試着室という名の密室で、ワシは完全に店員のお姉さんの着せ替え人形と化していた。
黒の透け透けレース、清楚な純白フリル、さらには謎の紐だらけの布きれまで。
次々とカーテン越しに渡される下着を身に着けては、「素敵ですぅー!」と褒めちぎられるという羞恥プレイの連続である。
63年間の人生で、これほど精神をすり減らした時間は他にない。
「お客様、最後はこちらです! 当店が誇る『サルート』の新作、アプリコットピンクのセットです! お客様の白いお肌に絶対似合いますから!」
渡されたのは、息を呑むほど美しい花の刺繍が施された、華やかで少し際どいピンク色のランジェリーだった。
値段のタグを見て一瞬目玉が飛び出そうになったが、もはや抗う気力もなく身に着ける。
「はーい、着られましたかー? それでは、最高にスタイルが良くなる『正しい下着の着け方』をレクチャーしますね! 失礼しまーす!」
「えっ? ちょ、ちょっと待っ――ひゃうっ!?」
断る間もなくカーテンがシャッと開き、満面の笑みを浮かべた店員さんが狭い試着室へと突入してきた。
「まずはショーツからです! ただ穿くだけじゃダメなんですよ。太ももと垂れ下がったお尻のお肉を、こうして……下から全部ショーツの中に持ち上げて収めるんです!」
「ひやぁぁぁぁっ!? お、お姉さん、手がっ、手がダイレクトにワシの尻にっ……!」
背後に回った店員さんの両手が、私の太ももの裏からお尻にかけてのお肉をガシッと掴み、グイッと上に向かって押し上げてショーツの中へ収納していく。
プロの容赦ない手つきに、元・初老のおっさんは変な声を出してビクンビクンと跳ねてしまう。
「はい、次はお胸ですね! 少し前かがみになってください。そうそう、その姿勢で……背中や脇に逃げてしまったお肉を、ぜーんぶ前のカップに掻き集めます! えいっ、えいっ!」
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