてきた。
「麻衣っ……!? ちょっと、急に抱きつかないで……!」
声こそ可憐な凛のものだったが、内心の俺は大パニックだ。
膝の上に乗ってきた麻衣のヒップの柔らかさ、抱きついてくる腕の感触、そして顔が触れ合いそうなほどの至近距離。ネイビーのロングスカート越しに、麻衣の体温がダイレクトに伝わってくる。
(や、やばいッ! 麻衣のやつ、完全にベロベロで甘えモードになってやがる……ッ! 女子同士だからってガード緩すぎだろ! 俺の中身、男なんだぞ!?)
「えへへ〜、凛ちゃんすごく良い匂い。ハーブの香りと、お酒の匂いが混ざって……なんか落ち着く……」
麻衣は俺の首筋に顔を埋めるようにして、すりすりと頬を寄せてくる。
細い吐息が首元をくすぐるたび、昨日から今日にかけて感度が跳ね上がっている俺の身体は、ツンと甘い痺れを走らせた。
「んっ……麻衣、くすぐったいってば……っ」
「やだ〜、離れない〜。今夜は凛ちゃん、帰さな〜い……」
麻衣は俺の腰に両腕を回し、ギュッと抱きしめる力を強めた。
至近距離で重なる二人の美少女(?)。パステルピンクの部屋の中で、甘いお酒の香りと、女子特有の柔らかい体温が満ちていく。
( 酔っ払った同期の女の子に部屋で押し倒されそうな勢いだぞ!? 凛の可愛い声でなだめつつ、この甘々で無防備なシチュエーション、どこまで楽しんでやろうか!)
俺は麻衣の背中を優しく撫でながら、不敵でスケベな笑みを心の内で深め、さらなる甘い夜の展開に身を委ねていくのだった。



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