「ねぇ、お母さん……もう夜の九時だよ? まだパパ帰ってこないの?」
俺はリビングのソファで、パジャマの袖をぎゅっと握りしめながら、わざとらしく大きなあくびをしてみせた。
着ているのは、昼間に双葉さんと一緒に選んだお揃いのパジャマだ。
淡いピンク地に、ちいさなイチゴの柄がたくさん散りばめられた可愛らしいデザイン。
俺(幼女)と双葉さん(大人の女性)で並ぶと、まさに理想の仲良し親子に見えるはずだ。
「そうねぇ……パパ、今日は遅くなるって連絡があったから、先に寝ていていいのよ? 若葉ちゃん、眠くなっちゃったでしょう」
双葉さんが優しく微笑みながら、俺の頭を撫でてくれる。
「やだ! お母さんと一緒に寝たい! 今日は一人で寝るのやだぁー!」
俺は幼女特有のワガママを発動させ、両足をバタバタさせてダダをこねてみた。
両目をぎゅっとつむり、語尾を伸ばして甘える。
(三十路超えの男のプライドが『恥ずかし死に』しそうだが、双葉さんと一緒に寝るためならプライドなんてドブに捨ててやる! 幼女の特権、使い倒してやるぜ!)
「もう、若葉ちゃんったら。いつものお部屋じゃなくて、お母さんのお布団で寝たいの?」
「うんっ! お母さんのお布団で、ぎゅーってしながら寝たいの! だめ……?」
上目遣いで、うるうる(させたつもり)の瞳で見つめ返す。
「ふふ、ダメなわけないじゃない。じゃあ、一緒にお布団入ろうね。パパには『先に寝ます』ってメッセージ入れておくから」
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